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おだまり!  作者: 倉名依都
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25.調停者は濃いメンバー揃い

ストーム・サブサイダーズのメンバーは、その日のうちに警護対象であるはずの女侯爵に追いついた。だが、短い打ち合わせの後に、次の日にはシュレディンガーの姫が持つ別荘へと移動することになった。詳しい話はそちらで、ということだ。


ストーム・サブサイダーズのメンバーは4人、F級冒険者の時代から一度もメンバー変更がないまま非常に息の合ったチームとして育ってきた。最初のチーム名は、“トゥルーパーズ”(歩兵)で、先代から名前を引き継ぐまでそれで通した。

SS級になり、活動が評価されて“調停者”の地位を先代から引き継いだ。その時、名誉あるチーム名である、ストーム・サブサイダーズ(嵐の鎮静者)を同に引き継いだ。4人とも、歩兵からずいぶん出世したよな、と笑い合ったものだ。


調停者とは、冒険者ギルドの目が届かない辺地で、冒険者同士あるいは依頼人と冒険者の間に揉め事が起こった時、仲裁する資格を持つという、等級とは別概念の冒険者ランクである。


日本人的にわかりやすく言うなら、“水戸黄門の印籠”を持っている。この権威に逆らうことは、大陸全土の冒険者ギルドに対して反乱を起こすのと同義である。


メンバーのひとり目は、チーム・リーダーであるキルエット。笑いの決壊点が非常に低い女性だ。

外向きにはSS級であるという面目上、賢者を名乗っているが、本人は薬師のつもりでいる。魔法使いであり、錬金術師でもある。


ふたり目は、キャリコ。

外向きは大僧正、普段は僧侶と名乗る。癒し・治療系の魔法の他に、空間系の魔術はほぼ修めている。頭を半分剃り、残りの半分の髪を長い三つ編みにして垂らしているのだが、その髪の毛の房が、銀、黒、茶なのである。だから”三毛“、キャリコと呼ばれている。本名は誰も知らない。だが、失われた王家の髪の色であることは気が付く人にはわかる。


三人目は、スカリー。

テイマーの最高位であるドラゴン・テイマーである。普段は、別にスライムからドラゴンまでテイムできるのだからと言って、単にテイマーを名乗っている。スカリーの名は、左の頬の鱗から来ている。それは、テイムしたドラゴンから“ほい”と簡単にくっつけられた。生まれた時生えていて、成長とともに剥がれた小さな鱗だ。さすがのスカリーが感激の涙を見せた。それはドラゴンの“宝”だったから。


四人目は、トニオ。

ミリカンジャの女性騎士団が高坂真由のウッドハウスにたどり着いた縁で、オクタビアとエレクトラの姉妹から“魔法剣”を伝授され、それ以降魔法剣士というこの世界ではまだ数人しか得ていない称号を名乗っている。


サブサイダーズは、このトニオが何かの“呪い”に掛かって、誰にも解くことができず、足が腫れて歩行が困難になったことで活動休止となった。

この呪いを、男性によくある痛風であるとして、治療したのが高坂真由、キルエットの孫弟子であり、日本からの転生者でもある。 (このストーリーは、三部作の第一部「イヤです」で語られている)


トニオがマユの治療で冒険者に戻れることになったため、チームは再結成の運びとなった。

マユとこよりを通じて、レンが持つに至った縁でチームは帝国に招かれたのである。




「いや、すごい場所でしたねぇ」

キャリコがため息とともに言葉を押し出す。「息が詰まりました」


ここは、シュレディンガーの姫が持つ湖畔の別荘。

公爵家にSS級冒険者が滞在しているというのは政治的に賢くないとして、一晩で別荘へと移動することになった。

それは、レンが使用するスイーツを除くすべての場所が盗聴され放題、見られ放題だったからだ。


「やっぱそうだったんだなぁ」

「レンさま、わたくし全く気付かず」

「ま、おまえには無理だ。生まれた時からだからな」

「わたくしの部屋が例外だったのは?」

「そりゃ、おまえ、神サマの手口だろ? バレちゃ困ること満載だ、なんかテキトーに偽情報仕込んでるんだろ?」


「なるほど? 姫君方、申し訳ありませんがね、そろそろお話伺っても?」

「ああ、すまん」


会合のメンバーは、レン、公女、こより、キルエット、キャリコ、スカリー、トニオの7名。


「坂下、みなさんどこまで知っている?」

「えーっと、キルエット師匠?」

別にこよりはキルエットに師事してはいないのだが、マユが師匠と呼ぶのでセンパイに従って師匠と呼んでいて、キルエットも嫌がっていないし、何気にそうなっている。

「そうね、マユが界渡りしてきたこと、かな?」

「ええー、それだけ? 私のことは?」

「ミリカンジャの元王女殿下」

「ひえー、そっからかい!」


別荘の談話室で、長いながい1日が始まった。

「まず、神サマからかー、参ったな、まとめていくかー」

全体構造を掴んでいるのが、前ふたりの情報をもらっている三番目の転移者であるレンだけだったので、レンが器用に話をまとめていく。


まず、マユのケース。神の依頼が何だか切羽詰まっていたことから始まり、結果として王弟を助け、神獣を助け、トニオを救い、サブサイダーズの再結成を可能にしたことまで。


次に、こよりのケース。こよりが皇太子アレルギーという変な拒否症状を持っていたため、神の依頼に応えることができず、緊急性としては低いはずだったミリカンジャ王家の騒動を抑止したこと、結果として、この世界で初めての女性騎士団の結成を促したことまで。


最後に、レンのケース。実はオレ男でさ、というネタバレには、さすがの調停者チームが咳払いをして確認を入れた。ぎりぎりようやく間に合った神の改竄とレンの身代わりには、あまりの超展開に、ちょっと待って、の静止が掛かった。



「ランチにしようか」


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