不器用な人
あれから三日が立って。
工場崩壊などの一連の事件は町人に大きな衝撃を与えたと同時に数々の噂がたった。犯人は貴慮だとか、国が秘密裏に行っていた実験が失敗しただとか。大体は出所のたしかでないデマ情報だった。しかし中には、新魔法使いが現れただの、ヒーロー気取りのそいつはただただ町に迷惑をかけただけ、だの、的を得た半分悪意でできた感のいい噂話も耳にした。噂だって侮れないと痛感した。
「尚太!無茶し過ぎ!」
あれからずっと真琴がうるさい。
「悪かったって…でも相手はこの国最強のヤクザの一味だったんだろ?いいことしたんじゃねえの?」
「それはそうだけど。でももし、尚太が死んじゃったら…」
「そうですよ。一度死んだ身、二度は許されませんよ?」
シアンまで…きびしいなあ。
「それはシアンちゃんも一緒だよ!ケガを隠して助けに来るなんて、もう二度とあんなマネしないで!!いい?ちょっと訊いてる?尚太にも言ってるんだからね!!」
「「はい、ごめんなさい」」
「ちょっとお茶入れてくるね!」
ブスッとしたまま寝室から出て行った。
「からずっと怒ってますね」
「怒ってるというか拗ねてるというか。まあしばらくしたら戻るって」
僕とシアンはケガにより、寝たきりの生活を送っている。真琴はそれに文句も言わず(怒ってはいるが)、自ら看病をしてくれている。
「そうですかね。でもしばらくしたらって…、なんだかそんなに時間は残されていない気がします」
なんて、シアンは何かをさっとったようなことを口にする。
「女のカンですよ。とにかくここらで一度休息という意味も兼ねて、お出かけに行ってはどうでしょう」
「それもそうだな。ベッド生活もそろそろ飽きてきたし、実はケガしてないし」
「寝て看病されたかっただけですか」
シアンは静かに笑った。
「でも、シアンは行かないのか?」
「私はまだケガが痛むので」
シアンがいかないとなると、元の世界の日常のようになってしまいそうだが、まあそれもいいか。
ドアを開けて真琴が這入ってきた。
「はい、二人とも、お茶」
「ありがとうございます」
「ありがと…」
なんて言えばいいんだ?遊びに行こう?か。どこか行きたいとこある?とかか。と言うかこれってデート?なのか?
なかなか言い出せないでいるとシアンから激しめにアイコンタクトされた。
「こほんっ」
「どうしたの、シアン。わざとらしくせきして…」
僕は思い切って。
「真琴。出かける準備しろ」
と言うが、シアンはがっかりした表情でため息をついていた。不正解だったか。
「え。何でいきなり」
「いいから早く、早く」
「でもまだケガが」
「ケガなんてもともとしちゃいねえよ。僕はただ寝てたかっただけ」
「ちょっと!?騙してたの?サイテー!バカ!その代わりいいとこ連れてってもらうからね!!」
「悪かった、悪かった。でもいいとこっていっても僕お金持ってないんだけど」
「バカ!こういうのはお金とかじゃないの!」
「お、いいこと言うやん」
「こういうのはどれだけ体張るかなんだよ!」
「えぇ…」
そんな言い争いをしながら寝室を出る。ドアを閉める前に
「シアンはほんとにいかなくていいのか?」
と確認する。
「私は誰かさんみたいに、ケガを隠して遊びに行ったりする悪い子ではないので」
まったく。
「いい子ちゃんには完敗だ。」
書き溜めです。




