第一二六話『桜色の音色』
「これは……?」
舞い踊る桜色の“S.C.W.E.R.”たちを見て、惣一はつぶやいた。一見して、同じように動いているの思えば細かく挙動が違う。
五基ひと組で桜の花を形作ったりバラバラに飛翔したり、周り、跳ね、従卒たちの舞いが続く。その真ん中で、ビキニスタイルの少女が軽くタップを踏みながら両手をしなやかに振るった。
「……わたし、勘違いしていたみたいなんだヨネ」
「勘違い?」
好奇心が勝ったか、あかりの声に惣一は訊ねてしまった。
「ウン。“並列操作”って言葉に引っ張られてネ♪」
あかりが笑顔で惣一に答えた。すると、あかりの周囲に展開していたディスプレイ群が、変化を始めた。
「この子たちを動かすのは、“命令”じゃない」
流れるように右手が左から右へと振られると、それに追従するかのようにあかりのイメージに合った新たな空間投影が展開されていく。
それは鍵盤。あかりの周囲に半円状に光で出来た鍵盤が展開されていく。さらには管楽器、弦楽器、打楽器と、光で出来たそれらが現出していった。
あかりは軽く深呼吸して、鍵盤を叩いた。
「わたしが紡ぐイメージ。“音楽”♪」
にこやかに宣言して、“音”が響きわたった。
同時に“S.C.W.E.R.”達が飛び回った。まるで、枷を外してもらった子犬のように、楽しげに。
「……ずっと考えてた。どうしたら、この子達がちゃんと動かせるのか? っテネ」
舞い飛ぶ“S.C.W.E.R.”を見あげるあかり。その目が優しく細まる。
「……指示や指定、コマンドも登録して、いかに素早く同時にコマンドを送れるかって考えていたけど。壊されていくこの子達を見ていて思ったんダヨ」
そして惣一へと視線を戻してふわりと笑った。
「……指示も指令もコマンドも無く、ただわたしの想いを受け取ってくれたらっテネ♪」
「…………」
あかりの言葉に、惣一は黙り込んだ。彼女の意志がダイレクトに“S.C.W.E.R.”に反映されるなら、それはすでに並列処理どころでは無く、狩羽あかりという少女を頭脳とした一個の生物群体である。
そこまで考えて、惣一は身震いした。
もし、これが集団戦であったなら。
もし、コントロールできる上限が今以上になったなら。
もし、彼女が十分な数の“S.C.W.E.R.”を従えていたならば。
きっと彼女は……。
そこまで考えて、惣一は軽く目をつむって眼鏡のブリッジを押さえた。
そうしている間にも、あかりの演奏が続き、その瑞々しい唇から美しいソプラノボイスが流れた。ついで、リズムの取り方が次第に大きくなり、ツーサイドアップとスイカのごとき象徴が揺れ動いた。
「……良い音デスネ♪」
演奏を聞いて、ギターケースを担いだ金髪翠眼の少女が楽しげにリズムを取っていた。
「確かにね。軽音部に欲しいくらいだ」
オデコの少女も楽しそうに足でリズムをとる。そして、金髪翠眼の少女は身を乗り出しながらあかりの姿を見て目を輝かせた。
「ワタシ決めました! 対抗戦では、彼女とヤりまーす♪」
ナイスアイディアとばかりに嬉しそうな顔で宣言する金髪翠眼の少女、シンシア。
その耳奥では、まだ奏でられぬセッションの音色が響いていた。




