[おまけ]皇帝のわたくしごと。
魔術師たちが住まう、ライシン帝国。
その国土の中で最大の深き森――『七宝の森』と呼ばれるその奥地に、この帝国の皇帝は佇んでいた。
可憐な花の咲くその野原は、国家の最重要機密が眠る地である。『異界の門』と呼ばれる異世界へ続く入り口がある特別な場所だ。
ここでたった今、ライシン帝国皇帝キリュウは最愛の娘を見送ったのである。
ただし、再会を約束して。
だからこそ、彼の表情は穏やかであった。そっと優しく微笑むキリュウに、彼の側近である三宰相の一人、イナミがたっぷりとした口髭の下からぼそりと言った。
「……戻って来るでしょうか?」
三年後に戻ると約束した。
けれど、故郷に戻り、家族と再会した後となっては決心が鈍るかも知れない。家族思いの娘であることはひしひしと伝わっていた。だから、その不安はキリュウとしても拭えない。
それでも、そのことを覚られないように毅然として答える。
「戻って来る。そう約束した」
他の二人の宰相、ヤナギとクルスはそんなキリュウをあたたかく見守っていた。
その場に居合わせた民間人のノギ、ハトリ、そしてユラは笑顔を浮かべてキリュウを見ていた。キリュウは少し気まずくなって顔をそらす。
「三年などあっという間だ。だから私はそれまでに色々とせねばならないことがある。私がフウカのためにしてやれることを探さねば」
すると、ヤナギが言った。
「こちらに来た後もなるべく家族と会えるように計らうというのはいかがでしょう?」
確かに、今生の別れになってしまっては後味が悪い。たまには里帰りもさせてやりたい。
「そうだな」
と、キリュウもうなずく。
そこでユラが美しい仕草で小首をかしげた。初恋を引きずっているつもりはないけれど、キリュウは少しだけ複雑だった。
「確か、フゥちゃんの世界には『コセキ』ってものがあるのよ」
「コセキ?」
「ええ。その人の存在を確認するための記録よ。急に現れたり消えたりするとその『コセキ』上が厄介なんだって聞いたことがあるわ」
「なるほど、一般人にもそうしたものが……」
キリュウがそうつぶやいて考え込んだのは、自らの治世にそうしたものを組み込むとどうかという思いもあってのことであった。魔力を持たない人々に関してまではそうしたところが曖昧である。今後、魔力を持たない皇妃を迎えるのなら、そうした人々を蔑ろにする国であってはいけないとも思う。魔力を持たぬ人々は、フウカを支持してくれるのではないだろうか。
ノギは少し冷ややかな声で言った。
「後もうひとつ考えなきゃいけないことがあるだろ?」
不思議そうにそちらに顔を向けたキリュウに、ノギは容赦なく告げる。
「フゥの両親になんて挨拶すんだよ? 下手したら認めてくれない――いや、このままなら認めてくれない可能性の方が高いだろ。親が反対した時、お前は無理矢理引き離すのか?」
ぐ、とキリュウは返答に困った。そうして、ちらりとユラに目を向けると、ユラは笑って言った。
「そこは娘を持つ親に相談したらいいんじゃないかしら? 私にはちょっとわからないわね」
この場にいる既婚者はイナミだけであった。けれど、残念なことに――。
「わ、私には息子が二人おるだけです。お役に立てずに申し訳ございませんが」
「皇太后様にもわからないですしねぇ」
とクルスもぼやいた。なんとなくキリュウはハトリを見遣ったけれど、ハトリの両親はいないので訊ねようもない。けれど、ハトリには心当たりがあったようだ。
「あ、娘のいる夫婦、もしかするといるかも知れません。でも、もうちょっと後にならないと会えないので、その時が来たらお知らせしますね」
「それは助かるが……」
すると、ヤナギが皆の意見をまとめるようにして言った。
「では、まず問題のひとつ目、彼女がこちらに来た後も家族に会えるように取り計らうこと。これはキリュウ様次第で解決できると思います。そしてふたつ目、『コセキ』の問題。これは少々厄介です。異世界に魔術を作用させるためにはそれなりの触媒を使ってアイテムを製作せねばなりません。最後の問題は後回しにしてまずはこのアイテムの作成に取りかかりましょう」
「『コセキ』を抹消すると向こうでは死んだことになっちゃうからね。そこは慎重にしなきゃ」
ユラが言うようにフウカが死んだことになってしまうのは例え嘘でも嫌なことだった。
「そうだな、ありがとう」
「強力な触媒がいるって、採って来なきゃいけないのか?」
ノギが僅かに顔をしかめたが、キリュウは穏やかに笑った。
「いや、ひとつ取っておきがある。あれを使おう――」
久し振りにユラと再会したノギとハトリにはつもる話もあるのだろう。彼らと別れ、キリュウは城に戻った。そうして、キリュウは三宰相を自室へと招く。そのベッドサイドにある神秘の花を収めたケースにそっと手を添えた。
「これは……『水晶蓮』。今は入手することの叶わない幻の触媒です。確かにこれほどの品があれば異世界でも通用するかと」
この水晶蓮は混ざり気のない純然たる神秘の力を増幅する。皇帝であるキリュウさえ気安く使用することができず、いつかのためにと大切に保管して来たものだ。水晶蓮を眺めながらキリュウはつぶやく。
「イメージとしては、フウカがこちらにいる時は家族以外の異世界人にフウカの存在を忘れさせたい。フウカが時折あちらに戻る時だけフウカに関する記憶が戻るように細工しようと思う」
「なかなかに複雑な……。骨が折れそうですが、未来の皇妃様のために奔走いたしましょう。とりあえず僕は学院の教授に相談して来ますよ」
クルスの言葉に、キリュウは微笑んだ。
「ああ、三年の猶予がある。それに間に合えばいい。手数をかけるが頼む」
「陛下の御為であれば家臣一同尽力致しますのは当然です」
と、クルスもまた嬉しそうに答えた。
それからはキリュウも普段通りの激務に追われる日々であった。心身共に疲れて部屋に戻っても、そこにフウカの姿はない。それでも、時々は夢の中に現れる。ただ、そうした時ほどにあの笑顔と歌声が恋しくて、寝覚めがよいとは言えないけれど、また会えるという希望だけを胸に抱いた。
あれから、教団の教主サイキは服役中。彼については改心の見込みはないと宰相たちの意見は一致していた。それに加担したクレハとユズキにキリュウが下した決断は、クレハのローシェンナ領主の任を解き、五年の歳月二人の魔力を封じるという刑であった。キリュウの施した術の他に、監視付きで一切の触媒に触れさせない。特級の魔術師である彼らにとっては、手足をもがれるほどに不自由なことである。
それでもクレハは静かにその刑を受け入れている。自分の行いを本気で悔い、償おうとしているのだろう、と彼らを任せたテラコッタ領主の母が言った。自分と相性の悪い人間の全てが悪だと思うわけではない。クレハの根はあれでも善良な方なのだ。
ユズキに関してはまだ完全に反省し切ってもいない様子だという。彼女は、望むものが手に入らないと癇癪を起こす子供のままだ。そうしたところがとても妃にとは考えられなかった。そこはあの母が時間をかけて導いてくれると託したのだが、早くそういう自分に気付けたらいい。
いつか、反省して幸せになってほしいと思うから。
そうして、フウカが異界の門を潜った甕覗の月から更に四ヶ月を越えた伽羅の月、ハトリから連絡が入った。例の、娘を持つ親の心当たりだ。
家臣の中に娘を持つ親など多くいる。けれど、皇帝であるキリュウが何かを訊ねても萎縮して正直に答えることなどできない。ハトリはそれを考慮した上で先方を選んだのだと思われる。
公務の隙をついてヤナギを伴い、指定された家へと向かう。そこは北方の町ウィスタリアであった。
小さく可愛らしいその佇まいの家を見上げる。あまり人目に付くのもよろしくはないが、ノギの家のように中に直接飛ぶのも憚られた。ヤナギがその小さな覗き窓の付いた扉を叩く。
「すまない、ハトリから連絡をもらってキリュウ様をお連れした」
「ああ、ちょっと待って下さい」
聞き覚えのある若い男の声。キリュウはその声を聞いた途端、四ヶ月も待たされた意味を理解した。どこか軽薄さのあった顔が一段と締まり、不思議な落ち着きを持ってキリュウを迎え入れたのは、触媒屋のイルマであった。
「あばら家で申し訳ありませんが、どうぞお入り下さい」
キリュウはクスリと笑った。
「そうか、娘が産まれたのか。おめでとう」
イルマも照れたように笑う。
「ありがとうございます、陛下」
そうして中へ案内されると、部屋の中はきれいに片付いていた。カーテンやソファーのカバーが新婚家庭らしい可愛らしさであるのはイルマの妻の好みだろうか。まだ使えもしないような玩具の数々が部屋の隅にあったのは、皆からの祝福の品かも知れない。
階段を上がり、二階の部屋の扉をイルマが開くと、そこには揺りかごに乗った赤ん坊と隣に置いた椅子に座る母親の姿があった。
立ち上がって礼をとる彼女に、キリュウはそっと言った。
「産後の体だ、無理せずともよい。大事にな」
「ありがとうございます」
イルマの妻、タミヤはぼそりと消え入りそうなか細い声で返した。以前はイルマの仕事上のパートナーとして触媒を入手する補佐をしていた魔術師であるが、今ではそんな様子は見受けられない。
一度だけ顔を合わせたことのある相手だが、その時に声を聞いたことなどなかった。本当に大人しい、影の薄い女性だ。薄紫色の柔らかな長い髪と白い肌、華奢で小柄なことからも窺えるように、イルマにとっては危険な仕事に同伴するよりも安全な家に置いておきたい存在なのかも知れない。
キリュウはそっと揺りかごの中を覗いた。
そこには、やや赤みがあるけれど整った顔立ちをした赤ん坊が眠っている。小さな手を顔の両側に広げ、すやすやと安らいだ面持ちだった。うっすらとした髪と眉が生後間もないことを窺わせる。女児である赤ん坊に相応しいピンクの肌着にリボンが可愛らしかった。
思わず微笑を浮かべ、キリュウはイルマに問う。
「名はなんと言う?」
「ニーナ、です」
キリュウはそうか、とつぶやいて再び赤ん坊のニーナに視線を落とす。すると、イルマはにこにこと笑顔で言うのだった。
「陛下、うちの娘を抱いてやって頂けませんか?」
そのひと言に、キリュウは一瞬動揺してしまった。
「や、だが、私は生憎赤ん坊を抱いたことがないのでな、扱いがわからぬ……」
あんなにも小さくて弱々しい存在を傷付けずに腕に収められる自信などない。ちらりとヤナギに助けを求めると、ヤナギも困惑していた。
「申し訳ございませんが、私も苦手分野ですと申し上げるしか……」
イルマは苦笑しつつ、自分の子供であるせいかまだ父親になって間もないというのにぎこちなさを感じさせない手付きで眠る娘を抱き上げた。タミヤは自分が座っていた椅子をキリュウに勧める。
「立っているより座った方が抱きやすいですよ。で、首が据わってませんから、頭を支えるようにして腕に乗せてやって下さい。……そう、そんな具合で」
と、戸惑うキリュウの腕にニーナを預ける。赤ん坊特有の甘い優しい匂いがした。汗ばむほどのあたたかい体温と鼓動が腕から伝わる。こんなに小さくとも、精一杯に脈打つ命だ。
この子もまた、キリュウの新たな民であると思うとひと際感慨深く愛おしかった。
けれど、ぎこちない腕の緊張が伝わったのか、ニーナは唐突に大きな瞳を開くと顔を真っ赤に染め上げて泣き出した。耳を劈くあまりの大音響にキリュウはうろたえたけれど、横から伸びたタミヤの腕にニーナを受け渡した瞬間に、先ほどの剣幕が嘘のようにニーナは大人しくなったのである。
我が子を抱くタミヤの姿は、間違いなく母親で、どこか神聖に思われた。キリュウは自らの母に思いを馳せ、こうして守ってくれたことを忘れて親不孝な息子だと自嘲した。自らが皇帝であるためにと距離を置くことを決めたのは、自己満足に過ぎなかったのかも知れない。今、ふとそう感じられた。
ニーナをあやすタミヤを眩しく見守りながら、キリュウはぽつりと問う。
「……ニーナのことを生涯の伴侶としてもらい受けたいという男が現れた時、どうした相手ならば納得できるだろうか? そうした時、どのように言われたい?」
これを問うためにやって来た。キリュウはドキドキと返答を待つ。
イルマとタミヤは顔を見合わせた。そして、タミヤは先ほどまでのようなか細い声ではなく、はっきりとした声で堂々と言った。
「どんな相手でも気に入らないです」
あまりにはっきりと言うので、イルマもヤナギも困惑した。キリュウも呆然とするしかない。
つまり、娘を掻っ攫って行く男は敵であると。なんと言われようともそれは変わらないと。
だとするなら、自分はどうするべきなのか、キリュウは思考が停止している自分を感じた。
そんなキリュウに、それでもタミヤは小さくささやく。
「……気に入らないですけど、でも、この子が隣で幸せそうに笑っている姿を見たら、もうそれだけで何も言えなくなる気がします」
望むのは、子の幸せ。離れて行く寂しさは飲み込んで、それを願う。
親とはそうしたものであるのだろうか。
フウカもまた、ニーナと同じように大切にされて育ったのだ。この想いを受けて。
それだけの大切な娘を望むのだ。なんと言われようと誠意を見せるしかない。他人に答えを求めても解決できない。それは自分が足掻いて示すべきもの。
そのことがわかっただけでもここへ来た意味はあったと思えた。キリュウはそっと微笑む。
「そうか、ありがとう。とても参考になった。ニーナの人生が幸多きものであるように私からの祝福だ」
ニーナの額に触れ、そっとまぶたを閉じる。この子は幸せになる。キリュウはあたたかな気持ちで、予感ではなく確信めいたものを感じた。
それから一年が過ぎた。
ユラは最近、数ヶ月に一度はこちらにやって来ている。それが可能になったのは喜ばしいことだ。
彼女の体質とこの世界は相性があまりよくない。けれど、ユラは自らの世界で対策を練って対応しているらしく、キリュウに何かを求めることはなかった。対価を払うのが厄介だと思ったのかも知れない。
そのうち、ノギとハトリは結婚したらしいことを聞いた。きっと、ユラに再会した後でと思っていたのだろう。一緒に住んでいたのだから今更だが、事後報告なのはノギの性格からいって不思議でもなんでもなかった。肉親との縁のないハトリが家族を持てたのだ、そこは祝福してやりたいと思う。例え相手がアレであっても。
そうして、もう一年が過ぎた。
あの時の赤ん坊のニーナが走り回って、無口な母親の数十倍の口数ではしゃいでいる。愛らしく成長した姿をたまに見せに来てくれることが素直に嬉しかった。
例の水晶蓮を使った異世界で通用するアイテムは、術式がなかなかに複雑で開発が難航しているという。けれどまだ時間はある、焦らず励んでほしいと研究者に声をかけた。
更に時は過ぎ、フウカが去った甕覗の月が三度訪れた。けれど、それをひと月過ぎてもフウカから音沙汰はない。
相変わらず異界の門を利用するのはユラだけ。フウカの世界とは繋がらない。
例のアイテムもまだ仕上がらなかった。気持ちは焦り、不安は募る。
やはり、添い遂げることはできないということだろうか。そう、弱気にならずにはいられなかった。
けれど、ようやく気付いた。
フウカが戻ったあの時、時間軸をいじったのだ。こちらの三年とフウカの三年とでは半年ほどのズレが生じている。
気付いてしまえばフウカがまだ訪れないことも説明が付いた。フウカの気が変わったわけでなはい。
そう、まだ希望を持てた。
けれど、早く会いたい。あの声を忘れてしまう前に、早く。
後、半年。
三年待ったのだ。たった半年――されど半年。すぐと思うには長いけれど、それでも待つことしかできないのだ。
もう、今の自分は聞き分けのよい昔とは違う。孤独を受け入れ、それは皇帝である以上は仕方がないのだと諦めることを止めた。
再会を約束し、希望を持たせた以上、フウカにはその責任をきっちりと負ってもらわなければならない。
そうして、その三ヵ月後。
例のアイテムの完成の目処が付いたと研究者から連絡があった。
箱型で、その蓋を開いている時だけ、フウカの家族以外にもフウカの存在を思い出させる。けれど、閉じている時は思い出すことも口に出すこともできぬような仕組みにするということだ。複雑な術式の上、ひとつの水晶蓮で一生涯は不可能だろう。またいずれ、ノギたちに頼んで入手してもらう必要があるかも知れない。
それでも、どうやら間に合いそうだとキリュウも安堵した。
そして――。
キリュウがあたりを付けた時期よりは少しだけ早い、そんな時、フウカの声が聞こえた気がした。公務の最中、キリュウはハッと顔を上げた。
「キリュウ様?」
三宰相はキリュウの異変に敏感に反応する。
「……今、フウカの声が聞こえた気がした」
気のせいだと笑う者はいなかった。皆、真剣に顔を見合わせている。
「でしたら、確かめに参りましょう!」
張り切るイナミに、クルスも続いた。
「そうです。今日の公務は逃げませんが、フゥ君は急いで迎えに行かなければ引き返すかも知れませんよ?」
ヤナギも柔らかく微笑んだ。
「さあ、急ぎましょう」
再会は果たされた。
異界の門からフウカの確かな声がした。その声に応じ、キリュウはフウカのそばにある気配をまとめて呼び寄せる。それがフウカの家族だと確信したのだ。
そうして、七宝の森の奥地の花咲く中をフウカはこちらに向けて駆けて来た。その彼女を抱き止める。
会いたくて、恋しくて、想うことしかできなかった彼女が再び腕の中にいる。
不思議な衣装で美しく着飾り、化粧を施したフウカは以前よりも大人びて輝くようにきれいだった。彼女に相応しい相手にならなければと今更ながらに思うほど、魅力的に感じられる。
フウカは笑っていた。
その笑顔は、いつかタミヤが言ったように、そばにいた家族への説得力となっただろうか。渋々ながらも認めてくれたフウカの家族に、感謝の気持ちを忘れてはならない。
異界の門が閉じた後、この世界にいるフウカに告げる。
「なあフウカ」
「うん?」
「実は、感動的な別れを繰り広げた後で申し訳ないのだが、お前の世界の『コセキ』とかいうものに対応できる道具を製作中なのだ。後少しで完成するから、できたら届けに行ってくれ」
「うわ、首尾わるっ」
そうからかって来るフウカに、キリュウはバツが悪いといった風につぶやく。
「何事もそう順調には行かぬ」
すると、フウカはクスクスと笑った。
「うそうそ。色々がんばってくれたんだよね。ありがと」
そうしてフウカは三宰相の目など気にならないかのようにキリュウの腕に寄り添った。キリュウはそんなフウカに柔らかな目を向けて微笑んだ。
「……話したいことがたくさんある。何から話そうか」
「あたしもいっぱいあるけど、まずは歌ってあげる。キリュウのためだけにね――」
【 皇帝のわたくしごと。 ―おわり― 】
以上で終了となります。
長らくこの物語にお付き合い頂き、ありがとうございました!
この出会いに、心からの感謝を☆




