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王女が来てからまあ予想通り、シリウスは朝から呼び出されている。
アナベルとでは年が離れていて話が合わないとか無理があるだろ……っていう理由がこれまたもうねえ、王女様ってもっと頭いい言い訳思いつかないの? って思った。
いやほら、私の中のイメージとしては、王侯貴族は深謀遠慮の極みである社交をこなし、笑顔で迂遠表現を愛してチクチクチクチク嫌味合戦をする……ってな感じだったからさ。
そんな子どもみたいな……って思うのは、だめかな……。
(私だってもうちょっと別の言い回し思いつくけど)
とはいえ、まあ 私相手に何か知恵を使うまでもないってことかもしれない。
それと、アナベルを相手にできないってのは、他のみんなの言葉を考えるならばきっとおそらく、アナベルを敵として見ているからだ。
シリウスを自分の夫にして、ノクス公爵家を手に入れる――それがカーリーン王女の目的ならね。
(そりゃ次期当主として大事にされるアナベルは敵だよね)
しかも若くて有能、自国の王族に見初められるほど可愛いと来たら嫉妬の面でも敵視バッシバシになりそう。
私はまあ、お呼びではないのでね。
自宅でのんびりさせてもらっているわけですよ。へへっ。
帰ってきた不機嫌シリウスを宥めて翌朝元気に送り出す、それが今んとこのお仕事です。
健全じゃなあい? 健全じゃなあい!?
※大事なことなので二度(以下略)
「それにしても王女様って日がな何してんの」
自宅でニート生活を満喫して……いやいやいや、自宅警備員……それもだめだな。
とにかく自由を謳歌させて貰っている私が言うのもなんだが、王女様って他国の人だから政治に関わるような案件なら王城にいないとできんことばっかじゃない?
だからもう本当、ノクス公爵領の特産品が……とかそういう話題でもなければただの物見遊山なわけよ。
でもノクス公爵家から出かけて観光する様子もなければ、そういう取引的なもの? をするわけでもなさそう……ってのは私の耳にも届いている。
「別に何も」
「何もってこたぁないでしょ、さすがに」
「……そうだな、大体俺を呼び出して茶の相手をさせたり、ルーラント卿に魔物を倒させろとか、俺と対峙して競い合えとか……」
「思った以上に好き勝手やってんね」
「付き合わされるこっちはいい迷惑だ」
「……ルーラント卿はどうして大人しく従ってんのかな」
「それもわからん。話をしようにも、あの姫君の傍から離れないしな」
あのねちっとした視線の意味も今のところ不明のままだ。
ただまあ油断はできないと思う。
だって相手は〝影喰いルーラント〟だもの。
私は実際に暗殺者としてあっちの国に渡ったことはないので認知されているとは思わないけど……いやいや、暗殺者界隈どこがどう繋がって情報として巡っているかわからんからなあ!
警戒するに越したことはないだろう。
……つっても私にできるのは、大人しくしておくことかなあ、なんて思うのだ。
だって勝手に動いてシリウスがついてきちゃったらそっちの方が大惨事になりそうじゃない?
(ただでさえ、オヒメサマの我が儘にそろそろ面倒くささが限界そうだもんね!)
サフィアン様がなんとかするために今レオナール公子と動いているから、もうちょい頑張るんだよシリウス!




