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おだまり!  作者: 倉名依都
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27.それであなたはどうするの?

話が逸れて、スタックした会談が流れるかと思われた時、こよりがふっと思いついたようにレンに尋ねた。

「ねえ、鷺洲くん」

「あ?」

「皇太子と公女の結婚まであとどのくらいあるの?」

「ああ、それな。式は8の月の1日だな」」

「あと1年足らずね」


「でさ、鷺洲くんは、どうするって言ってた? ジュリちゃん次第ってことだったよね。

その1、ジュリちゃんが皇太子妃になると決めた時、どこかで入れ替わって侍女役をやる、期限は王女を産むまで、だった?」

「そだ」

「で、男ばっか5人生まれた、とかだったらどーすんのよ」

「ま、仕方がねぇだろ。それがオレの引き受けた仕事だぜ、王女が生まれなかったら生涯皇太子妃の侍女だな」

「ひえー、南無阿弥陀仏、お疲れ様でございます」

「拝むな!」


「で、王女が生まれたら?」

「もちろん、バックレる!」

「ん、わかった。その頃にはジュリちゃんも普通に皇太子妃お勤めできるようになってるでしょ」

「ああ、皇太子妃になると決めた次の日から、数学と科学の特講だぜ。数学はサイン・コサインまでな。測量するから。天文と古典物理、後は遺伝と化学反応、おまけで気象だ」

「うひょー、ナムアミダブツ

「公女を拝むな!」


キャリコがそっと口を挟んだ。

「すいません、その公女さまへの特講、参加させてもらえますか?」

「ああ? いいぜ、ひとりもふたりも同じだ」

「ありがとうございます」

「こら、おまえまで拝むか?」


「んじゃ、その2。ジュリちゃんが皇太子妃はやらないと決めた時には、ふたりで雲隠れするのね?」

「だ」

「後は、もちろん放置なんだよね」

「たりめーだ」

サブサイダーズから、“いや、まって”とか、“ありなのか?”とか声が出て、公女は”困った顔“を張り付けている。


「ま、それは上等だよ。いいね!」

え? 上等? いいね? という声は、レンとこよりに完全に無視されている。

うーん、さすが界渡り、王弟の求婚を速攻で断る世界から来たヒト、とか納得しているのはトニオである。


レンから見れば、公女が皇太子との間に子を得るつもりがないなら、どこかで違う男を探すしかないのだ、後のことなど知ったこっちゃなかった。神の認可付きだ。


いやー、そういう認可じゃなかったけどねぇ。ま、いいけど?



「じゃあ、質問の核心だけど」

レンは、こよりの視線に気が付いた。それは、ふたりが長い入院生活で身に着けた、大人がこどもである患者をどう捉えているか心底わかり、甘えを捨てた時の決意の目だった。


「ああ、わかったぜ。聞こう」

「その3だね。ジュリちゃんが、結婚式の日が来てもまだ選べなかったとき、鷺洲くんはどうするの?」

ああ、なるほどな、さすがは坂下、人の狡さを見抜くし嫌うよなぁ。と、レンは納得した。

「もちろん、オレが結婚するさ。他に方法ないだろ?」

「ええー!」

おい、坂下、もうちょっと上手に驚けや。


「いやー、照れちゃうなぁ、そこまで誉めなくても」

「誉めてません! バッカじゃないの?」

「じゃあ、坂下、他に方法があるか?」

「うーん」

「だろ?

そもそもこいつとオレは同じものだ。中身は違うがなぁ。別に帝室としても、公爵家としても問題ないだろ?

しかし、あのキモチ悪い、アタマの悪い、甘やかされて訳わからない、帝国の平安に毒を盛られた皇太子の嫁だぞ。ああ、最悪だ!」


サブサイダーズのメンツには、ふたりが何をやっているのかわかってきた。即席の小芝居では調停者を騙すことまではできない。

だが、公女の顔は次第に白くなっていく。


「あのさ、鷺洲くん、すごく聞きづらいんだけど」

「あん?」

「あのさ、鷺洲くん、からだは女性だけど、中身は完全に男子でしょ?

大丈夫なの?」

「いや、ウエディングドレスはまあ行けるだろ? 今でもドレスはしょっちゅう着てるし。

婚姻証書のサインは練習する。

ああ、夜の話か? 大丈夫だろ?」

「ええー、マジですか?

心底キモチ悪い男と、キスして、全身撫でまわされるんだよ?」

「それどころか」


レンとこよりはノリノリである。ふたりは公女を煽っているのだ。

公女の“自分で決めたら責任を取らなくてはいけない、誰かに決めてもらいたい”という逃げと甘え。それは、ある意味レンが身代わりを引き受け助けに入ったことで、助長された傾向ではあるだろう。

だがこの先、皇太子妃に、大国である帝国の皇妃になるなら許されない。国どころか大陸の禍にすらなりうる。

忘れてはいけない、有事となり、皇帝が軍を率いて皇城を留守にするとき、皇妃は皇城の全権を掌握する。まして、それは長期でありうるのだ。


レンはそこまで引き受けていないから、どうでもいいと言えばその通りなのだが。


「まあなぁ。気ぃ失っとくよ。オレは男娼、一時的に月屋にいるんだ、とか諦める」

「いやー、ダメでしょ。 それに何? 月屋ってどういう存在?」

「じゃあ、坂下、他にどうする。オレはジュリが女の子を産むまで仕えるつもりでいるんだぜ。

皇太子が嫌なら、他の男を探すしかないじゃないかよ」


「ああー、想像するとすっげーなぁ、朝になったら、あのキモワル・殿デンが隣で寝てて、にっこり笑って、定番の”すごくかわいかったよ“とか、”愛しすぎて怖いくらいだ、もうこのままベッドから出たくない“とかほざきやがるんだ、それだけで死ねる。髪とか撫でられるかもしんねぇ。ううー、想像するだけでトリハダ」

「だよねぇ、ナマムギダイズ」

「拝むなってば! それに今、生麦大豆って言っただろ、仏罰が下るぞ!」

「いやいや、地球じゃないし」

「そういう問題か!」


ふたりは芝居、サブサイダーズはその見物に熱中するあまり、公女が過呼吸を起こして気を失っていることに誰も気が付かなかった。

いや、実は気が付いてはいたのだが、毎度毎度の過呼吸失神で、もうめんどくさいので放置されていた。

公女の世話なんかより小芝居の方が面白かった。


このお話の中では、複数の人が回復魔法を使えるので、過呼吸を放置していますが、現実世界では優しくしてあげてくださいね。病気でなければ、ストレスに対処できないことが主原因だそうです。(ググによる)

ちなみに、貴婦人はよく失神するそうです。気付けアンモニアは侍女の必携品だったらしいです。

「気に入らないことがあったら、ショックを受けた態で気絶してみせる」という技ともみなされていたようですが、グッドタイミングで気絶するのもさほど簡単なことではありません。

あるいは、過呼吸に陥れば気絶できることを知っていた、ということなのかもしれませんね。

命掛けてるなぁ~


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