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暁に星を見るもの  作者: 春夏冬秋茄子
第二章 機械人形は水上都市で微笑む
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旅は道連れ


 「――いやーという訳で私は人探しをしているのだよ。」

 崖から落ちたクロノはマッキーと話をしていた。木に逆さに吊り下げられた状態で。もちろん吊り下げられているのはクロノである。海賊とかを見せしめに吊るすあんな感じだ。



 「勝手に探せばいいだろ。それより降ろせ。」

 クロノがぷらぷらと揺れながら不貞腐れたように言う。いつの間にか魔封じの首輪を着けられており、魔法が使えない。どういう結び方をしているのか力を入れると激痛が走る為、無理矢理力技で縄を外すのは無理そうだ。頼りのぷれあです達も目を回したままクロノの隣に吊るされていた。



 「それは出来ないのだよ。私は魔力を動力にしていてね。君と出会った時にはもう魔力切れ寸前だったんだ。人の通らないあんなところに置き去りにされてもうだめかと思ったよ。そこに通りかかったのが君という訳だ。これはきっと運命だね。」

 喜びを体で表すように可愛らしい仕草でポーズをとるマッキー。やはりこのくまあざとい。



 「ああ、そうそう。勝手に魔力のラインを繋がせてもらったから悪しからずなのだよ。これで私は君無しでは生きていけない体になってしまった。君は罪作りな男だね。」

 「おい!ふざけんな!」

 クロノが怒鳴る。くまにそんなことを言われても嬉しくないし、勝手に魔力の供給ラインを設置するなど以ての外だ。


 「おやおやそんなに怒ると頭に血が上ってしまうのだよ。それと魔力のラインが形成されたからには私を連れていってもらうよ。連れて行かないと言っても勝手についていくし、その場合は毎日枕元で恨み言を言うよ。年がら年中、朝な夕な、二十四刻いつでも言うよ。」

 マッキーはビシッとサムズアップのように丸い手を突き出した。どうやらどうしてもこのくまを拾わなければならないらしい。



 「……分かった。ただしおかしなことをしたら燃やすからな。だから降ろせ。」

 「ふむふむ。嘘ではないね。……うーん。ちょっと君いい人過ぎやしないかい?そんなんじゃ悪い人に騙されちゃうのだよ?」

 どの口がそれを言うとクロノは思ったが実際クロノ自身も否定は出来ず黙っていた。

 そうしているとマッキーが【風刃(ウィンドカッター)】を使ってクロノ達を吊るしていた縄を切る。逆さまのまま地面に落ちたクロノは痛みに声を上げる。


 「……いてぇ」

 「まあいいのだよ。拾ってもらった恩もあるから私が君の代わりに気を付けてあげるのだよ。高性能な私に感謝するのだね」

 マッキーはそう言って、自慢気に胸を張る。クロノはその様子を見て溜息を吐いた。


 「それでは改めて、テディベアのマッキーなのだよ。末永くよろしく頼むのだよ」

 「……クロノだ。そっちがぷれあですのひーちゃんとみっちゃんだ。」

 マッキーの自己紹介にクロノは渋々名乗る。ぷれあです達はまだ地面で倒れているので代わりにクロノが紹介した。



 「そういえばこの縄どっから持って来たんだよ。」

 「ん?君のアイテム袋からに決まってるじゃないか。私は一応生物ではないのでね。君のアイテム袋にも入り放題という訳なのだよ。どうだすごいだろう?」

 ふふんと偉そうにしているマッキーだがクロノは気付いてしまった。


 「……これ、野営用のテント設営のための縄じゃねえか!切ったらテントが建てれねえだろうが!!」

 「……おっと、これはうっかり」

 マッキーが可愛いうっかりポーズをしてみせる。なんだこいつうざあざとい!新ジャンルか!


 「マッキーぃぃぃお前ぇぇぇ!!」

 「ははは。許してくれたまえ。クロノ。」

 追いかけるクロノと逃げるマッキー。


 「はっ!もふもふっ!もふもふですー!」

 「ちょっとひーちゃん!おとなしくするです!」

 そこに意識を取り戻したぷれあです達が加わり、奇妙な追いかけっこは日が暮れるまで続いた。

 追いかけられるマッキーの声が普段より嬉しそうだったことをクロノ達は知らない――。






 「――ますた!わたしこのくまきらいです!」

 ぷれあです三号ことさっちゃんがクロノの肩でぷれあです一号ことひーちゃんにモフられていたマッキーを指さしながら言った。

 真面目なさっちゃんからすれば適当な発言で煽ってくるマッキーが許せないのだろう。主であるクロノを困らせる存在であるというのもさっちゃんからすれば大きなマイナスポイントだ。


 「全く子供はもっと素直な方が可愛いというものなのだよ。見るといいこの子なんかもうこのモフモフに夢中さ。なんて可愛げのあることだろう。眼鏡だからかい?眼鏡だからそんなに生真面目を気取ってるのかい?」

 「もふ?もふもふですー。もはやこれをしるともとにはもどれないのですー。」

 言っている傍からマッキーがさっちゃんを煽りにかかる。ひーちゃんはマッキーのモフモフ具合に取りつかれ、骨抜き状態である。


 「むきー!めがねをばかにするななのです!めがねこそしこう!なぜこのよさがわからないのです!」

 ああ、ツッコむところはそこなのね。みっちゃんは真面目なのだが流石アルレシャの分体というべきか少し天然である。


 「ひーちゃんもそんなくまにだまされて!ばか!おおばかなのです!」

 「ふあ?きもちいいのですよー。もふもふ……ぐふふ。」

 「ほらほらこのモフモフに溺れてしまうといいのだよ」

 ぷれあです達とマッキーがじゃれあっているのを見ながらクロノは街道を進む。マッキーとの追いかけっこの際に崖から落ちてしまったために街道から大きく外れてしまった。その為クロノ達は街道へと復帰するため森の中を進んだため随分と時間を消費してしまっていた。

 クロノはその遅れを取り戻すため西の村に向かって黙々と街道を歩いているのだった。


 マッキーは自分達について商業国家アルカスまで来るらしい。人探しが目的ということで人の多いところの方が情報が集まって都合が良いらしい。そんなにしてまでマッキーが探す人物はどのような人なのかと聞いたが冗談で茶を濁されてしまった。訳ありということだろう。


 そもそもマッキーの存在自体非常識である。『ワールドクロニクル』でも自立して動く高度なAIを持ったアイテムはなかった。イベントキャラにもそんなものがいた覚えもない。

 魔物ならパペット系が思いつくのだがあれは人形に怨念が憑りついて魔物化したものであり、生物扱いだった。しかしマッキーはアイテム袋に入れることから分かるように無生物である。

 冗談で呪いの人形が時を経て意思を持ったのではないかと試しに呪われたりしていないか聞いたところ、昔は呪われていたけれども今はそんなことはないのだよ、と返され絶句したのは余談である。

 しかし呪いの人形説が濃厚というのも嫌な話だ。



 あとマッキーは追いかけっこの時に使っていたように魔法が使える。得意なのは風魔法らしくあとは土魔法を少々と他はあまり使ったことがないらしい。威力はそれなりで途中で出てきた魔物を【風刃】で倒していた。これならば戦力的には問題ないだろう。

 あとはぷれあです達との折り合いだけであるが……。


 「くまめ!わたしたちぷれあですの『いやされけいあいされきゃら』をうばうつもりですね!?ひーちゃんをてなずけたようですがひーちゃんはわがしまいでもさいじゃく!まだろくにんいるのですよ!」

 「ならばその全員私のモフモフの虜にしてやるのだよ!」

 クロノの頭を挟んでファイティングポーズを取るマッキーとみっちゃん。マッキーが立ち上がったことによりずり落ちるひーちゃん。

 うん。実はもう仲いいんじゃないだろうか。クロノは何度目かの溜息を吐く。



 「おい、そろそろ目的地だぞ」

 クロノが二人に声を掛ける。その声にマッキーとみっちゃんは前を向いた。


前方には一夜で滅ぼされた村。建物が崩れ、あちこちに焼け跡の残るその村が見えてきたのだった。





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