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第三話 レッツゴーサラネシア

 それから料理を食べ終え、特にすることもないし知ってる人の家を漁るのもアレという考えからガイタはじっと大人しくしていた。

 

 するとガチャリ、扉が開く音が聞こえた。

 モコが帰ってきたのだろう。


 「ガイタくん、起きてるかな……」

 すぐに扉の音と同じ方からモコの独り言が聞こえてきた。

 

 一度ガイタが最初にいた部屋のほうで扉が開く音が聞こえると、駆け足気味で彼女はこちらの方へ近づいてきて、そしてこのガイタの今いる部屋の扉が開いた。


 「……あ!! おはようございます! ようやく目が覚めたんですね!」

 彼女は椅子に座っているガイタを見て、一度大きく口を開けたと思えば笑顔でそう話しかけた。

 

 「ああ、おかげさまで。わざわざ飯まで作ってくれてありがとう。ちょうど腹ペコだったから助かった」

 「それは良かったです。そりゃあ3日も食わずに寝込んでいればお腹も———」

 「へ?」

 

 その時、モコの言葉にガイタは首を傾げた。

 「3日? お、俺、そんなに寝てたのか……?」

 「あぁ……そうですね。あの時、巨大なベーゼを大量のマナで撃破したあなたはそのままパッタリと……そして3日後の今、ようやっと目を覚ましたんです」

 

 ちなみにこの3日の間、モコはいつガイタの目が覚めてもいいよう、先ほど彼が食べた料理のようなものを毎日作っておいていた。

 彼が目覚めなかった日のそれはモコの夕食である。

 

 「そ、そうだったのか……いや、3日もホントにありがとう……」

 「いえいえ。あの時私もあなたに命を救われていますから」

 あの時、巨大ベーゼと戦闘していた彼女はもう駄目だと諦めかけていた。実際あのままガイタの横槍がなければベーゼは彼女を殺せてしまっていただろう。

 

 「そういえば、あの時といえばあなたは一体どうやってマナを使ったのですか?」

 それに、あんなに膨大な……と、モコは心の中で付け加えた。


 「アレは……マナの使い方を教えてもらっていた時、言ったろう。虹色が見えたって」

 「……はい、虹色」

 「それがなんと、青色に変化したんだ。まさに聞いていたマナの色に」

 「色が……そしたら引っ張り出せたということですか?」

 「そういうことだ」

 

 この会話でモコは思い返す。

 自身が、あのガイタがマナを引っ張り出そうと奮闘していた時に感じたエネルギーを。

 もしかしたらガイタがベーゼを倒す時に使ったあの膨大なエネルギーはそれと同じものなのかもしれない。


 「とにかく、あなたはマナを使えるようになったんですね。今使ってみることはできますか? あぁ、とはいえあのときのみたく、全てのマナを使い尽くすようなものでなく、ほんの少しだけを引っ張り出す感じで大丈夫です」

 「ほんの少しだけ……わかった。やってみる」


 するとガイタは集中して自身の体内のマナを見つけ出し、そこからほんのひとつまみだけ。遠目で見なくとも形の変化がわからないほど引っ張り出した。


 ピカリ。


 ガイタの右手に青白い光、マナがバケツ一杯分くらい現れた。


 「無事出せたみたいですね」

 「ああ。ちょっとイメージより多くなっちゃったみたいだけど。ホント、ピッて指で擦り取ったくらいのつもりだったんだが……」

 「へえ……まあいいです」

 「で、なぜこんなことを?」

 「それは、念の為あなたに身を守る術を持っておいてもらいたかったので、マナを今も扱えるか確認したかったんです」

 「はえぇ…なるほどぉ」

 

 納得するガイタの手のひらにぶわぶわと、輪郭がなく浮いている彼のマナをモコは見つめる。

 

 「ただ、その不安定な形は良くないですね」

 「不安定? まあ、確かに」

 「その状態だとコントロールも難しいですし、威力とか、そのあたりも……まあ色々不自由なんですね」

 

 「ふうん……」とモコの言葉を聞きながらガイタは形を整えようと試みる。前にモコが見せてくれたような、球体のようにしようと頑張る。だが上手くいかない。

 何かコツがいるのだろうか? とガイタは考えた。


 「どうにも上手く球体とか、そんなのにはならないんだよ。コツとか、教えてくれないか」

 「コツ、ですか……イメージ。球体ならその球体のケースの中にマナを飽和させるイメージ、って感じですかね」

 「ケースに飽和……なるほどなぁ」


 ガイタは聞いた通りやってみる。

 上手くいかない。

 なんというか、そのイメージしたケースからマナが溢れてしまう感じだった。

 ガイタはそのことをモコに伝えると、

 「溢れるならそれ以上の大きさのケースをイメージするまでです。無理に小さいケースに押し込もうとせず、ピッタリのケースを用意してあげましょう。まあ逆に大きすぎると上手く形にならないんですがね。さらに小さい方が圧縮されて、威力とか利便性とかが向上します。……そのあたりは追々です」

 「多分、大体ざっとわかった」

 「……というか! よく考えればこう言った話こそが追々ですよ! 私から持ちかけてこんなこと言うのは悪いですけど!」

 

 急にモコが声を張り上げてそう言うのでガイタは驚く。

 

 「ま、まあ確かに……」

 「最初はマナを使えるか確かめるだけのつもりだったのに……はい、追々にしましょう。これは。追々に」

 そう言ったモコは部屋の扉を開ける。


 「外、行きましょう! 前の件でボロボロになったサラネシアですが、この3日間でほとんど元通りに復興しましたよ!」

 その言葉でガイタは思い返す。

 自分の初めて見たサラネシアの景色を。あれからは倒壊して、汚らしく灰をかぶっていて、とても元の光景を想像できなかった。

 そしてあの時想像していたサラネシアの光景も。

 それとそれを照らし合わせてガイタは元の光景にワクワクする。


 「わかった! 行ってみよう!」

 「はい! レッツゴーサラネシアです!」

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