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転生したので狂信します  作者: 枝無つづく
四章:見境なき『差別者』たち

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第121話 転生者の傾向

side テーレ


 馬小屋にて。

 冒険者を脅して手に入れた情報と私がギルドで手に入れてあった情報を合わせて状況を確認する。


「つまり、依頼の大本はおそらくこの冒険者ランキング93位。そして、マスターが遭遇したって転生者は特徴と噂を合わせるとおそらくこいつ……『破砕槍(ブレイクランス)』の異名を持つ冒険者。本名は不明で転生者としては知られてないけど……確かに、不自然と言えば不自然な評判ね。素材採取とか遺跡探索みたいな地味な仕事をほとんどしていないのに、装備もよくなってるし名前も売れてる。たぶん、裏のグレーな依頼を中心に受けてるわね。ちなみに、今回の依頼では依頼人からの名指しで依頼を受けたらしいわ」


 転生特典にもいろいろある。

 転生者が戸籍代わりに冒険者ギルドへの登録を行いやすいといっても、戦闘向きの能力ばかりじゃない。

 何かを創り出せる能力なら創り出したものを売ったり自分で使ったりしていけば安全に生きて行けるだろうし、私みたいな従者使役系なら稼ぎも生活も全部任せて楽な生活ができる。


 本当に自分から危険な冒険者業をしながら生きているとしたら、かなり戦闘向きの能力を持っている可能性が高い。

 そして、裏のグレーな依頼ばかりを受けているというのなら、それは転生者としての能力が露見することを恐れてか……それか純粋に、表沙汰にできないようなやり方をしているか。


「テーレさんの推理が正確なら、この93位さんは『戦の女神アービス』からの指令を受けて動いているだけだとして、この転生者さんが私たちに敵対する理由がわかりませんが……戦の女神は女神ディーレ様を特別敵視しているそうですし、強く頼まれて異教徒である私たちを打倒しようとしているという可能性もあります。まあ、その点に関しては直接相対することがあったら伺ってみることとして……報酬目当てで動いている他の冒険者の皆さんに関しては、その93位さんに依頼を取り下げてもらえば下がってもらえそうですね」


「依頼で動いてる他の冒険者は約三十人。けど、こいつらは大した問題じゃない……そう言いたいのね」


「少なくとも、無理に全員返り討ちにする必要性は感じませんねえ」


 言い方は回りくどいけど、マスターの言い分、この事態へ対処するアプローチとしてはこういうことだろう。

 私たちを狙う動機で敵方を分けると二つに分かれる。


 一つは、戦の女神からの神託で動かされていると思われる中心人物、依頼主(スポンサー)である『93位』と敵集団の中で注意すべき特異戦力である転生者『破砕槍』。

 もう一つは、ただ単に依頼の報酬を目当てに徒党を組んだ冒険者約三十人。


 前者は動機が信仰心やそれ以外でも強い感情が関わる何かだとしたら、諦めさせることは難しいかもしれない。

 できたとしても、かなりの手間がかかるはずだ。


 けれど後者は、単なるビジネスライクな利害関係。

 依頼に報酬を出す『93位』さえ押さえれば問題なく無力化できる。

 ギルドの精査を受けたちゃんとした依頼なら危険な仕事への補償の意味合いもあって依頼主に何かあっても先払い金から報酬の何割かが支払われることが多いけど、個人依頼では依頼主が急に報酬を払えなくなればギルドからの補償はない。


 つまり、最低限相手をしなければいけない相手は現状二人だけ。

 そして、その二人の『戦い方』は真逆だ。完全な後方支援と対人特化の前衛。隠れる敵と追いかけて来る敵だ。


「この『93位』に関しては上位百人には入ってるけど、直接戦闘というより秘宝探索(トレジャーハント)とか遺跡探索のプランニングとかに特化した財力タイプね。手当たり次第に依頼をこなしてその実績が認められたってタイプじゃなくて、貴族とかギルドへの受けがいい依頼を効率的に受けて今の地位に就いてる。まあ、それだけでランキングに入れるのはそれはそれですごいけど……きっと、今回みたいに汚れ仕事でも引き受けてきたんでしょうね。居場所さえ掴めれば、生殺与奪を握って脅しつけることはできる」


「対して資料を見る限り、『破砕槍』の方は腕っぷし自慢。冒険者や軍人相手に何度も決闘を……いえ、逆ですか。何度も決闘を挑まれて、あるいは挑ませて、悉く『無傷』で返り討ちにしていると。財力や権力への欲求が強いわけではないものの、対人関係、特に女性関係で問題を起こしているようですねえ。思えば、ギルドでの一件も……私を悪者にしてアーク嬢の気を惹こうとしたのですかね。それで彼女に呪いに感染しているという容疑がかかった途端に手を退いたと。クックッ、決闘では『無傷』で勝てるそうですが、『呪い』は苦手なのですかね?」


 直接戦う力がなく財力や権力がある者が、直接戦闘力が高くて権力や名誉に興味のない用心棒を雇って敵に直接攻撃される心配のない位置から刺客を繰り出す。よくあることだ。


 そう考えれば、能力は不明だけど対人戦で負けなしの転生特典を持つ転生者を従えた冒険者ランキング入りの財力持ちが手を組んでいるというのはかなり厄介な形だ。

 この前衛後衛の連携が完全に機能している限り、正面突破の難易度は高い。


「あのククリさん、でしたか。現場指揮を執っていた方が依頼人や仕事仲間のことをしっかり調べてから仕事に当たってくださる方でよかったですね。この情報群はかなり助かります」


「汚れ仕事だと最後に『分け前なんてくれてやるか』って感じで仕事中の事故に見せかけて仲間から背中を刺されるってこともあり得るからね。依頼人も似たようなことはないわけじゃない。ギルドを通した正規の依頼なら完了後の調査とかもあるからそういうことはあんまりないんだけど」


「ククリさんが想定したパターンとしては他の冒険者が全て束になっても敵わない『破砕槍』さんが本命、他は『直接対決に持ち込めれば強い』という彼をサポートする包囲網の役割しかなく、用済みになれば全員『破砕槍』さんに消される……というのはさすがに極端かもしれませんが、用心深い方なら一応知っておきたいと思うのは当然ですか」


 『直接戦闘に持ち込めれば強い』……それは『決闘では勝ち目がない』という情報のこちらに有利な面を暗示する表現だ。


 確かに、探知能力や使役能力に長けたタイプの能力なら、ここまで大勢の冒険者を探索に割く必要はないし、まだ見つかっていないのは不自然だ。

 敵の転生特典は直接戦闘になったら効果を発揮するタイプ……『決闘に無傷で勝ち続ける』ということから考えると、防御能力の高い能力である可能性は高い。


「『直接対決に自信がある』『無傷での勝利』……そして『戦の女神』の渡した転生特典。それを合わせれば、かなり絞り込めるかも」


「というのは……転生特典として転生者に与えられる能力のパターンから、ということですか?」


「うん。私が『使役系能力』の『人間型従者』であるみたいに、性能は違っても転生特典はある程度分類が決まってる。たとえば、ラタ市で戦った相手の能力は『使役型能力』の『対象不定』『発動系』だけど、その発動条件に『相手の真の名前を呼ぶ』って条件を指定するっていう個別設定(カスタム)がされてた。他にも似たような能力で『相手の瞳を裸眼で見つめる』とか『自分の体液を摂取させる』みたいな発動条件が違っても結果としての現象は同じって能力は転生者の指定次第であり得る。だから、過去の似たような能力を元に考えれば攻略法が見つかるかも」


 同じように、『使役系能力』の『従者』にも人間型だけじゃなくてドラゴンや神獣、その他のモンスターの姿をしているものがあったりする。

 ディーレ様は転生特典に割けるリソースが少なかったから、人間以外の従者だと人語を話せるまでに強くできなくて不便になってしまうこともあって私は人間体で現世に来たけど、三大女神の転生特典なら人間型でなくとも人語を話せる従者を作ることは可能だ。

 そして何も、女神の違いは一次元的な性能の違いだけじゃない。


「転生者の性格というか転生特典の特徴は神々によって傾向があって、それからも能力は絞り込める。過信しすぎるのは危険だけど……一応参考までに聞いておいて」


 多分だけど……私にはいろんな転生能力の前例を資料で見て知識があるけど、相手の能力を推測して対策を立てるというのならマスターの方が得意だ。


 それこそ、ラタの街でアーリンというドルイドから聞いた過去の転生者の能力をいくつか聞いただけで敵の能力をある程度確信をもって暴いたみたいに……まあ、その推理の根本が間違っていたのはあれだけど、現実では結論があっている方が大事だ。

 こいつに考えてもらうために情報を与える。それが一番合理的、というやつなのだろう。


「美の女神の転生特典は『使えば勝てる』、それこそ私を操ったやつがいい例だけど、『使える状況ならそれを使えば勝ちが決まる』みたいな能力。性能差で相手を圧倒する『美の女神』の性格そのまんまね。その分、その『使える状況』を整える必要があるからそこが狙い目になるけど。猛獣の溢れる夜の森の中でファッションショーをやってても、誰も魅了できないでしょ?」


「確かに、そうですね。機能美も構造美も、その力が発揮されるのはそれが正しく評価される土俵に相手を持ち込まなければいけない。怪獣に対して『自分はお金持ちだぞ』と叫んでも意味がありませんし、小柳さんの能力については相手に名前がない場合、おそらく多くのモンスターには通じない能力でした。次をお願いします」


 理解が速くて助かる。

 それに、『戦の女神』の転生特典の特徴をわかりやすくするために他の女神の特典から説明しているけれど、それを拒否して結果だけを焦らないのもありがたい。

 今回の相手が『戦の女神』の派閥であるっていうのは私の推測であって確定とは言えないわけだし。


「じゃあ、次は豊穣の女神。その転生特典の特徴は簡単に言えば『誰が使っても強い』。それこそ『身体能力大幅強化』とか『技能成長速度加速』とか『自動防衛障壁』とか、常時発動や自動発動、あるいはそいつに任せておけば勝手に問題が解決するみたいな機能的な従者の使役。『工業』とか『産業』、そして『量産』の神でもある『豊穣神アルファ』の性格にピッタリな能力よ。正直、『無傷』ってワードから考えるとこの豊穣の女神の特典が怪しいと思うんだけどね」


「なるほど、参考までにというのはそういうことですか。テーレさんも三大女神の能力分類でいえば豊穣の女神の特典能力が一番近いのでしょうが、実際には幸運の女神ディーレ様の転生特典。まあ、ディーレ様に関しては初めての転生者ということで傾向も何もありませんが、先入観とは怖いものですしね」


 三大女神の内二つを説明して、ようやく本題に入る。

 何故先に他の二つの女神を説明したかと言えば、戦の女神アービスの転生特典が一番傾向として分かり難い特徴を持つからだ。


「残る最後の一つ、問題の戦の女神の転生特典は……一言で表現すると『上手く使えば強い』。その能力を使う人間の頭がよければ際限なく強くなるかもしれないし、そいつが馬鹿なら上手く使えず腐らせる……まあ、戦の女神は腐らせるような人間を転生者に選ぶことなんてほとんどないんだけど。とにかく、概念的だったり応用範囲が広いシンプルな能力だったりして使い手が習熟していくとどんどん厄介になる。そういう能力が多いのよ」


「というと、具体的には過去にどのような能力が?」


「『描いた絵を実体化させる能力』『触れた相手と何かを交換する能力』『瞳を鍛える能力』『鉛(物質A)を金(物質B)に変換する能力』……みたいな感じ。他にも複雑なのとか、設定を細かく変化させて状況に臨機応変に対応したりできるのとか、そういう万能型が多いわ。だけど、その分単純な物量や出力での対決になると『美の女神』や『豊穣の女神』の能力に押し負けるだろうし、相手に合わせて設定を変更することを考えたら不意討ちに弱くなる傾向もある」


「なるほど、それならば『決闘』において無敵というのもしっくり来ます。トラップや物陰からの奇襲が怖い遺跡探索に手を出さないのもその能力が『状況への順応に時間のかかるタイプの能力』である可能性が高いと」


 その可能性は十分にある。

 たとえば『特定の武器によるダメージをゼロにする』みたいな能力なら、相手の武器を先に調べてその武器に対しての無敵を設定しておけば、ほとんどのダメージを防ぐことができる。


 けれど、その能力だったら相手が突然武器を切り替えたり、武器を捨てて素手で攻撃した来た時なんかは攻撃が通ってしまうから『無傷』で勝ち続けるのは難しい。

 特典能力の熟練度にもよるけど、『特定の武器』の設定を切り替えるのは一瞬では難しい。


 他にもダメージカット系の能力……あるいは、生産系能力でそういう効果を付与した防具を自作して身に着けているという可能性もあるけど、手元にある情報だけじゃ特定は難しい。


「かといって、この街中でそんなトラップを仕掛けさせてもらえるとは思わないけどね。きっと『破砕槍』は自分が確実に勝てるような、こっちと真正面から戦える状況になるまで姿を現さない。多分それまでは、『93位』の近くで警護でもしながら高みの見物でもしてるんじゃない?」


「そうですね……それを表に引っ張り出すために、包囲人員の冒険者の皆さんを倒すというのは手間ですし、こちらが不意討ちを受けても困ります。となると……」


「全員は相手にせず、ピンポイントで狙い打って引っ掻き回しながら、敵の『本陣』を探す。マジックアイテムでの通信は傍受や探知が結構簡単だから、おそらくこの二人は情報を集めるためにアナログな手段……人間の足を使った伝令や記録映像の運送なんかを行ってる。こっちから冒険者たちにアクションを起こして、その報告を本陣に届けさせる。途中、偽装や経由地点なんかがいくつかあるだろうけど、何度も繰り返せば範囲を狭めていくことができるわ」


 互いに拠点を知られていない状態で、相手の陣営の人数を減らしながら隠された敵の旗印を先に討ち取る。言わばフラッグゲームだ。人数的に戦力差があることを考えれば一番悪くない方針だろう。

 こちらの味方の少なさという弱点が、命令系統の単純さと自由に動きながら身を護りやすい身軽さという利点に変わる。


 それに、こっちにはそれにおあつらえ向きのものがある。

 本来は分断されたときの合流用だから、いきなりこんな形で使うことになるとは思ってなかったけど。

 マスターも同じことを考えたのか、渡したアイテムの内のカード状のものを耳に当て魔力を通す。使い方は渡したときに大雑把に説明してある。


「ではテーレさん、敵の混乱を煽るために二人で行動するとして、連絡にはこれを使いましょうか。『テストです、聞こえていますか?』」


「……『聞こえてるわ、頭の中に直接』」


 いわゆる『念話』のマジックアイテム。

 この手の遠隔通信系の魔法は前の戦乱で妨害や傍受の技術の方が発達しすぎてあんまり普及していないけど、これは特別製だ。

 マジックアイテムであると同時に、私の人間体とマスターの肉体の一部(髪の毛やら血液やら)を組み込んだ『法具』でもある。


 通信距離に限りはあるけど、異空間にでもいなければ妨害や傍受の心配はいらない。

 私の『天啓』の受信能力を利用した、天界経由の衛星電話のようなもの。私とマスターだけの専用回線だ。

 これで、作戦行動の連携のためにある程度離れるくらいなら安心して作戦に組み込める。これまでの一時も目が離せなかったときとは大違いだ。


 まあ、実際にちゃんと機能するかは調節も込みで手直しすることも考えてたけど、こうやって使ってみてちゃんと使えるなら問題ない。


「『敵側に顔を把握されているのはアーク嬢と私だけ、であれば、どうすれば敵を掻き乱すのに合理的かはわかりますね?』」


「『……はあ、わかってるわ。動き方はこっちで指示する。敵の居場所を特定するには、それが一番よね』」


 基本作戦は、こちらが『追われる側』であることを利用した誘導作戦。

 マスターが移動しながら敵にわざと見つかることで、敵の『本部』への報告を誘発し、その方向や距離をノーマークの私が特定する。それを繰り返していけば、あちらの本拠地もわかるはずだ。


 ただ、それはマスターが囮になって、なおかつある程度は私の援護なしでも切り抜けられる戦闘力を持っていることが前提になる。

 つまりは、修行の成果の見せ所だ。


「『うっかりやられんじゃないわよ』」


「『ええ、わかっていますとも。では、修行の成果をご覧に入れましょうか』」


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― 新着の感想 ―
[良い点] 特撮好きテーレさんイイっすね。 ライダーベルトの再現もお願いしますw [気になる点] 途中から狂信者視点に変わってる?
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