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澪様

悲劇の運命に翻弄される駒姫様へ、神様がくれたひと時の幸せは

最初で最後の暑い夏の恋だった

□□□ 令和7年 専称寺の慎次と駒凛 □□□


石田 三成はあれだけ忠義を尽くしていた秀吉の命に背いても

駒姫様を救おうとしていた

箱根も近江も三成への忠義を貫き、秀吉から三成を守るため

汚名を被ろうとした島 左近の謀でした


ですが、慎は怒りを込めて言いました

「なら、駒姫様を狙った近江での銃撃はなんだよ

島 左近の命令でもないんだぞ」

この後、私たちは関ヶ原で悲しき事実を知ることになります


~ 慎之介/守田 忠頼からの手紙に戻る ~


武闘派武将に狙われた石田 三成様は徳川屋敷に匿われたことで無事でした

ですが、その後は居城の佐和山城で謹慎となり、

時代はまっすぐ関ヶ原へと動き始めました

わたくしも関ヶ原に向けて、お役目に励み、剣術の腕を磨きました

あのお方と刃を交えるために

石田 三成様は怨敵ではなく、武士として相まみえたい武将になっていました


そして、時代の動きが加速しました

五大老の一人、会津120万石の上杉 景勝様が領内の城郭を改修し、

軍備を強化したことが、徳川 家康様に警戒心を抱かせました

家康様の再三にわたる上洛命令に対し、景勝様は従うどころか、

家老の直江 兼続殿が、上方での家康様の動きを糾弾する書状を

送りつけてきたのです


慶長五年六月、天下を揺るがす動きがついに始まりました。

徳川 家康様は、関ヶ原の引き金となる『会津征伐』に向けて軍を進めました

この時、反石田三成で家康様に靡いた秀吉子飼いの武将たちの多くが

家康様に付き従いました


この戦前に、わたくしは侍大将のお話を頂きましたが、またもお断りし、

侍大将・野中 官兵衛殿の元で、先手大将を務めることになりました

野中 官兵衛殿。奥方は結様です。これも何かご縁でしょうか


また、わが先方隊は井伊家の証『赤備え』ではなく、

武具を黒で統一することをお許しいただいたのです

最上の方々と共に戦うために


家康様の討伐軍が会津に出立されたのち、

三成様が大坂で反徳川派を結集させ挙兵されました


石田 三成様挙兵の報を受けた家康様は、小山で軍議を開き、

そこで家康様は『会津征伐』を中止し、

軍勢を西へと反転させることを決断されたのです


三成様は、大坂に残る武将たちの妻子を人質に取り、

自らの味方に引き入れようと画策されたようですが、

このことがかえって『会津征伐』に従軍していた武将たちの結束を

強固にする結果となりました


徳川屋敷で言葉を交わした真っすぐなお人柄の石田 三成様が、

人質を取るような卑劣な真似をなさるとは、失望を禁じ得ませんでした


家康様が『会津征伐』を取り止め、西へと踵を返すと、

時を同じくし『北の関ヶ原』とも呼ばれた

『慶長出羽合戦』が幕を開けるのです


上杉勢が最上領に攻め込み、畑谷城を落とされ、

山形城の南西にある要衝、長谷堂城が包囲されました


上杉勢1万8千に対し、長谷堂城を守るのは僅かに千。

歴史に名を残す直江兼続を凌ぐ、長谷堂城を守る志村 光安様の奮戦が

この戦の勝敗を分けました

関ヶ原での家康様勝利の報が入るまで、守り切ったのです


徳川軍は西へ進撃し、反徳川方に与した織田家嫡流の織田秀信が

守る岐阜城を瞬く間に攻略

その勢いのまま、反徳川方の拠点である大垣城へと迫りました

しかし、そこに立ちはだかったのが、稀代の猛将、島左近です

巧みな挑発に乗せられた徳川軍は、

杭瀬川の前哨戦で手痛い敗北を喫することになるのです


決戦の場は大垣城で籠城戦になると思われましたが、

三成様が水攻めを恐れたのか、反徳川方の軍勢は歴史通り、

関ヶ原へと移動したのです

ですが、これこそが野戦に持ち込もうとしていた家康様の狙いでした


先鋒は福島正則隊に任され、井伊家も最前線に近い位置に布陣しました

そこは、反徳川方主力の小西行長、宇喜田秀家と正面から対峙し、

小早川秀秋1万5千に横を突かれる危険性がありました

ただ、わたくしのみが小早川秀秋が動かない事、

味方になることを知っています


両軍は夜陰に紛れて関ヶ原へと移動し、

不眠のまま戦闘に突入する過酷な戦いとなります

兵は疲れ果てているはずですが、これから始まる戦いは過去にない

大軍勢同士の乱戦になるのは必至であり、

死を覚悟した兵どもは静かに時を待っていました


降り続く冷たい雨は、関ヶ原のあらゆる音を吸い込み、

獣の息吹すら聞こえない、異様な静寂が支配していた

ただ、雨粒が大地を打つ音だけが、

明日訪れるであろう血の嵐を告げるかのように響き渡っていました


わが先方隊もまた井伊隊の前線に布陣して時を待っていたその時です

一人の武士から話し掛けられました

「あなた様は守田 忠頼殿ですか?」

「そうですが・・・」

「ご立派な井伊家ご家臣になられましたな

 某は家康様配下の伊賀者。実は、守田 忠頼殿、

 いや、佐川 慎之介殿にお引き合わせしたい者がおります

 木俣様には許可を頂いております」

「それであれば」

「慶三郎、参れ!」

すると我らと同じ黒で統一された武具をまとった男が現れました

ただ、武士にしては華奢で弱弱しく見えました

そして、聞き覚えのある名でもありました

暗闇と下を向いているため、顔が見えません


「この者をぜひ、忠頼殿の先方隊にお加えいただきたく、

 お願いに参りました。慶三郎、顔を上げよ」


「澪様!!」

当作品はフィクションです

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