第十一局 出たトコ勝負! 01
なんと言うグッドなタイミング! これぞ地獄に仏、アフタヌーンに女神さまだ!
まさにオレの……姉さんじゃなくて、オ・レ・の・日頃の行いっ!
これ、大切だから二回言っておく。
振り返った先、二台のバイクに跨がる二人組み。オレの大学空手部の後輩だった、国無双士と三元大ではないか!
ちなみに、細身で小柄な方が国無。筋肉質でプロレスラー並みに大柄な体格の方が三元。開花大空手部の現部長と副部長だ。
姉さんにも懐いていて、よくウチにも遊びに来ていた二人だ。
「国無っ! 三元っ! お前達なんていい所に!」
オレは声を掛けながら、二人に駆け寄って行った。
しかし、何故か二人はそんなオレを見て怪訝そうな顔をする。
「どうしたんッスか? そんな他人行儀な呼び方……いくら先生様になったからって、オレら寂しいッスよ」
「うんだうんだ」
あっ、そうか――
オレは二人を苗字で呼んでいたけど、姉さんは違ったっけ。
「悪い悪い、クニちゃんにダイちゃん。なんせお堅いガッコだから、つい――」
コイツらとは結構付き合いが長い。十分気を付けないとな。
「オレ、今だに信じられないッスよ。あの友子さんが、お嬢様ガッコのセンセになるなんて」
国無のセリフに、三元も横でウンウン頷いている。
そんなん、オレだって信じられんわ!
「それより、こんな所でどうしたんッスか? まだガッコは終わっとらんでしょ?」
そうだそうだ、こんな所で懐かしんでいる場合ではない。
「そうそう。大至急ウチにバイクを取りに戻りたいんだけど、送ってくんないかな?」
「トラブルッスか?」
「トラブルもトラブル、大トラブル! 少しぐらいのスピード違反と信号無視はわたしが許可するから!」
まぁ、オレが許可した所で、どうなるもんでもないんだけど。
「ならオレの単車使っていいッスよ。オレはダイちゃんのケツに乗って行くッスから」
そう言って、武藤はバイクから降りると、タンディムに掛かっていた予備のメットを差し出した。
「い、いいのか?」
「いいも何もないッスよ――でも、何があったか教えて貰えんッスか?」
「うんうん。オレら、友子さんの役にたちたいッス!」
お、お前たち……
オレじゃなくて、姉さんって言うのが多少引っ掛かるが……
コイツらのバイク。同じカラーリングで黒のTZR―250。オレと姉さんが共同で使っているバイクと同じタイプだ。
それくらいコイツらは姉さんに懐いている。
三元なんかは、『黒い三○星』結成だーーっ! なんて騒いでいたし。
ただ、出来れば今回の件は、他人を巻き込みたくない。でも、もしオレの当てがハズレていた場合、足で探すとなると確かに人手は欲しい……
「実はウチの生徒が拉致られた――」
少し迷ったが、捜索だけでもと思いオレは二人に事情を話し出した。
 




