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第2話 再会

 次の日、3限目を終えた祐希は、大学の最寄り駅『星ヶ丘』にいた。

 これから明日奈のシェアハウスを内見しに行くのだ。


 祐希は、明日奈の説明を思い出した。

 部屋はワンルーム、バス・トイレ・キッチン・リビングは共用。

 ベッドやテーブル、椅子などの家具は部屋の備え付け。

 生活用品や衣類、食料を買えば今日からでも生活できる。


 シェアハウスから駅までは徒歩8分、コンビニまで徒歩3分、食品スーパーまで徒歩5分と、立地は悪くない。

 それにアパートより家賃は安いし、敷金や契約金は不要なので、出費は抑えられそうだ。


 そんなことを考えながら電車を待っていると、同じホームの先に白いワンピースの少女を見つけた。

 1ヶ月前に一目惚れした、あの美少女だ。

 祐希は思いがけぬ再会に、つい頬が緩んだ。


(……嘘だろ、本物か?)

 祐希は我が目を疑った。 もう二度と会えないと諦めかけていた「天使」が、同じホームの少し先に立っている。

 腰まで届きそうなサラサラの黒髪、愛くるしい大きな瞳、整った鼻筋、上品な口元、透き通るような白い肌、均整の取れたモデルのような体型、何から何まで美しいの一言であった。


 (うちの学生か?……それとも聖女の学生か?)

 ちなみに星ヶ丘駅近くには、祐希が通う星城大学の他に聖晶学園女子大学(通称:聖女)がある。


 祐希の視線に気づいたのか、少女がこちらを向いた。

 一瞬、小さく目を見開いた彼女の表情は、すぐに怪訝なものへと変わった。

 それは、まるで不審者を見るような目つきだ。


 (まずい、見すぎた……)

 祐希は慌てて視線を逸らした。

 まもなく電車が到着し、少女は祐希とは別の車両に乗った。


 平日の午後3時過ぎ、車内は比較的空いており、祐希は空いている席に座った。

 シェアハウスがあるのは祐希が住んでいた街とは反対方向だ。

 見慣れない景色を車窓から眺めていると、15分程で目的地の柏琳台(はくりんだい)駅に着いた。


 祐希がホームに降りると、1両先の車両から白いワンピースの少女が降り、改札口へと向かっていた。


 (えっ、同じ駅だったんだ……)


 祐希は改札を通る少女を見ながら、彼女がどこに住んでいるのか確かめたいという衝動に駆られた。


 でも、今はそんな暇はない。

 明日奈との約束があるからだ。


 駅舎を出て行く少女を目で追いながら「今は住居の確保が先だろ」と自分に言い聞かせた。

 祐希はスマホを取り出し、地図アプリを開くとシェアハウスへのルートを確認した。


 画面には道順が表示され、徒歩8分と出ていた。

 視線を上げ、祐希が歩き始めると30mほど先を白いワンピースの少女が歩いていた。


 (この辺に住んでるのか……

 ひょっとしたら、また会えるかもしれないな)

 祐希は淡い期待を抱いた。


 少女が進む方向は、偶然にもシェアハウスと同じ方向だった。

 風に揺れる長い髪をなびかせながら、まるでモデルのように優雅に歩いていた。


 祐希は彼女の美しい後ろ姿に見とれながら歩を進めた。

 いつの間にか、祐希と少女の2人だけとなった。

 静かな住宅街に彼女のヒールの音が響く。


 なんだか、さっきより歩くペースが速くなっている気がする。

 駅から5分ほど歩いたところで、彼女は急に立ち止まり、ゆっくりと振り向いた。

 そして祐希の顔を確認すると、眉をひそめ早足で歩き始めた。

 彼女は身を守るように、持っていたバッグを胸元にぎゅっと抱き寄せた。


 何だろうと思いながら、地図アプリが指し示すルートを進んで行くと、少女も同じ方向へ曲がった。

 そして徐々に早足となり、時々振り返りながら、最後には走り出した。

 次の角を曲がったとき、すでに少女の姿はなかった。


(ひょっとして……ストーカーと思われたのか?)

 運命の再会が、最悪の出会いに変わってしまった。

 祐希は天を仰ぎ、深くため息をついた。


 祐希はそこから100mほど歩き、目的地に到着した。

 周りは閑静な住宅街で、そこには一際(ひときわ)目立つ2階建てのデザイナーズ・シェアハウスが建っていた。


 敷地はかなり広く、周囲はフェンスで囲まれ、その一角の門扉にインターフォンがあった。

 そのボタンを押すと明日奈が出た。

「は~い、あっ、祐希くん、ちょっと待ってね、今開けるから」


 すると門扉が自動で開いた。

 お~、自動か……凄いなぁ。


 入口には「篠宮」という表札と「シェアハウス・ヴィーナスラウンジ」と書かれた看板が掛けられていた。


 玄関に着くと、ポーチの両脇にはセキュリティ・ゲートが配置されていた。

「随分と厳重に防犯対策してるなぁ」と祐希は感心した。


 玄関でチャイムを押すとドアが開き、明日奈が笑顔で迎えてくれた。

「はいどうぞ~、祐希くん待ってたわよ」

 明日奈は20代後半のはずだが、実年齢よりもずっと若く見えた。


「義姉さん、ご無沙汰してます」

 祐希は、久しぶりに会う明日奈が美しすぎてドキドキしていた。


「祐希くんと会うのは4年ぶりかしら。

 前に会った時は、まだ高校生だったけど、もうすっかり大人ね」


「昨日は連絡、ありがとうございました。

 火事でどうしようかと思っていたので、本当に助かりました」


「ううん、本当に大変だったわね。

 たまたま用事があってお義父さんに電話したら、祐希くんのアパートが火事になったって聞いて心配してたのよ。

 でも、無事で何よりだわ。立ち話も何だから、さあ中へ入って」

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