第53話 転生したので炎上します①
side 轟雷寺獅子男
テレビや小説で読むたびに憧れていたシチュエーションだ。
異世界転生。
新たな世界。
チート能力。
そして無双。
美の女神から与えられた能力は、本当に無敵の規格外。
この世界では俺は、誰にも負けない。負けようがない。
「ハッハッハ! こんなにも『餌』があるなんてなんて運がいい!」
目の前の盗賊共も、全く敵になんてならない。仲間を呼び集めているが、むしろ好都合だ。
何故なら、俺の能力は……
「これで全部か? なら、『範囲選択』……『捕食』する」
地面が割れて巨大な口が開く。
選択された範囲にいた者は全て呑み込まれ、悲鳴すらも口から逃げ出すことが叶わないまま、跡形もなく消えていく。
これが俺の『どんなものでも食い尽くして自分の力にする』能力。
その名も『万物捕食』。
鋼鉄を捕食すれば身体を鋼鉄の硬度に上げ、モンスターを捕食すればその怪力や素早さを得る。
最初は自分の口でしかできなかった捕食も、能力を集めることで範囲を広げて多数の相手でも楽に捕食することができるようになった。もはや、俺に弱点はない。
他にもチート能力を持って転生した奴はいるらしいが、この成長する能力をこれまで派手に使わず地道に力を蓄えた俺はもはや他の転生者の力を超えているだろう。
今までは無視していたが、ボツボツ女神の望み通りに神威とやらを示してやるか。
「ねえ……それが、あなたの能力? どんなものでも消せるって本当?」
「……ん? 誰だお前? 今の見てたのか」
振り返ると、変な女……いや、小娘がいた。
全身に分厚い布を巻いたような服……まるで手足がどこにもくっついてない拘束服だ。変態か?
「ねえ……何でも消せるなら、消してほしいものがあるの」
「何を勘違いしてるか知らんが、俺は便利屋じゃねえ。それとも何か? 傭兵みたいに俺を雇おうってか?」
「ちょっとでいいの……これを、消してほしいだけなの」
女が布に巻かれて鍋掴みみたくなってる手を解放すると、手の平の上に火の玉が浮かぶ。
魔法……って、感じじゃないな。
冒険者やら盗賊やらの使う魔法は何度も見たが、それとは違う。あれは術者の呼吸に合わせて必ず揺らいだが、これは全く別の動きをしている。
まるで生きているかのように……
「呪いか? それとも火の幽霊にでも取り憑かれたか? まあいいぜ。新しい能力が使えるようになるかもしれないしな」
「なら……」
その先は聞こえない。
何故なら、一瞬の内に女は背後に出現した俺の『顎門』に呑み込まれたからだ。
今頃、吸収されながら何で自分が突然に闇に閉ざされた空間に落ちたかもわからずに藻掻いているだろう。
「ハッハッハ! 悪いな。さっきのを見られた以上、勝手にどこかで話されても困るんだ。他の転生者に能力を知られるのは嫌だからな。だが、約束通りその火の玉は消してやるよ! お前ごとだがな!」
この瞬間がたまらなく楽しい。
獲物が生きたまま捕食され、理不尽な力に絶望しながら俺の力に変わっていくこの感覚。まさに病み付きになるってやつだ。
他の転生者もこうやって捕食してやる。
この世界に来て、絶対強者になったと思っていたところを、この俺に食い尽くされて、自分が餌でしかないと悟らせる。
俺が捕食者だ。
俺こそが、奪う側だ。
もう誰にも奪われない。
俺こそが最も……熱い。
熱い……熱い……熱い?
なんだ、熱い、全身が、腹が、なんだこれ、なんなんだ!
「何で、俺の『顎門』が消えてない……? いや、何か出て……」
赤く輝く棘?
いや、違う、空間に開いた亀裂、『顎門』の閉まったはずの入り口、それを、左右に向けて、炎の指が力尽くでこじ開けようとしている?
「ねえ……早く消してよ。何でも消せるんでしょ? 何でも食べられるんでしょ? なら、早くこれ、全部食べてよ」
『顎門』が初めて、俺の意思に反して強引に開かれる。
熱い熱い熱いアツイアツイ!
体内から、目の前から、熱が俺を焦がして!
「グァアアア! やめ、やめろ! なんだてめえは! これは、まさか転生者の!」
「ねえ、全然消えないよ。もっと食べて。もっともっと、遠慮しなくていいから全部食べて……この火を消して! 水に入っても何をしても消えないの! あなたなら消せるんでしょ!」
「や、やめ、ぐっ、やべ、て……」
『顎門』の向こう側、俺の内側に繋がる空間に無限の炎が満ちている。
消化しきれない、消火しきれない、熱が俺の容量を超えて、それでもまだ無理矢理に押し込まれ続ける。
体内に火傷の痛みが走ったと思ったら、すぐに痛みが消える。
吸収できたのかと思って腹を触ると、ボロリと真っ黒になった何かが崩れ落ちた。それは、不出来な炭のようなもの。
崩れ行く身体を感じながら、前を見る。
そこには、『顎門』をこじ開けて姿を現す、火焔で形作られた魔人の姿があった。
その体内からは、傷一つない拘束服の女が姿を見せる。
「ねえ、早く食べてよ! 食べなさいよ! どうして食べるのをやめちゃうの! ちょっと火が弱まったのに! どうしてもっと食べてくれないの!」
そう叫ぶ小娘は自分自身が炎に囲まれていて、俺が内側から溢れた炎に呑まれていることに気付いていない。
やめてくれと伝えようにも、喉は灼けて、舌は崩れて、肺は焼け落ちた。
もはや俺は、立った人の形をした炭の塊のようなものだ。
内側から炭になったから外見はまだ変わっていないように見えるかもしれないが、すぐに熱は外側へ溢れて、崩れ去る。
俺は万物を捕食できると疑わなかった。
だが、あらゆるものを喰うことができても、無限を食い尽くすことはできなかった。
内側に溜まった熱が俺という器の限界を超えようとするのを感じる。
異空間を通じて相手を捕食するはずだった俺は、その異空間を制御する能力を失い、その全てが体内に還元される。
だがきっと、こいつは傷一つなくそれを眺めるだけだろう。
この火焔の魔人は、俺の『顎門』すらものともしなかったのだから。
「こ……ば……もの……が……」
この世界に来て多くのものを食い尽くしてきた俺は、噛みついてはいけない相手に顎門を向けたことを悟りながら、轟炎に消えた。
side 日暮蓬
この世界に来てから眠るたびに来る夢の世界。
決まって現れるのは、この頭から麦穂を生やした巨乳女。
私にとんでもない能力を勝手に決めて押しつけてきた女神。
豊穣の女神『アルファ』。
この世界で三大女神として崇められている女神の一人。
『訂正を。蓬の能力は私の独断ではなく蓬自身の適性と無意識から決定したものです』
「この会話が何度目かわからないけど、私一応言ったよね! 『怪我や病気にならずに健康に生きられればいい』って! こんな触れるもの何でもかんでも燃やすような能力望んだ覚えない!」
『その守護者がいる限りは負傷が発生する確率は極めて低く、また病原体との接触もあり得ません。願望は満たされているのでは?』
「ちょっと丈夫で健康な身体で十分だって言いたかったの! 前世と同じ肉体じゃ医療未発達の世界じゃすぐ死にそうだったからってだけ! 今すぐ取り替えてよ!」
『転生特典についての指定は転生処理の際にのみ受け付けています。またの転生の機会があれば次回は気を付けてもらうしかありません』
「今すぐ何とかしてほしいんだけど! この欠陥能力!」
『仕様です』
「いつもそればっかり!」
どうせ転生させてもらえるならもっと人間的な神様がよかった。
この豊穣神、人間の無意識まで読み取れるのに心が理解できない上、何度話しても全く反応が変わらない機械的な神。
この能力も特別な能力なんていらないって言ったのに機械的に決められた。
適性が高くて強力な能力になるからって、コントロールが効かない能力なんて与えてきたとんでもない神様だ。
大は小を兼ねるという発想にしても酷い。
私は争いとか無縁の生活を送りたかったのに、これじゃ歩く大火災だ。
服だってしょっちゅう焼失するから燃えても再生する特別な素材のやつ(私を襲った冒険者だか盗賊だかの遺灰の中に残ってたやつ)しか着られないし。
確かに、この魔人は炎のくせに実体があるらしくて、熱に耐性がある相手でも普通に物理で殴り殺せるおかげでこの世界に来てから私は一度も掠り傷すら負ってない。
自動発動かつ過剰報復とかいう無駄な戦闘力のせいで行く先々で怪物か悪魔みたいな扱いをされる始末。
おまけに食べ物にすら触れられないから食べられないし……代わりに魔人が燃やした物が私の食べたものとして栄養源になってるらしくてお腹減らないんだけど。味気なさ過ぎる。
いらない能力どころか、使わずに普通に生きることもできないなんて欠陥以外の何物でもない。
『それにしても、今日はよくやりましたね。万物捕食は放置すれば危険な擬似権能でした。初期の段階で仕留められたのは収穫です。彼の自己強化のために行ってきた悪行を公開すれば私への信仰集約率も上昇します。あなたが望むならささやかながら特典の強化も検討しましょう』
「絶対嫌!」
『なら、何のために他の転生者を探したのです……いえ、そうですか。あなたの守護者を打倒できる転生者はいるかもしれませんが、守護者を消すことができる転生者はいません。それができるとすれば……あなただけでしょう』
「それができないから困ってるっての! この草女神!」
『守護者とは敵を退けるもの。守護者がどう動くかは、蓬の心次第ですよ』
「うっさい! 帰れ! てかそんな胸みせつけんな!」
『仕様です』
「うがぁああ!」
こうして今日も、私の願いは叶わない。
朝になり目が覚めると、大抵はゴツゴツとした岩の上だ。
これは、前に野宿していたら寝込みを襲おうとした何かを魔人が勝手に焼き殺した末、山火事に発展してしまったからだ。
私自身は平気だったけど、周辺被害がとんでもないことになる。だから、燃え広がるものがない場所で眠るようにしている。
起き上がり、土に埋めておいた持ち物を確認する。
この服と同じ火焔蜥蜴の皮で作った袋も断熱までは完璧じゃないから、油断してると中のものが勝手に蒸し上がったり黒焦げになっていたりするから。
中身を確かめると、この世界の硬貨がジャラジャラと入っている。働いて稼いだわけじゃなくて、魔人を見た盗賊やら旅人やらが勝手に置いて行ったものだ。
手を出してこなければ何も起きないと言ったのに、まるで祟りを恐れて捧げる貢ぎ物のように捨てていく。
おまけに勝手に置いていったのに、私が魔人を使って強盗みたいなことをしているという噂まであるらしい。
仕方ないからお金は拾って集めている。
この服を作るのにも職人さんに払わなきゃいけないお金があったし。
私はできるだけ魔人を外に出さないようにしながら、地方で起きた事件の噂を集めてその場所を巡っている。
転生特典はこの世界の常識を越えた強力な力だ。
普通に魔法を極めても同じことはできないし、対抗もできない。
だけど、他の転生者なら能力の封印や消去の能力を持っているかもしれない。
女神はああ言ってたけど、神には他の神々の担当する転生者の能力はわからない。魔人を消すことのできる転生者がいないとは言い切れない。
「ここが、つい最近に大事件が起きた街……『ラタ市』」
転生者がいたからといって、それが私の願いを叶えられる転生者かはわからない。
それどころか、他の神の力を受けている転生者は大抵は敵対してくる。
この世界においてほぼ絶対強者と言える立場の転生者にとって、他の転生者というのは自分の絶対性を脅かす存在だ。
争う気がないと言ってもなかなか信用してもらえない。
いつかは死ぬのは前世でもこの世界でも同じなのに、みんな一度死んだくらいで臆病すぎじゃなかろうか。
まあ、転生者を見たら敵だと思うというのもわかる話ではあるけど。
他の神々の送り込んだ転生者を倒すということは、その神々の神威を否定して信仰を削ぐことになる。
私たち転生者の活躍は神々の勢力圏を書き換えることになる。
だから、転生者による勢力拡大を狙う神々は昨夜みたいに他の転生者を倒したご褒美として、生まれた利益の一部を使って転生者に能力強化を持ちかけてきたりする。
豊穣神アルファは三大女神だから信仰に余裕があって強要はしてこないけど、力が弱くて転生者に望みをかけている小さな神々は積極的に他の転生者を狙うようにしてくることもあるらしい。
もちろん、信仰に余裕のある神の方が基本的に能力の性能は上になるから返り討ちになるそうだけど。
「大きなことがあったのに人がたくさん死んだって噂がない。それに『誰がやったか』っていうのが曖昧になってる。転生者のパターン」
私はこの街で転生者が何かした……多分、勢力の大きな神の手駒の転生者がぶつかったと思っている。知名度の高い神々やその転生者はその動きが政治的な影響力を持つから、不都合な活動は詳細が伏せられることが多いらしい。
推測するなら……大きな神のところの転生者が能力を使って好き勝手してたのを、小さな神のところの転生者が倒してしまったとか。
もしそうだとすれば、能力の相性がよっぽど良かったか、あるいは人間として強い転生者だったはずだ。もしくはその両方か。
街に入ると、そこは少々荒れ気味ながらも活気に満ちた人々の営みがあった。
なんでも、鉱山だった場所から石油が出て新たな産業の要となりつつあって、それを活用するために採掘施設を作っているため人手が足りないらしい。
強力な能力を持つ転生者としては本来はそれを手伝って信仰を集めるべきなのかもしれないけど、あの女神のためにそこまで真面目に働く気はないし、石油採掘場なんかで魔人が出たらとんでもないことになるからそういうことはしない。
建設地を避けて、街の外れへ。
公式に伏せられてる情報を集めるには、こういうアウトローが集まりそうな場所が一番だ。
特にそう……ああいう、スラムの子供とかが盗品を売るのに使う質屋とかがいい感じだ。ああいう場所なら、お金を出せば『ここだけの話』を聞かせてくれる。
火焔蜥蜴の皮で包まれた手で暖簾をかき分けて、慎重に入店する。もしも不意に頭に触れたら放火沙汰になる。
「おう、らっしゃい……その装備、冒険者か。紹介状はもってるかい?」
「この店、まさか一見さんはお断りですか?」
「……いいや、特別待遇がないだけだ。普通に棚に並んでるものなら買えるぜ」
特別待遇って、注文とか取り置きとかなんだろうか。
それともこの世界で早くもポイントカードでも採用してるんだろうか。見た目はさびれた質屋なのに。
「情報は買えます? 特別なことじゃなくても、最近この街で起きたこととかでいいんですけど」
「……悪いが、詳しいことは話せねえぞ。今この街は新しい目玉のためにてんやわんやしてんだ。面倒事を起こしてほしくはねえ」
「つまり、知られると面倒なことがあったんだ」
「……お客さん、なんか買うかい?」
つまり、適当なものの支払いで色を付ければ、その値段に応じて情報を教えてもいいと。
まあ、情報屋じゃなくて質屋さんだし、お金の受け渡しとかはそっちの方が自然だろう。
「じゃあ……」
正直、私には必要のないものばっかりだけど。というか、半端なものは持ってても燃えちゃうし。
何でもいいけど、せめてうっかり燃えないものの方が……
「……え? これ……」
紙切れ……いや、これは間違いなく……
「ああ、それか? そりゃ結構値の張るもんだぜ? 由来が聞きたきゃ……」
「一万円札……日本銀行券……転生者の持ち物!」
感情の高ぶりで髪から火の粉がこぼれた。危うく大事な証拠品を燃やしかけたけど、なんとかそれを防ぐ。
店主に詰め寄って口から出た私の声は、自分でも驚くほど熱くて、でも静かだった。興奮と冷静にならなきゃという思いがぶつかって変なことになってる。
「あれ……誰が持ち込んだんですか? どんな人ですか? 今、どこにいますか?」
感情の高ぶりで熱が漏れるけど、物を燃やさないようにそれを胸の中に抑え込む。
切羽詰まった精神は、私の言葉に想像以上の凄みを生み出していたのか、店主は若干恐怖を感じたように身を退く。だけど、完全に怯えて話せなくなってしまうというようなことはなかった。
「……買うのか、買わないのか。どっちだ」
その態度に、私も少し気持ちを落ち着かせる。
きっと、こんな治安の悪そうな場所に店を構える彼にとって、客が脅かしてくるというのはそれほど珍しいことではないのだろう。
おかげで、私も何も燃やさずに済んだ。
「買います……だから、教えてください」
「金を先に……って、無理か。我慢できないのはわかった、だからそう熱くなるな。俺を炙り殺すつもりか。話してやるから、熱を押さえろ」
店主の話は、あの一万円札の持ち主の特徴と、彼の成したことについてだった。
少女を連れた男、話からして最初に着ていたコートの下の服は日本のもの。
そして、その転生者が、街の人間を操って裏から支配しようとしていたもう一人の転生者の能力を『無効化』して倒したということ。
それが、一か月近く前だということ。
転生特典を『無効化』した転生者……私の探し求めてたもの。
「やっと……やっと見つけた……ふふ……ふふふふ……」
「嬢ちゃん……代金は忘れんなよ。後、他言すんなよ? 神殿とのごたごたなんて勘弁だ」
「はい、じゃこれで」
ジャラリと、音を立てて袋を置く。
半ば脅した形になっちゃったし、これで足りればいいんだけど。
「おい、さすがにこれは多すぎじゃ」
「じゃあ、これはいただきますね!」
一万円札を棚から手に取って、店の外に出る。
転生者が街を出たあとだというのなら、すぐに後を追わないといけない。
「魔人。このお札の匂いを憶えて。持ち主を探すよ」
火焔の魔人は鼻が利く。
一度襲ってきた相手が逃げ出したとしても、必ず見つけ出して燃やし尽くせるほどに。
これでもう、目標は逃げられない。
「さあ、行くよ。その人が少しでも近くにいるうちに」
登場人物紹介
『轟雷寺獅子男』
『美の女神』により転生させられた転生者。
死因は旅行中に釣った有毒の魚を食したことによる中毒死。なお、本人は持ち帰るまでに鮮度が落ちたことによる食中毒だと思い込んでいる。
生前から『転生もの』への興味が強く、定番の成長力の高い能力を選んだものの、転生してしばらくしてから冷静になり、『とりあえず餓死することはないので無理をして危険な冒険をする必要はない』と考え、小さな村で数ヶ月生活し、現地の村娘と親しくなるも村が盗賊に襲われて壊滅。なんとか能力を利用して生き延びるものの世話になった村人全て(親しくなった村娘を含む)を失い、自身が能力強化に力を入れていれば何も失わずに済んだと自分を責め続け、ひたすら能力強化に努めながら、同時に同等の能力を持つであろう他の転生者から隠れ潜む山籠もりのような生活を続け、モンスターからの能力取得に励んでいた。
本人に自覚はないが、転生特典『万物捕食』は捕食対象から能力と同時にその能力を十全に機能させるための精神性をも取り込む性質があり、モンスターや盗賊などを我武者羅に取り込んでいった結果として精神が変質し、相手の善悪に関わらず捕食できそうな位置にいれば捕食するという考え方が染み付いてしまってた。日暮蓬と接触したのも、元はといえば村を襲い、その被害から討伐を試みた冒険者が死に際に運んだ情報が原因である。
彼の満たされぬ『空腹』が求めていたものが村娘の家でテーブルを囲んで食べた手料理であったことは、今や彼自身を含め誰も知らない。
『何でも食べられる能力』なのに、『彼女の手料理』は二度と食べられない。
※もう出番ありません




