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第一〇〇話『交わる刃の先に』


「……」

「……」

 静かに対峙する二人にならうかのように、会場中の人間が、物音ひとつ立てずにいた。それほどまでに、二人の間の緊張感は高まっていた。

 そして、微動だにしない二人の少女の姿を固唾を飲んで見守る八組のメンバー。

 すべてが止まった時間が、その場を支配した。

 その中で、額に浮かんだ汗の玉が、静かに降り始めた。それは静かに、しかし確実に地面を目指す。

 それが、あご先に溜まって一瞬だけ休憩を取る。一泊を置いて、それがあご先から大地に向けてダイブした。

 そしてそのまま大地へとたぐり寄せられたそれは、激突の瞬間に、美しい王冠を作り出す。

 それが合図となった。

「!」

「!」

 目を見開き、ひばりが一歩前に出た。剣術はおろか剣道、ちゃんばらごっこすら経験の無いひばりだが、俊夫のレクチャーもあり、剣の握りもちゃんとしたものだった。

 軽く降り上げられた日本刀が、辰美めがけて振り降ろされた。

 対して辰美は半歩踏み出しながら半身になりつつ手にしたに刀を降り上げた。

 ふたつの刃の軌跡が交差し、澄んだ音が響いた。

 ひばりの手にした日本刀が跳ね上げられ、体勢が崩れる。

 それを後目に辰美の刀が流れるように上段へ位置し、両手が添えられた。

 この瞬間に、ひばりの左半身の色が外へ向けて抜け落ちていき、それを追うようにサファイアブルーに染まる。日本刀が消え去り、差し出すように振り上げた左手の中に顕れるハンドガン。そのトリガーが引かれる。

 刹那の瞬間、光の軌跡が辰美の頭上より振り降ろされ、その弾丸を両断した。その斬撃は、翼の小女神の正中線に光の軌跡を残して振り切られた。

 互いに動かぬ影二つ。

 しかし、小さな影の手から、ハンドガンがするりと抜け落ち、床に落ちて跳ねた。

 それを機に、小さな影は、崩れ落ちた。




『第三試合終了!! 勝者、二年七組東野辰美!!』

 レオンハルトの宣言に合わせるように、上空のホロモニターに辰美の顔が大写しとなり、会場が一斉に沸いた。

 しかし、八組の面々は一様に肩を落としていた。琴代などは泣き崩れ、近くにいた女子に慰められていた。

 その中で、応援旗をかざした少年は、ただひとり意気を上げた。

「支倉あぁっ!! よくやったぞぉっ!!」

 その小さな体のどこから出るのか解らないほど大きな声で。

「おらっ!! お前らも声出せっ!! まだ試合は残ってんだ!! これから戦う奴らのためにも、俺たちは声を出し続けて応援するんだっ!!」

 小さな少年、慎吾の声を受け、八組の面々が声を上げ始めた。


『支倉さん! ありがとう!』

『よく頑張ったぞ!』

『他の連中も頑張れよっ!』

『フレーフレーは、ち、く、みっ!!』


 その声を聞いて、辰美は微笑んだ。

「……いいクラスメイト達だね」

 つぶやくような声に応えるようにデュエルモードが解除され、制服姿に戻ったひばりが顔を上げた。

「……うん。とっても素敵な仲間だよ」

 答えたひばりは、泣き笑いのような顔になっていた。

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