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壮大な嘘告白をされ人間不信になった僕、後ろの席の女の子が付きまとってくるようになる  作者: 有原優
第七章 文化祭

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111/112

第111話 海

 その翌日、僕は電車に乗った。ほとんど始発のようなものだった。

 僕はその電車の中で軽く緊張を覚えていた。

 ほんとうに向かって正解だったのだろうか。

 鈴美に相談するべきだっただろうか。



 そもそも、行為だけ考えれば鈴美に一言言っておかなくてはならない事だ。

 言い方を変えれば、女に会うという事なのだから。

 だけど、いまさらそんなことを考えても仕方がないだろう。


 電車位に揺られながら、WEB漫画を読む。

 その中で、僕は思索に励んだ。


 そうしていると、すぐに海へとついた。

 海に行くのは、あの時以来だ。

 僕と芹原との最終決戦の日。その前日だ。


 あの日は申し訳のない事をしたな、なんて思う。

 あの日、楽しい海デートのはずだったのに、その予定を完全に変えてしまった。


 申し訳のない気持ちが出て来る。


 だけど過去の事を今考えても仕方のない事だ。


 僕は海に降り立った。そこに芹原がいた。

 風になびかれている。


「芹原」


 僕が名前を呼びかけると、


「来てくれて嬉しい」


 と返された。僕はその言葉に、軽くうなずき、


「私、陽君の事」


 そして抱き着かれた。

 記憶喪失後のあの出来事を思い出す。

 あの時も芹原は多少おかしくはなっていた。


 あれと同じような事になっているというのだろうか。


 よくは分からない。

 だけど、


「あなたはやっぱり私の運命の人です」

「それは知ってるよ」


 君が常に言っているのだから。



「迷惑なのは分かってます。私のせいで陽君が苦しんでいるのも分かっているんです」


 でも、と続け、


「私は今のわたしが分からないんです」

「分からない、か」


 その、芹原の言葉は……


「わたしを虐めてきた相原さんから聞いたんです。私はどうしようもないメンヘラなんだって……」


 メンヘラ。確かにそうだった。


「今のわたしもそう思うんです。だから一人出来てもらったんです」

「それはいいけれど、どうして海なんだ」

「私は前の私みたいに陽君を強引にわたしの物にはしたくないんです。だからっ」


 そして、芹原は、


「私の気持ちだけ聞いてほしいんです」

「気持ちだけ……」

「はいっ」


 芹原は、自身の手をギュッと握った。

 ああ、まただ。

 今の芹原と以前の芹原とが結びつかない。


 芹原の今の顔で今の芹原が喋っているのに対し、違和感を感じてしまう。


「私は、陽君への恋が通じないのは分かっています」


 そして、彼女は自分の服を抜いていく。

 そして、水着姿になる。


「だから、今日は一緒に海で遊んでくれませんか?」

「どうしてそうなったんだ」

「いいじゃないですか」


 にこやかに笑った。


 今は夏ではない。秋だ。それに伴い、ここで泳ぐことは多少危険な行為と言える。季節外の海にはクラゲが現れる。そのせいで、泳ぎにくいのだ。


 だからあまり遠くまでは泳いではいけないだろう。



 水につかる。芹原は水着で海に入っていく。


 あの日を思い出す。



 芹原とプールに行った時。あの時は非常にうざかった。

 あれはまさにストーカーというか。

 なんか言葉にならないえげつない行為とでも言えるだろうか。


 あの日、僕は鈴美という助綱を呼び、そして鈴美とプールを楽しんだ。


 今は鈴美はいない。だけど、楽しく感じるのはこれは浮気心だろうか。

 違うだろう。


 多分ここにいるのが知り合いのだれであれ楽しかったと思う。


 そういう物なのだろう。


 だけど、最後の方には、鈴美の存在を望んできた。

 鈴美が恋しくなった。


「最後に」芹原がいう。「わたしを愛人にしてくれませんか?」


 今度は恋人ではなく、愛人と来たか。

 しかし、


「ごめんなさい」


 そんな関係を望まない。

 望みたくはないのだ。


「そうですか」


 多少身構えた。

 暴力に励む可能性も。


 だけど、彼女はにっこりと笑い、僕の罪悪感に語り掛けたのだった。


 帰り道。僕たちは、一緒の電車で帰った。だけど、その中で会話は無かった。

 所謂気まずい空気感だ。

 だけどこれは仕方がないだろう。

 ある種、僕の選んだ選択だ。


 彼女の目はスマホに釘付けになっている。

 恐らくはスマホを見て楽しんでいるというよりも、僕と目を合わせられないが正解なのだろうか。


 すぅ、と息を吸う。


 僕は……


 この人の少ない早朝の電車でどうすればいいのだろうか。


 メールだ。メールという手段があると、僕は思った。それならば意思の疎通という物が出来るだろう。



 僕は、スマホを見る。

 こんなことをしているから、僕は甘いんだろうな、なんて思った。


『分かってると思うけど』そう、前置きをして、


『友達として一緒に居る事が嫌な訳じゃないから。ただ、鈴美がいるから、他の恋人は作れないだけで』


 そう、ここは一夫多妻制の社会じゃないのだ。そんな、男尊女卑社会ではないのだ。



『だから安心して』

『なら、抱きしめていいですか』



 急に来た。


『それはごめん。出来ないかな』


 僕はそう送った。

 それは恋人同士でするような話だ。


 僕と芹原の二人でするようなことではない。



『分かりました』


 見るからに不服そうな感じだった。

 だけどそこは飲み込んでもらうしかない。


 そして、


 そこからはスマホのメールによる会話もなく、無事に学校にたどり着く事となった。たどり着く事となった。

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