阿修羅、決着
東条は、完全に意識を失った蓮を背後に、阿修羅の全員を前に立っていた。
「源、俺の部下たちはどうだった?」
「ここの小僧が、ほとんどを片付けた。桂まで一撃で倒した」
「だろう? こいつを頻繁に見かけるようになっても、驚くなよ……」
東条は蓮を見た。
「あの子は、俺の理想を叶えるために手を貸してくれる」
「残念だな、東条。お前の理想はここで終わりだ。お前も、彼らも」
源は大翔を見た。
「小僧、お前もそろそろ働き始めてもらうぞ……今日、東条修吾は自分の墓を掘るんだ」
東条は学ランを脱ぎ、眼鏡を芝生に投げ捨てた。
「ふぅ……後悔するなよ」
東条と源の視線が交差した。その緊張感は凄まじく、阿修羅のメンバーさえも恐怖と動揺を感じた。
「大翔ちゃん、誰にお前をやられた?」
大翔は傷ついた顔を触り、悪魔を指さした。
「よし!」
ドッ!
悪魔はその日、三度目の意識を失った。
「全員、かかれ!」
東条は深く息を吸った。
「来い!」
赤いジャケットの渦――阿修羅の色――が形成された。次々と倒れるメンバーの中、東条は集中し、常に前方、背後、側面を警戒していた。
東条の蹴りは、雄牛の群れのような威力だった。
「くそ……捕まえろ!」
六人のメンバーが東条を捕まえ、源は地面にあったバットを拾った。
「本気でやるってわけか」
「いつだって本気だ、この野郎!」
ゴッ!
「当たった!」
東条の頭がゆっくりと下がっていく。
「本当に当たった!」
笑い声。
「誰に当たったって?」
源は驚いた。バットの一撃は、東条を後ろから拘束していた自分の部下に当たっていた。東条は拘束から抜け出し、残りの四人を倒した。
「親分! 撤退を――」
ゴッ!
そのメンバーは源によって倒された。
「ふざけるな! 俺たちは阿修羅だ! 撤退などするか!」
「それが賢明な判断じゃなかったな、源。阿修羅のリーダー……いや、元リーダー」
源が振り返る。
「これで終わりだ」
かかとでの蹴りが、彼の顔面を砕いた。
全員が倒れた。阿修羅は敗北した。
――そう、東条は思った。
「修吾くん、危ない!」と結衣。
「兄ちゃん! やめて!」
背後に気配を感じた瞬間、東条は阿修羅のメンバーに襲われた。
「死ね、この野郎!」
悪魔がナイフを手に、卑劣にも刺そうとしていた。東条はとっさに反応し、ナイフを手で受け止めた。痛みの叫びを堪えた。
東条は怒りに満ちて悪魔を睨んだ。
「ナイフか……?」
悪魔は東条が近づくにつれ、後ずさった。
「はああああああああああああああああああああ!!!!!」
全力の一撃が顔面に直撃し、悪魔は意識を失った。
一ノ瀬が東条に駆け寄り、手の傷を手当てした。
「バカ! ナイフを無理に掴んだら、指を失うところだったよ!」
「でも、失わなかっただろ?」
「兄ちゃん!!!」
大翔が泣きながら東条に抱きついた。東条は安堵の表情で弟を見た。
「大丈夫だ、大翔ちゃん……全部うまくいく……」
篠崎と五十嵐も少しずつ立ち上がっていた。彼らは東条たちを守ろうとしていた。
「五十嵐、フィン。よくやった」
「修吾、黒に礼を言えよ……」
「フィンの言う通りだ。黒がほとんどを片付けた」
「そうか。じゃあ、起きられるようになったら礼を言うよ」
遠くからサイレンの音が聞こえた。
「おっと……」
「まずいな……」
「誰か警察を呼んだのか!?」
「きっと近所の誰かよ」
「逃げるぞ! 行くぞ! 五十嵐! フィン! 黒を俺の家まで運べ! 大翔! お前も一緒だ!」
「うん!」
清流はその場を去った。蓮は篠崎と五十嵐に抱えられ、大翔が付き添った。東条は一ノ瀬を乗せてバイクで。
警察が到着した時には、彼らはもう別の場所にいた。警察は阿修羅のメンバーを逮捕した。警官の一人が、悪魔のナイフの近くの血の跡を見つめた。
◇
清流は黒と東条のマンションに着いた。蓮を慎重に運び、東条の部屋へ向かった。蓮をソファに寝かせ、残りは休憩した。
「とんでもない午後だったな」
篠崎と五十嵐は怒った顔で東条を見ていた。
「少なくとも、校長との交渉は進んだのか?」とフィン。
東条は落ち着いて答えた。
「ああ……でも、それは明日話す。とりあえず、もう帰っていい」
「忘れるところだった……東条……黒はこの近くに住んでるのか?」
「なぜそう思う?」
「だって……戦ってる時、ずっとこっちの方向を見てたから……」
「本当だ! この階に住んでるんだ!」
東条のアパートは驚きの声に包まれた。
「みんな、最後の頼みがある……」
◇
三十分後、蓮は目を覚ました。最初に見たのは、ブラックホープの三人と一ノ瀬、そして大翔の驚いた顔だった。
「ここは?」
「俺の家だ! ははは……」
「頭が痛い……というか、体中が痛い……」
蓮は壁の時計を見た。
「くそ! 今日は妹の誕生日だ!」
「えええ!? 本当か!?」
「だからあんなに集中してなかったのか」とフィン。
「ああ、理由がわかった」と五十嵐。
「なぜ先に言ってくれなかったんだ!? 知ってたらもっと誰かを送ったのに!」
蓮は突然立ち上がり、鏡を見た。
「くそ……こんな姿で家に帰れない……咲奈に殺される……」
「本当か? お前は殺しても死なないぞ、黒――」
五十嵐が篠崎の口を塞いだ。
「シーッ、文字通りに受け取るな、フィン」
東条は手を叩いた。
「結衣ちゃん!」
「はい!」
「黒くん、今から結衣ちゃんがなぜ俺たちにとって大切か分かるぞ」
「じっとしててください、黒さん」
悲鳴と文句の中で……
「よし!」
「何をしたんだ……」
「お前の傷は完全に隠れた!」
「……」
「よし、みんな、計画の第二段階だ!」
「第二段階があるのか?」とフィン。
「まあ……今考えた」
大翔と一ノ瀬が近づいた。
「今……」
「……考えた?」
◇
黒家。
「もう遅いわね……」と愛美。
「あのバカ、また問題を起こしたんだ……バカ兄……」と咲奈。
「泣かないで、娘よ……兄ちゃんはもうすぐ帰ってくる」と篤。
「ワン!」
トントントン……
「きっと彼だ! 開けるよ」
篤がドアを開けた。
「こんにちは!」
黒家は静まり返った。
「……」
愛美は東条を認識した。
「あなたは……ご近所さんですよね?」
「黒さん、はい! 正式にご挨拶してませんでしたが、東条修吾と申します。ご近所で、手芸部の部長もしています」
篠崎と五十嵐が、蓮を支えながら入ってきた。
(手芸部? この三人が?)と咲奈は思った。
「あら! でもどうしたの?」
「それが……ええと……」
大翔が入ってきて説明した。
「放課後、蓮さんたちが公園で僕と遊んでくれたんです! でも、兄ちゃんが僕を強く押したから、僕が蓮さんを蹴っちゃって……」
蓮の両親は一瞬、戸惑った。
(本当にそんな言い訳を信じるのか? うちの家族はそこまでバカじゃ……)と蓮は思った。
「ああ! なるほど! それなら事故だね!」
「わざわざ家まで送ってくださって……ありがとうございます!」
「ワン!」
蓮、篠崎、五十嵐、一ノ瀬の顔に、悪い意味での驚きの表情が現れた。
(本当に……信じた?)
東条は挨拶をして、全員帰っていった。蓮はゆっくりと立ち上がった。
「咲奈……誕生日おめ――」
咲奈は遮り、蓮に近づいた。
「私、そんなにバカじゃないよ、バカ兄……」
「咲奈……」
「でもいいよ、間に合ったから」
蓮は安堵のため息をついた。黒家の誕生日会が始まった。食卓に座り、ケーキを食べていた。蓮は痛みの中で汗をかき始めた。
「蓮、今日の授業はどうだった?」と篤。
「ああ……まあまあかな……」
「たくさん友達ができたといいね!」と愛美。
「ああ、まあ……」
蓮は顔をこすり、化粧が溶け始めた。全員が蓮の殴られた顔を見た。
「事故ね、そうでしょうね……」と咲奈。
「説明できる……」
■ 後書き
PAINT IT BLACK 第一部「ブラック・ロータス編」、これにて完結です!
ここまで読んでくれてありがとうございました!
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これからも物語は続いていきます。ぜひお付き合いください!
—ネズオ・アキトシ




