↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/189

第4話 ヴィーナス・ラウンジ

 祐希が案内されたのは1階の「0号室」だった。


「祐希くん、ここよ」


 部屋は白を基調とした壁に、天然木のアクセントが効いた、落ち着いた内装だった。


「ずいぶん広いですね……何畳くらいあるんですか?」


「この部屋は12.5畳よ。

 天井も高く設計してあるから、数字以上に広く感じるでしょ?」


 祐希が広く感じたのも無理はなかった。

 明日奈の話では、他の部屋も全て12畳以上あるそうだ。


 室内を見渡した祐希は、その充実ぶりに目を疑った。


「これ、本当に学生が住む部屋なんですか……?」


 部屋には、ダブルベッド、L字型デスク、3人掛けソファ、50インチ4Kテレビ、高性能パソコン、ミニ冷蔵庫など、まるでホテルのスイートのような豪華な設備が揃っていた。

 大型クローゼットの隣には、部屋専用のトイレまであった。


「明日奈さん、この部屋、豪華過ぎません?」


「いいのいいの、私の趣味なんだから」


 明日奈は楽しそうに笑うと、祐希を部屋からラウンジへと誘った。


「でもね、祐希くん。驚くのはまだ早いわよ。

 一番こだわった共用スペースも案内するね」


「ここがみんなが集まる『ヴィーナス・ラウンジ』。

 自慢はこの100インチのスクリーンよ。

 音響にもこだわってるから、ここで観る映画はすごいの」


「ええっ、100インチですか……もう映画館じゃないですか」


「でしょ? キッチンも充実してるし、天気のいい日はあそこのウッドデッキでランチするのも最高よ。

 お風呂は3人用のジャグジーもあるんだから。今度使ってみて」


 あまりの規格外な設備に、祐希はもはや驚かなくなっていた。


「女子が安心して暮らせるように、セキュリティも万全なの。

 玄関はオートロックと顔認証の二重認証だし……防犯カメラも複数台ついてるからね」


「なるほど……それは安心ですね」


 祐希が圧倒されていると、明日奈がその他の主要設備についても説明してくれた。


「他にも、1人用バスルームが2箇所、トイレが3箇所、洗面が5箇所もあるのよ。

 全自動洗濯乾燥機のランドリーもあるし、防音装置付きのピアノ練習室まで完備してるの。

 ラウンジにはバーカウンターもあって、対面キッチンには食洗機もついてるわよ」


「すごい……」


「屋外には、駐輪場が8台分と、カーポート付きの駐車場が3台分あるから、月額500円と1万円で借りられるわ。

 あと、宅配ボックスや住人専用のレターボックスもあるからね」


 説明を聞けば聞くほど、このシェアハウスに掛ける明日奈の意気込みが感じられた。

 同時に、祐希の胸には大きな不安が沸き上がっていた。

 これだけの設備が揃っているということは、家賃も高いに違いない。


「あの、明日奈さん……。

 ここの家賃って、高いんじゃないですか?」

 祐希が恐る恐る尋ねると、明日奈は笑って答えた。


「家賃は毎月5万円で共益費が1万円、それに管理費が1万円の合計7万円よ。

 それと初回だけ、入居手数料が5万円掛かるの……」


「この豪華設備で7万円は安すぎますよ!」

 祐希があまりの安さに驚いた。


「でも、祐希くんは身内だし、特別に入居手数料は無料で……

 家賃・共益費・管理費も全部込みで5万円でいいわ」


「えっ、そ、そんな!

 いくらなんでも悪いですよ!」


「実のところ私、お金に困ってないの……

 あなたのお兄さんが遺してくれた遺産もあるし、家賃収入もあるから……

 それよりも気心の知れた人たちと、わいわい楽しく暮らしたいの……」


「なるほど……そういうことですか…

 でも、5万円はさすがに安すぎますよ」


「いいのいいの……

 祐希くんは私の可愛い義弟なんだから……」


 悪戯っぽく微笑む明日奈に、祐希は困惑した。


「ホントに……いいんですか?」


「うんうん。こういう時は、素直にお義姉さんに甘えなさい」


「……わかりました。

 それじゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」


 祐希は明日奈に頭を下げた。


「うん、それじゃあ、最後に大事な契約条件とルールの説明をするね。

 まず、うちの入居条件だけど、入居できるのは18歳から25歳までの人だけなの。

 だから、26歳になる前に退去してもらうことになってるから」


「えっ、年齢制限があるんですか」


「そうなの、それと、入居するには、先に私と面接をしてもらって、合格した子だけが入れるのよ」


「へ~、面接まであるんですか…… ちなみに、合格基準は?」


「ふふっ、それは企業秘密。

 祐希くんは私の義弟だから、もちろん面接なしでOKよ」


 明日奈は茶目っ気たっぷりに笑った。


「それと契約更新は1年ごと。

 もし退去する時は、1ヶ月前までに言ってくれれば大丈夫。

 そして、これが一番大事なルールなんだけど……」


 明日奈は少し真剣な表情になった。


「2ヶ月に1度、住人参加のイベントを開いてるの。

 これだけは参加必須だから、お願いね。

 もし2回連続で欠席しちゃうと、次の年の契約更新できなくなっちゃうから」


「イベントが必須なんですか? 珍しいルールですね」


「そうなの……せっかく一つ屋根の下で暮らすんだから、みんなに家族みたいに仲良くなってほしくて。

 私がこのシェアハウスで一番大事にしてることなのよ」


 その真摯な眼差しに、祐希は明日奈の強い想いを感じた。


「ルールはこれくらいかな。ちょっと厳しいかもしれないけどね。

 その代わり、周りの環境はすごく便利よ」


 明日奈は窓の外を指さしながら、明るい声で言った。


「コンビニは、徒歩3分くらいのところにあるわ。


 たいていの物はそこで揃うから便利よ。

 徒歩5分の距離に大きな食品スーパーがあるわ。

 品揃えも豊富で、お野菜も新鮮って評判よ」


「へ~?それは便利ですね」


「でしょ? 最寄りの柏琳台駅までは、徒歩8分だから、通学も楽だと思うわ」


「本当にいい環境なんですね」


「そうね……あ、一つ言い忘れてたことがあるわ。

 祐希くんだけの特別ルール」


「特別ルールですか?」


「そう、それは2階フロアへの立入は禁止ってこと……

 2階の住人は全員女性でしょ。

 祐希くんは良識ある男性だと私は信用してるけど、何か間違いが起こるとも限らないからね」


 女子ばかりのシェアハウスに男が1人だけ住むのだから、管理人である明日奈の考えはもっともだ。


「分かりました。2階には絶対上がりません」


「ありがとう、説明は、以上よ。祐希くん、他に何か質問ある?」


「いえ、明日奈さんが詳しく説明してくれたので特にありません」


「そう、良かったわ。それじゃ、鍵を渡すわね」


 明日奈はICカードキーを1枚祐希に手渡した。


「うちはICカードキーと顔認証でロック解除する仕組みなの。

 だから、これ絶対になくさないでね」


 明日奈の説明によると、シェアハウスの玄関と門扉はセキュリティゲートになっており、ICカードと顔認証の両方が揃わないと開かないそうだ。


「2重認証か、なるほど、それは安心ですね」 


 祐希は顔認証の登録を完了し、カードキーとセットで玄関がロック解除されることを確認した。


「これで住人登録完了ね」


「はい、ありがとうございます」


 明日奈から寝具カバーを借りることとなり、祐希はその日からシェアハウス「ヴィーナス・ラウンジ」で暮らし始めた。


 (ふ~、火事の後、こんなに早く部屋が決まるとはな…、明日奈さんに感謝しなきゃ)


 (それにしても、あの美少女、さくらっていう名前なんだ。イメージにぴったりの名前だな。

 しかし同じシェアハウスの住人だったとは……)


 祐希はこの出会いに運命的なものを感じた。

※創作活動の励みになりますので、作品が気に入ったら「ブックマーク」と「☆」をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。