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第五十話『綾香とシモーヌ』


「バカなぁあっ?!」

 ひばりに求婚するも、マッハでフられて絶叫する洋介。

 それを見て、ひばりか苦笑いし、「大丈夫そうだね」とつぶやくと席に戻った。

「つーかよ。あの狩羽と付き合えばいーんじゃねーの?」

 唐突に声をかけたのは慎吾である。それを聞いてひばり達も、そういえば。となった。

 確かに慎吾の言うとおり、狩羽あかりも彼氏募集中と言っていた。

 ルックスも十二分に可愛らしく、洋介が彼女にするにも悪くない相手に思えた。しかし、体を起こした洋介は床の上であぐらをかいて、渋い顔になった。

「あかりちゃんか。確かに可愛いし彼氏募集中で狙い目なんだが……彼女の噂がなぁ……」

 頭をガリガリ掻きながら、まじめな様子でつぶやく洋介。

「噂?」

 場所が近かったせいか、そのつぶやきがよく聞こえたひばりが反射的に訊ねてしまっていたが、洋介は軽く驚いてから困ったような顔になった。

「いや、彼女には良からぬ噂が多くてね。未だ真贋はっきりしないものだからアタックしづらいんだよ。ちなみに噂の内容に関してはノーコメントだよ? 当たり前だけどね」

「う、うん」

 渋面を作りながら答えた洋介に、ひばりはうなずいていた。

 一方でシモーヌと綾香のやりとりは未だに続いていた。それを苦笑いしながら見ていた由里達にもうひとりの金髪碧眼から声がかかった。

「ゆりゆり、あのふたりはいつもああなのかねい?」

「はい? ああ、綾香とシモーヌッスね? だいたいあんな感じッスよ? あの二人は」

 言いながら笑う由里。その隣で麗華が呆れるように息を吐いた。

「まあ毎度のことよ。あたしらとシモーヌと綾香は去年同じクラスだったんだけど、綾香はあんな調子でクラス中と仲良くなって、とりわけシモーヌとは仲良かったんですよ」

「……けど、シモーヌが吉田君を気にするようになってから、綾香と張り合うようになった」

「んでも、綾香って運動も勉強もできるんスよね〜。シモーヌはお嬢なだけで、大抵のことは並にしかできないッスから、もうけちょんけちょんで」

「にゃるほどねい。ブリっちも引くに引けないわけだねい」

 クリスの締めに、三人娘がそろってうなずいた。

「まあ、基本悪い子では無さそうだしねい。あまりこじれないうちにフォローを……」


『勝負ですわっ!!』


 クリスのぼやくようなつぶやきをぶったぎるように響く声。

 もちろんシモーヌだ。

 綾香を指さし、堂々と宣言する姿は堂に入っている。

 そしてその宣告を受けた以上、綾香も引く気は無いようだった。

「良いぜ? 内容は?」

 真剣な顔で訊ねる綾香に、シモーヌが不敵な笑みを浮かべた。

「その前に、夏目綾香。あなたは八組ですわよね?」

「? そうだけど、それがどうしたんだ?」

 シモーヌの言葉に、訝しむように答える綾香。

 それを聞いてシモーヌは勝ち誇ったような顔になった。

「勝負はリンクネットでの対戦ですわ! それも七対七のチームマッチですわ!」

「なっ?!」

 思わぬ提案に、綾香は絶句してしまう。周りのもの達も、面食らったような顔をしていた。

「綾香さん、受けてもらえますわよね?」

「……」

 挑発するかのようなシモーヌの言葉に、綾香は押し黙った。

 シモーヌとのタイマンならまだしも、チームマッチともなればチームメイトを見繕わねばならない。それで周りに迷惑がかかるのは彼女の本意ではない。


 もちろん、シモーヌがそんな綾香の心情を読んで勝負をふっかけている……などということは無く、完全にノリと勢いで言ってしまっていた訳だが、いまさら引っ込みもつかず、視線が揺れていた。

 わずかな間の後、綾香が口を開こうとした瞬間。


『話は聞かせてもらったわ!!』


 学食に声が響き、綾香とシモーヌのやりとりを遠巻きに見ていた野次馬達の壁が割れ、セーラー服の上に白衣をまとい、癖のある黒髪をアップにした女性が、黒縁メガネのブリッジを押さえながら姿を現した。

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