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モニタリング!魔王令嬢 ※田舎育ちの魔王の娘が普通の人間として社会で学ぶ~帝都で暮らす愛娘を魔王と幹部が極秘観察してる件~  作者: えむ@毎晩10時更新中


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嫌な予感

ユーリ達は南方のサミュエル公爵領で馬車を借り、諸国を巡った。


出奔しているものの、帝国の皇女と言う肩書で歓迎はされた。


しかし、議会への働きかけには渋る者が多かった。


なにしろマインツの弾劾である。


半年かけてやっとの思いで二分の一の支持を取り付けた。


馬車は度重なる魔族の襲撃により壊れてしまった。


次の馬車は手に入らなかった。


「せっかくユーリ様が直々に訪問してるのに」


リュクロスは音速剣(ソニックブレード)の基礎動作を繰り返しながら歩く。


道中ずっと修行だと思って過ごしている。


道中命を狙われ続けているということは、いつでも最期の日になりうる。


悔いは残したくない。


特に教わった飛矢の弾き返し方はリュミシーと毎日特訓をしている。


勇者ラフラスが教えたということは、いつか必ず意味を持つだろう。


ユーリには外交の学びがあった。


「彼らにしてみれば良い迷惑でしょうね。それに帝都を出たことで各国の温度感を身をもって感じました。これは私にとって貴重な学びです」


マインツの考え方には賛同できないが、帝国の求心力が下がってきているのは確からしい。


彼は魔法塔を使い、ユーリは自らの足を使ってそれを知った。


マインツのグリーデンへの出征を聞いた時、ユーリ達はそれほど驚きはしなかった。


彼は権威と戦果が欲しい。


この戦争の無い時代に。


実はラフラスと別れたあと、すぐにグリーデン方面へ進み王と面談もした。


協力の署名を得たことで活動しやすくなったが、それが出兵の一因だとしたら心苦しい。


だが注意喚起もしておいたので、グリーデンも無策ということはないだろう。


彼の愚行を止めるためにも帝都に戻る必要がある。


リュミシーは帝都に戻るのが恐ろしい。


「ユーリ様。今回も待ち伏せがありますよね。どうして護衛の申し出を毎回断られるのですか?」


「100人でも護衛を付ければそれは軍隊です。帝都も兵を出してくるでしょう。その諸侯は帝国とことを構えた既成事実だけが残ります」


(自ら危険な目に遭おうとも、諸侯の立場をお考えだったのですね)


彼女なりの気遣いであり、禍根を残さぬためだ。


改めてリュミシーは主君に尊敬の念を抱いた。


そのころ、皇女を迎えるためにウェルター達はすでに出立していた。


『音楽の都亭』ではジュリアが一人で呑んでいる。


不機嫌さがその顔に出ている。


きっとウェルターと喧嘩でもしたのだろう。


食器を片付けついでに声を掛けてみた。


「ジュリア。あのさ……」


「うんうん。皇女の出迎えでしょ?」


「知ってたの?」


「聞いたわよ彼から。エミリーが付いて行かなくて良かった」


ジュリアは終わった話は蒸し返さない気がする。あの後、彼の方から話したのだろう。


「なんで断ったの?お金もらえるよ」


ジュリアは首を振った。


「ウェルターから詳しい話を聞いたんでしょ?」


「聞いたけど私はどうも気が乗らなくて」


「それが正解」


ジュリアは酒をあおった。


「今回ばっかりはウェルターも死ぬかもね」


エミリーは食器を取り落としそうになった。


「どうして!?」


「依頼って政治ネタが一番やばいのよ。政治って人間の代表が人間の代表の意思を駆逐するものよ。そりゃやばいでしょ」


そこまで言うのは何かジュリアにも予感があるのだろう。


「なんで私が指名されたと思う?」


「さあね?あの婆さん、エミリーを魔除けのラッキーアイテムみたいに思ってるんじゃないの?」


「まさか……」


ジュリアはエミリーの髪に光る金の髪飾りに気が付いた。


「それって」


「これ?あのおばあちゃんにもらったの。ご褒美だって」


「へえ。かなり強力な魔法具よ」


「これが?」


ジュリアはいつものボトルで手酌を始めた。


今日は一人で呑みたい気分なのだろう。


(どうしよう。ウェルターさんが危ないなら私もジュリアと付いて行くべきだったんじゃ)


「おーい!ビールおかわり!」


常連が呼ぶ声がする。


「はい!」


皮鎧を着た男たちだ。おしゃべりなマーカスも居る。


エミリーが勤務初日にオーダーミスをした相手でもある。


「ビール4つ」


「はい!あの……」


「なんだい嬢ちゃん」


「いつも!ありがとうございます!」


「な、なんだい急に」


「このビール4杯、私からおごります。あとこの金貨3枚で他の酒場でも飲んで来て欲しいんです!」


常連は少し引いている。


「え、なんか怖いな。くれるなら貰うが」


「いえ。その代わり、おしゃべりおじさん達に急ぎのお願いがあるのですが」


「俺らのことか。何気に失礼なあだ名付けられてたんだな……」


帝国軍はかなりゆっくりと進軍を続けていた。


これだけ多くの兵が動くといざこざも起こる。


一部の騎士が村で略奪を始めた。


近くで見ていた兵たちもそれに倣った。


不思議な事に住民たちは家財や食料を残して退避していた。


去年、皇女が忠告していたので、グリーデン王国側も最大の警戒をしていたのだ。


マインツは略奪により進軍が遅れても冷たい目で見るだけだった。


(戦は必ず略奪するものだ。いちいち言ってたら士気が下がるわ。それより大事なイベントがある)


今回の遠征で大量に持ち出した魔法具と魔術師達の用意した図面を囲む。


「60年前の大戦時と地形は同じなのだな?」


「丘もラフラスが修復しています。川の流れが一部違いますが問題ないでしょう。例の丘の近くには集落が点在しておりますが」


「すべて焼き払え。時間はどれほどかかる?」


「研究成果により詠唱時間は大戦時に比べてかなり短縮されるはずです」


「よし」


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