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「私と彼で何が違う?」
「全部違うんじゃないです?」
顔と体つき、立場、国、忠誠の先。
私に言わせれば『似たようなもの』は違うからこそ『似たようなもの』にすぎない。
似ているからそれでいいという人もいるだろうが、その妥協を許せるかどうかもまた人それぞれだ。
身分や持っている資産だけが目的なら、どっちでもそりゃ変わんないだろう。
贅沢させてくれるって約束が大前提だけど。
(でもどうせこの男の目当ては別なんだし)
私の持つ 〝分析・分解〟の特殊技能が目当てだってことはもうさっきまでの会話で推察できている。
そのうえでどっちも似たようなスペックだろって言われたら、そりゃ私は自分が好きだと思っている方を選ぶってだけの話なんだよね。
(それに断然シリウスの方がいい男だしね)
私の作った粗野な料理だろうと丁寧に作り込んだ料理だろうと、いつだって『美味しい』って幸せそうに食べてくれる男がいいんだよ。
この目の前の男、ルーラント・クレイとそんな食卓を囲む未来は欠片も想像ができない。
それが答えだ。
「残念ですけど似ているだけじゃどうしようもできないんですよねえ」
「……シリウス・フェローチェス・ノクスの何がいいんだ? 君も、我が姫も」
「さあ……そちらの姫君に関しては、私よりもアナタの方が詳しいのでは?」
そもそも幼い頃の婚約者だったんでしょ、私より詳しくなかったらそれはそれで問題なのでは?
まあそんな正論ぶつけられたくはないだろうから、黙っておくけど。
とはいえいろんなところから話を聞く限り、姫の好みが現場で働くようながっちりした体型の騎士だった。
世間で言うところの貴公子らしい貴公子のルーラントでは好みに合わない。
だからって、付き合いの年月を考えたら情くらいありそうな気はするけど……貴族ってのはまた違う考え方をする生き物だって組織に所属していた時の先輩が言っていたのでよくわかんないんだよね。
(それで考えたら『好みだから』だけであの王女様がわざわざ国を超えてまでシリウスを口説きに来たわけじゃない可能性があるんだよな……)
そしてサフィアン様はそれをきっと考慮しているからこそ、警戒しているんだろう。
私には関係ないことだけどね、ハハッ!
「逆に質問したいんですけど、クレイ様は姫の婚約者って立場に未練はなかったんです?」
「ふむ。……ないな」
「これっぽっちも?」
「ああ」
私の問いかけに、ルーラントがくすりと微笑む。
その微笑みだけはなんだかやけに人間くさくて、私は少しだけ意外に思った。
こんな質問、され慣れているだろうに。
「……彼女は友人だ」
「ふうん」
「愚かで、可愛らしい子だから。願いを叶えてやりたいと思うのも、友人としてはよくある話だろう?」
「そうかしら」
友人のために偽装婚約、これはまあ、本人たちさえよければありかなと思う。
でも友人のために外国まで着いてきて、成就するようにするため片思い相手の婚約者と別れの交渉をするのかっていうのは……しないんじゃない?
国益になるとしても、だ。
「カーリーン王女のお気持ちが成就するしないに関わらず、私と接点を持つことは大前提だったんですよねルーラント・クレイ」
「……ああ、その通りだ。私は〝クロウ〟を連れ帰り、その特殊技能を解析したいと考えた。それがあればいかなる毒も、魔法も、恐ろしいものではなくなる」
「新しいものが次々生み出されるのに?」
「だからこそ、だろう?」
貴公子らしい立ち居振る舞い、だけどそこに滲む貴族としての傲慢さ。
そういうとこだよなあ、シリウスに勝てないのって!




