第二話 モコの住宅
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何か美味しそうな香りがガイタの鼻口をくすぐった。
すんすんと鼻を動かしながらガイタは視界に光を入れ、上半身を引き起こした。
「……?」
手をついた地面がふかふかしている。
これはベッドだろうか?
彼の故郷にあったそれと、同じような質感だ。
「……そんなことよりも、ここはどこだ? ベーゼにマナを撃ち込んで、それからの記憶がない……」
彼は辺りを見渡す。
木造の家の一室といったところだろうか?
今彼が下半身を委ねているベッドと、壁の端の方には長机と椅子。机の上にあるランタンのようなものがほんのりとした灯りを放っている。
「俺が知っている家具ばかりだ。ということはここは俺の故郷? グロケリスでなく? いや……そうだとしてここは俺の故郷のどこだという話だが……この部屋から出てみようか」
ガイタはそう決めて身体をベッドからおろし、床に立ちあがった。
部屋から出てあてもなく進むのかと言われるとそうではなく、一応まずどこに行こうかという目星はついている。
彼が目覚めるキッカケとなった美味しそうな香り。
それの方へ行ってみよう。
そう決めて部屋の扉を開け、そこから出る。
扉を開けた瞬間、香る匂いがより強くなった。
それによって匂いの在処もより鮮明にわかるようになる。
にしても美味そうな香りだ。
これを発しているのは料理なのだろうか? もしそうであればそこに人がいる可能性は高い。
万が一ここが俺の故郷であるのなら、もしかしたら俺に関連のある人だったりするだろうか。そうでなければ、ここがグロケリスなのであるならば一番可能性が高いのはモコかな。
ガイタはそんなことを考えながら薄暗い木造の道を進んでいく。
途中、一つ扉を通り過ぎたがあそこは外へ繋がる玄関のようなので後回しだ。
「扉……道は続いていないし、どうやらこの家の部屋はさっきのと、この先の部屋しかないみたいだ。いや、もしかしたらこの扉の先にさらに部屋があるかもしれないが……ま、いいや。とりあえず入ってみよう」
ガチャリ、とガイタはそれを開いて先の景色を視界に入れる。暗い。第一に彼が感じた印象はそれ。明かりはついていないらしい。そして次に、彼が気づいたことは匂い。先ほどからずうっとしていたそれであるが、この部屋の真ん中ら辺から香っている。真ん中のテーブルの上に置かれているようだ。
ガイタはとりあえずそこに向かって見ることにした。
そして近寄ると、テーブルの上の匂いの元は料理であった。白く広い皿の上に二種類の料理が盛り付けられている。さらに、皿のすぐ隣には小さな名刺程度の紙が置かれていた。それには何かが書かれているようだ。ガイタはそれを確認したいが、暗い空間ゆえ見づらいのでグイッと顔を近づけて目をしっかり開いて文字を読み始めた。
『ガイタくんへ。あなたは今、戸惑っているでしょうが、諸々のことは私が帰ったら説明します。そのためまずはこちらをお食べください。きっとお腹が空いているでしょうから。知らない料理かもしれませんし、もしかしたらお口に合わないかもしれませんけれど、毒ではないはずなのでとりあえず食べてみてください。もしも本当に体に悪かったらすぐどこかに吐き出してください。モコより』
「モコ……そっか。ここは多分、モコの家なんだな。わざわざありがたいな」
ガイタはモコの優しさに触れながら、その料理に目を移す。
よく見れば皿の前にフォークが置かれている。
「食べてみよう」
そう言ってガイタはモコの用意した料理に手をつけた。
「美味い……!! それに、まだほんのりあったかい……」
これが作られたのはきっと、結構最近なのだろう。ということは、これを作ったすぐ後にここを離れただろうモコはまだ帰ってくるまで時間がかかる。
「ゆっくり、味わって料理をいただこう」
ガイタは久しぶりに落ち着いた。




