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表向き大人しく従うシリウス、だけれど縮まらない距離――果たして、それを王女様はよしとするだろうか?
私の考えではノーである。
どうにもあの王女様、深謀遠慮って感じじゃない性格っぽいもんね!
あくまで見た目と、初見の態度で判断しただけだけど。
つまり決めつけだよ!
とはいえ割と外れていないと思う。
ではそういう人はどういう行動に出るのか?
私の経験則だけど、そういう人って割と難しいことを考えないと思う。
意中の相手が振り向かないなら、まず振り向かない要因を排除して囲い込めばいいじゃない(物理で)。
こんな感じ。
そしてあのオヒメサマはこのタイプだと思うんだよなあ、私のカンでしかないけど!
(……ノクス公爵家が動かせないならシリウスを。シリウスを動かせないなら、アナベルやレオナール公子を。そしてそれもできなければ交渉の余地があると見る先はサフィアン様だ)
でもサフィアン様はアナベルに嫌われたくないし、なんだかんだノクス公爵家というちょっとこう……普通じゃない貴族相手にするのに私みたいな一般人枠(?)がいてくれないとちょっと辛いと思ってそうなので、私を売り飛ばすことはしない。
というかそんなことに加担したとわかったら、たとえ可愛い義妹の婚約者だろうが、元主人だろうが関係なくシリウスがぶっ飛ばすと理解しているだろうからまずもってやらない。
サフィアン様はそういう意味でちゃんと理解している人だけに、苦労人なのだ!
(それ言ったら本人にすごく嫌がられそうだけどね!)
それに私を逃がしたとして、あのシリウスが追っかけてこないはずがないもん……怖すぎでしょ……。
「さて、どういう手に出てくるのかなあ」
さすがによその国に来てまで暗殺者を……なんてこたぁしないだろう。
そもそも影喰いルーラントを連れてきた理由もよくわからない。
わからない時は、無駄に動かない。
相手の動向だけを常に見ておく。
私は特別強くない分、ずる賢く生き延びなきゃならない。
シリウスはきっと守ってくれる。
だけどそれに頼り切りになっては、勘が鈍るというものだ。
そしてそんなことを考えていたらポストに誰かが何かを投函していくのが、窓から見えた。
逃げるように去って行く姿は見慣れない格好で、この辺りの人じゃないのだろう。
その後ろを魔獣が追いかけていくのが見えたけど私は気にせず階下へ移動して、外のポストに歩み寄る。
「ふうん?」
綺麗な封筒に記されているのは、私の名前だけ。
だけど差出人のところは無記名。
封蝋はしっかりされているけれど、何の印も刻まれていない。
怪しげな香りを纏っているとか、毒物が染み込んでいる……ってこともなさそうだし、魔力の『ま』の字も感じないので本当にただのお手紙だ。
「さあて、鬼が出るか蛇が出るか……まずはシリウスに見せるかどうか、ね」
まあ見せないって選択肢はないんだけどさ!
だって拗ねるじゃん、絶対!!




