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『オレの生徒はお嬢様!?』  作者: 宇都宮かずし
第二部 オレの生徒は男性恐怖症!?
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第二十一局 真相 一本場『望まぬ邂逅』

「はいっ! たこ焼き二つ。お姉さん綺麗だからオマケしといたよ」

「あ、ありがとうございます……」


 たこ焼き屋のおっちゃんのセリフに、苦笑いを浮かべ答える。


 てか、全然嬉しくねぇ……


 手提げのビニール袋に入ったたこ焼きを受け取り、そそくさと踵を返すオレ。


 さて、どうしたものか?

 気分はゴール直前で、振り出しに戻った気分だ……


 彼女――北原さんとオレの繋がりは理解出来た。何より北原さんの男性恐怖症の原因に、オレが一枚噛んでいる事も分かった。


 しかし、当の本人は自分を助けたのは女性だと――姉さんだと思っている。

 このままでもし、オレと姉さんが入れ替わったとしたら、姉さんは北原さんの目を誤魔化し続けられるだろうか……?


 ――――不可能だ。


 いくら外見が似ていても、一度見た後ろ回し蹴りだけでオレを特定した北原さんを誤魔化せるとは思えない。


 何より――


 オレは俯きながら、右の拳を握り締めた。


 そう、何よりこの右手の傷を見られているのだ。とても誤魔化させる訳がない。

 なら、どうしたものか……?


 結局、思考は同じ所をグルグルと回るだけだった。


 オレは大きくため息をついて、俯いていた顔を上げた。

 そろそろ北原さんが待つベンチが見えて来る。いつまでも、こんな辛気臭い顔をしてはいられない。


 オレは気持ちを切り替えるように、両頬をパンッと叩いた。


 さて、北原さんは――って?


 オレは北原さんがいるはずのベンチを視界に捉えた瞬間、思いっ切り顔を(しか)めた。


「たくっ……油断も隙もねぇ」


 そう、北原さんのいるはずのベンチを囲むように、いかにもなナンパ男どもが五人ほど群がっていたのだ。


 オレは袋からたこ焼きを取り出しながら、小走りに男達の方へと近付いて行く。

 そして、背後から真ん中にいた男の肩をトントンと叩いた。


「んあぁ? ――――あちゃぁぁああっ!?」


 怪訝そうに振り向いたナンパ男Aは、頬を抑えながら奇声を上げて不思議な踊りを踊り始める。


「わーい、引っ掛かったぁ」


 楊枝(ようじ)に刺さった熱々のたこ焼きを右手に持ち、ニッコリ笑みを浮かべるオレ。


「テメェ! いきなり何しやが――」

「うるさい」

「はがぁぁぁああぁーーっ!」


 続いて、大口を開けて怒鳴り出したナンパ男Bの口にそのたこ焼きを突っ込むと、やはり奇声を上げ、不思議な踊りを踊り出す。


 てか、下手なリアクション芸人よりリアクションが大きいな、コイツら。


 自分を取り囲んでいたナンパ男達の包囲網が崩れた事で、コチラに駆け寄りオレの背中へ隠れる様に張り付く北原さん。


 オレは怯える様に震える北原さんの頭を軽く撫でてから、男達を睨み付けた。


「悪いね、ニイさん達。この子はわたしの連れなんだ。これ以上不思議な踊りを踊りたくなかったら、下手なナンパは他所(よそ)でやってもらえる?」


 オレは男達に見せつける様に、たこ焼きをもう一つ楊枝で取り出した。


「テ、テメェ……ナメた事しやがっ――」

「ちょっと待てっ!」


 最初に不思議な踊りを踊った男が、涙目で食って掛かろうとしたところを、右端の男が止めに入る。コイツはCにしとくか。残りがDとEで。


 ナンパ男Cはオレの顔を怪訝そうに、見据えると――


「テメェ、まさか……南友子か……?」


 その、呟きみたいな問い掛けに、他の男達は警戒するように身構えた。


 ん? なんだ、姉さんの知り合いか?

 たくっ……こんな馬鹿っぽい奴らと知り合いとは。少しは友達を選べと、あれほど言っているのに……


「へっ! 好都合だ。いつかテメェには、借りを返さなきゃと思っていたんだよ」

「でっ? 弟の友也はどうした? 一緒じゃねぇのか?」


 え? オレ?

 ちょっと待て。品行方正なオレには、お前らみたいな馬鹿っぽい奴ら、まったく見覚えがないぞ!

 …………多分。


「人違いじゃない? わたしも友也も、アンタらみたいな頭悪そうなヤツら、見覚えがないんですけど」

「っざけんじゃネェ! 人の前歯、こんなにしやがってっ!」


 そう言って、前歯を上下六本ほど外してみせるナンパ男D。


 ますます分からん。


「そ、その人達……わたしを襲った人達です……」

「!?」


 疑問符を頭に浮かべるオレの耳に、北原さんの絞り出すような震えた声が届く。

 そして、それと同時に、怒りが一気にこみ上げて来る。


 コイツらが、あの時の――


 オレは拳を強く握り締め、男達を睨み付けた。

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