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貴族がゴーレムに求婚です。

 えー、僕は鎧を脱いだゴゴの膝の上に座っております。柔らかいとかそんな事は無いです。ゴーレムだしね。

 問題は。ゴゴの顔の噂を聞きつけて、屋敷に招待してきた目の前のウザイ喋り方の貴族の男だ。

 ゴゴが兜を脱いだ瞬間に態度が一変したこの貴族は、貴族の中では相当上位に位置するらしい。

 名前は確かヨーダルクとかいう美味しそうな名前の奴で、さっきから歯が浮きそうな甘いというより間抜けな言葉を並べている。


「ああ、ゴゴ様。貴女はそれ自体が完成品の原石のように美しい……つまり磨けば絶世の、傾国の美女など足元に及ばない美しさとなります!さぁ、そんな野暮な鎧など脱いで、国一番の刺繍職人に作らせたドレスで可能性を秘めたる蕾であるその身を包みましょう!そうすれば誰もが誘惑される極上の華となるのです!」

「……断ると、何度言えばいいのだ」

「鳴呼!そんな言葉遣いでは勘違いした粗暴な者どもが寄ってきて、貴女の品位が下がってしまいます!……いえ、そんな言葉遣いすら凛々しいです!鋭さと可憐さと美麗さを兼ね合わせた国の、いや世界の宝剣のように!」

「はぁ~……ヨーダルク様……なんて繊細な言の葉たちなのでしょうか……!」


 そんでもって僕たちの後ろで控えているライラが、一々ヨーダルクの言葉に悶えている。何処の部分が良いのだろうか。嫉妬する。


 取り合えず、かれこれ1時間は続いているヨーダルクの演説を纏めると。

 ゴゴは美しい。

 結婚したい。

 ライラと僕を含めて幸せにする。

 結婚したい。

 ってところだろうね。

 強引に断ればそれでこの謎の直談判(もしくは求婚?)は終了するだろうけど、暗に冒険者ギルドに圧力を掛けるとか謎の脅しをしてくる。

 ギルドの皆に迷惑を掛けるのはちょっと嫌だなぁ。

 それにいくら僕が全身全霊を込めて造ったゴゴと言えども、触られたりしたら一発で人外であるとわかってしまう。それも僕としては不本意だ。


((ゴゴ、ゴゴ))

((は、なんでしょう))

((僕はゴゴがこんな男と結婚するのは反対だ。でも相手は貴族だから、ゴゴを連れ出すことが難しい。どうすれば良いと思う?))

((……。上手い求婚の断り方を聞いているのですね?))

((え?ああ、うん。そうだね))

((案を幾つか並べると、私に価値が無いことを証明する。結婚すると不利益があることを証明する。この貴族に結婚したくないと思わせるように振る舞う……なんにせよ、彼方から求婚を取り下げるのが最も賢明でしょう))

((だよねぇ。でもこの男、僕のゴゴに参っちゃってるみたいだから、どうだろう?理詰めで通用するかなぁ))

「私は主のもの」

「まるで金剛石を切り出した指輪……え?」

「……ゴゴさん?」


 ちょ、ちょ、何で声を出してるの!

 ゴゴの顔を見ても表情に変化は無いってそりゃそうか。

 ヨーダルクは演説を止め、ヨーダルクの演説にうっとりしていたライラまでも動きを止めている。

「主のもの、ですか。それはどなたかの奴隷であると。そういう事でしょうか?」

「差異は無い。だが、奴隷の関係よりもより密接なものである事は確かだ」

「わ、私も密接ですよ!ゴゴさん!私もよくご主人様と一緒に寝てます!」

 いやだってライラ温かいし。女の子である以前にペンギンだから、一緒に寝てドキドキするとかは皆無だからね?

「ゴゴ様、その者は貴族でしょうか?もしくは、王族の者とか?」

「……差異は無い」

((むっちゃあるよ!どこらへんが……って僕は『王』か。かー!こりゃ一本取られた))

 じゃないよ!貴族にナチュラルに嘘ついたら駄目でしょうが。

「え!?ご主人様って王族とかだったんですか……?」

((違うよ!ライラは僕が魔物なの知ってるでしょ!))

「奴隷が知らないとなると……ご隠居されてる王族……分かった、ノルハ家のハームル様でしょう?」

 どや顔してるところ悪いけど、違うよ!

 ああ、誤解のスパイラルって怖い。早く解かなきゃ、存在すら知らなかったノルハ家のハームル様に迷惑を掛けてしまう……!

((ゴゴ、彼の誤解を早急に解くんだ。それで任務があるとか適当に理由を付けて帰ることにしよう))

((いえ、ここは逆に誤解を利用して有利な立場にしましょう。ご安心を。私にお任せ下さい))

((ライラが死にかけた料理を作る時もそれ言ったから却下!帰ろ?ねぇ帰ろう?))

「ヨーダルク様。結論から述べますと、私は結婚を承諾することは出来ません」

「それは、ゴゴ様が主のものだからですか?」

「その理由も有るが、単純に主が私の結婚や恋愛を認めていないということも挙げられる」

「横暴だ!女性の恋愛を認めていないなど、言語道断です」

((ゴゴ、ゴゴ、変な方向にねじ曲がってるから。それに僕別に禁止とかしてな……))

「ああ、だが私は全く構わん。何故なら私は主の事を愛しているからだ」

 愛している。うん、まぁ僕が作ったし、子どものようなものだからね。愛はあるのかな。

「私もご主人様を愛してます!ご主人様って厳しいようですけど……普段は優しいし、可愛いですからね」

「可愛い?……もしや、ハームル様ではなく、ハームル様の孫娘ですか!」

 今度はハームル様の孫娘が出てきちゃったよ。隠居したハームル様のノルハ家から離れてくれないかな?

「ふぅ。では、そろそろ失礼させてもらう。私が敬愛し畏敬する、愛し合っている可愛い大好きな主が待っているからな」

((ギルド長の時は言わなかったクセにぃ!))

「くぅ……!ゴゴ様にそこまで言わせるとは、ハームル様の孫娘……凡人ではないという事ですか」

((ゴゴ、ゴゴ。まだ解けてない誤解があるから。孫娘さんに迷惑が掛かるから!))

「………………」

 無視しないでよ!ああ、もうこうなったら最終手段だぁあぁあ!


 結局。

 僕の魔法でヨーダルクの、ゴゴに関する記憶を全て消させてもらった。最初からそうしておけばよかった。無駄に疲れた。


 宿に帰って、猫だから寝ることにした。元人間だからちゃあんとベットで。


「……ところでゴゴ。なんで寝ようとした僕のベットに潜り込んでいるんだい?」

「ライラが添い寝しているというのに、第一の配下の私がしない訳にはいかないでしょう」

「ふふ……そうですよご主人様。みんな一緒に寝ましょうね♪」


 ゴーレムは睡眠要らないよね?

 ライラは女性だし、ゴゴも女型ではあるから、これもハーレムもどきなのかなぁ?

 人形と動物に囲まれて寝るって……子どもか!

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