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私はあえて封を切らず、シリウスの帰宅を待ってから開けることにした。
まあ開けないって選択肢はないんだけどさ、まずここで大事なのは〝一緒に開ける〟という点なの。
先に開けると、待っててくれなかった危険があったらどうするんだ小細工して自分に知られたくないことなんてないよな? っていう、信頼はしているけど私なら何かするだろうっていう目がだね。
いやもうこれに関しては過去、私が色々やらかした結果なので仕方ない。
実際、魔法系で何か仕掛けられていて私が検知できなかったとあれば、一人で開けたら対処できないしそういう点では他に人がいるところが望ましいよね。
でもシリウス以外を頼るのは論外である。
そんなことした日には『俺はもう必要とされないのか?』だの『セレンの頼りにすべきは俺だろう?』だの言い出して宥めるのが大変になるからなア!!
実際頼りにしているよ! してるってば!!
まったくこのヤンデレは……扱い間違えなければちょびっとだけ重たい愛ではあるけど一途だし尽くしてくれるんだけどさ。
今も軟禁と何が違うの? って言われるとかなり微妙なラインではあるけど、シリウスの目の届くところなら私に自由は与えてもらえるので不自由はないし。
(……サフィアン様には悪いけど、やーっぱ私もどっかズレてんだよなあ、多分)
まあそれはともかくとして。
そういう理由でこの〝外部から届いた手紙〟に関して、一人で開けるという選択肢はないわけ。
「で、こちらがそのオテガミ」
「貸せ」
帰ってきたシリウスにぴらっと見せたら速攻で持っていかれた。
まあいいけども。
「中身については知りたいなあー」
「……わかってる。勝手に燃やしたりはしない」
いいって言ったら燃やすつもりなんかい。
というツッコミはともかくとして、ざっと目を通したシリウスはすぐに便箋を私に渡してくれた。
たった一枚だけど、そこには綺麗な文字が並んでいる。
「へー、お茶会のお誘い」
「ルーラント卿が、お前を、誘っての……な」
めっちゃ区切って強調してくるじゃん。
気に食わないですって隠しもしてないのが笑える。
まあ私も正直なところ、堂々と私の男を誘惑し続ける王女様に腹を立てているので所詮は似たもの同士ってことなのかな。
「……とりあえず、何の用だと思う? 王女様のために身を引けってのが妥当なところだろうけど、わざわざこんな回りくどいことするかな」
「他国であることを考えれば、慎重にはなるだろうが……用件そのものが書いていないからな。二人きりでと書いていないところも、王女がいるのかいないのか……ああいや待て、この日は俺は王女に遠乗りに連れて行けと言われた日だ」
「つまり護衛騎士を置いてシリウスと二人きりになりたい、ってこと?」
「……いくら主人に言われたからと言って護衛を離れて、その相手の婚約者を誘うか?」
「普通に考えたらないけど、そもそもやってることがあの人たち普通じゃないからね?」
「まあその通りだが」
シリウスが苦笑する。
その姿も様になっているんだよなあと思うと、あの王女様の見る目だけは認めてやっても良いと思った。




