第二十局 男性恐怖症 七本場『残酷な真相』
「ね、ねぇ、北原さん……?」
「なんでしょうか?」
オレは声を絞り出すように、北原さんへ呼び掛けた。
聞くのが怖い……
しかし、それを聞く事も――そして、それがどんな理由であっても、それを受け止めるのがオレの責務だ。
そう、彼女を騙していたオレの責務……
「そ、その……わたしは大丈夫……なの?」
「何がですか?」
「い、いや……その……四年前、あなたを助けたのが……私だって、気が付いたのよね?」
「はい、先生には感謝しています」
まったく態度を変える事のない北原さん。
分からない……どうして、そんな態度が取れるんだ?
オレの正体は、君が嫌悪し拒絶するはずの男なのに……
「でも、先生が四年前の方だというのなら、先生は――」
来た……
そう、オレの正体は君の恐怖の対象。こんな格好で君を騙している、最低の男だ。
だからどんなに罵られようと、それを受け入れ――
「髪を伸ばされたのですね」
「へっ?」
出て来た言葉は、予想の遥か斜め上。正直、上過ぎて何を言っているのか、即座には理解出来なかった。
「今の綺麗な長い髪も素敵ですが、ショートヘアの先生もきっと素敵だったのでしょうね。あの時は暗くて、お顔がよく見えなかったのが、とても悔やまれます」
「…………………………」
「そうだ先生! あの頃の写真などはお持ちじゃ――て、どうかなさいましたか?」
北原さんの言葉に、ガックリと両手両膝を地につけて項垂れるオレ。
「うんん……気にしないで、急にアリの観察日記をつけたくなっただけだから……」
「はあ……?」
オレの意味不明な言葉に、可愛いく首を傾げる北原さん……
いやいやいやっ! 意味不明なのは、彼女の言葉の方だって!
てことは何?
北原さんは、女装もしてないオレを見て、それでもオレを女性だと思っていたの?
なんという残酷な真相……
いくら薄暗かったといっても、それはあんまりじゃないかな(涙)
そりゃあ、街を歩いていてナンパされたり、アキバを歩いていてメイドさんからチラシを貰うと、スタッフ募集のチラシだったりする事もよくあるけどさぁ……
ヤベッ、本当に泣けて来た。
「先生……? やはりお加減が、よろしくないのではないですか?」
「そんな事ないわよぉ~。でも、ちょっとたこ焼き買って来るから……」
オレはユラリと力なく立ち上がった。
「たこ焼き……ですか?」
「うん……無性にやけ食いしたい気分だから……北原さんは、そこで少し待っててね……」
「は、はあ……」
北原さんの戸惑うような返事を背に受けて、オレは生ける屍のような足取りで、たこ焼き屋の屋台に向かって歩き出した。




