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「ねえシリウス、前に私が使ってた武器ってどこにしまってあるの?」
「要るのか?」
「ずっとあなたが隣にいないならそりゃ身を守るためにも持っておいた方がいいでしょ。何? 外で調達してきた方がいい?」
「俺以外の人間が用意したものを使うだって? 許せるはずがないだろう」
「だから言ってるんだけどね……」
面倒くさいやっちゃなあ!!
思ったけど言わないよ。
私は大人だからね、譲歩してあげよう。
それになんだかんだ言って新しい武器をシリウスからもらうよりは、元々使っていたものを返してもらえた方がいいんだよね。
武器ってどうしても使い手の癖があるから、適したものを今から探したり、今から手に馴染ませるのは大変だもの。
器用貧乏でもあるので大抵のものは使えるけど、やっぱりいざって時に使うなら慣れた武器がいいじゃない。
ちなみに私が得意としているのは投擲用とちょっと形状が変わっているナイフだ。
あんまり筋力もつかないし、基本は暗殺者として育てられたので身軽さ重視。
今更騎士様たちがやるような剣術を習ってもそう身につくとは思えないし、暗殺に対応するならそういうお綺麗なものじゃない方が対処もしやすい。
「……仕方ないな」
そしてシリウスは私の武器を捨てていないという確信があった。
これまで一緒に暮らしてきてこのヤンデレ男はなんていうか……私のことが一番大事なのだ。
だから囲い込む。
それは私を束縛したいとか、支配したいという意味ではないのだ。
シリウス・フェローチェス・ノクスの目の届く範囲で、私が無事に過ごせることが大事で、そしてそんな私を愛でるための箱庭があの家ってわけだ。
だから逃げないのであれば自由を与えるし、私が望むものはなんでも揃える。
あの家は外敵を寄せ付けないどころか、過剰だろうという結界に覆われている。
(臆病で、優しい男。でも厄介な男)
逃げれば捕まえるし、私に嫌われたら死にたいと思うかもしれないけど死んだら私を守れないし他の男の手に渡るのなんて言語道断というよくわからん思考もしている。
(……それがわかるのもいやだわー本当に怖いわー)
そしてそんな男に惚れた私もなんだわあ。
やっぱりイケメンだからなのか?
イケメンでもヤバイやつはたくさんいたし、そいつら見ても私の胸はキュンとしなかったんだけどなあ。
で、話を戻すと、そんなシリウスだからこそ私の私物をそう簡単に捨てないと判断したのだ。
衣服は別だ。普段着とかはどっちかっていうと〝自分が選んだもの〟を着せたいタイプ。
でも武器は彼自身が騎士であることから、その重要性を知っている。
私の思い入れ――は、特にないけど。
私にとって使いやすい武器は、彼にとってきっとコレクション化されているんじゃないかなー……って思ったわけよ。
そしてあの反応からまさしくあたったよね。
あたったけど……嬉しくないね!!
「手入れはしてある」
「……ありがと」
「使わないのが一番だがな」
「まあね。私が間違ってオヒメサマにこのナイフ投げちゃったらどうしよ」
「そうしたら俺が全力で弁明する。……ところでその投げる理由は嫉妬してくれたからか?」
「さあ、どうだろうね!」
嫉妬したんなら、多分私はまずシリウスをぶん殴ると思うけどね!!
ヤンデレへの理解度って難しいな……!




