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詩帖拾遺  作者: 坂本梧朗
2000年代

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132/296

その29 効率電車

疲れて駅に着くと

列車はホームに入っていて

発車まで十分

ゆったりと座席に座った


一日の労苦を

自ら労う思いで

その日は珍しく

缶ビールも手にしていた


しだいに席が埋まってくる

発車まで七分

今すぐ動き出せばいいのに


席が埋まるにつれて

座る間隔は

余分のないものに

きっちり訂正されていく


肩掛け鞄を

座席に置いていた

膝の上に置きなおすのが

もはや億劫だった


しかし知っていたのだ

発車までには満席になることを

いつものことだ

早く発車しろと

苛立つ思いでいると

「ここ空いてますか」

と鞄に目をやりながら

声をかけてくるのだ


出勤の電車も

たった二両

押し合い圧し合いの満員だ


詰め込まないと

効率が悪いのだ

鉄道会社にとっては

空席のある電車など

走らせる意味のないものだ


俺たちは

「効率」の上に乗っている


いつまで乗り続けなければならないのか

と俺はいつも考える

定年まで、という結論にやはりなる

できるならその前に下りて

自分だけのレールの上を

走り始めたいのだが


頼みの年金は

給付が五年も先送りされ

給付水準も下げられてしまった

七十を過ぎると

給付額は現役時の所得の

半分以下になるという


年金などは

枯れ木に水をやるようなもので

最も効率の悪い支出というわけだ

利を産めなくなったサラリーマンは

速やかに地上から消えるべしか


ふざけるな


 



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