演劇昔話 寿限無
※音読推奨
むかしむかし、あるところに一組の夫婦が住んでおった。
夫の名は竹内祥吾、妻の名は結城まろんと言った。
「なんで苗字が違うんだよ」
「ま、まぁまぁ・・・・・・」
まろんは竹内を宥めつつ、実際そこまでされたら意識しちゃいますですよと小さく呟いた。
それは置いておいて。
二人には何度も女の子が生まれたが皆短命で、事故やら病気やらで亡くなってしまっていたという。
「ひでぇ設定だな」
「かわいそうなお話です・・・ぐす・・・・・・」
そこで、4人目の子供が生まれたとき、長生きできる名前をつけてもらえるよう村のお偉いさんに頼みに行ったそうな。
「この白髪・・・・・・よし、名前は周さんにするです!」
「それじゃ設定が変わるだろ」
カラカラと家の戸を開け、二人は入る。
「お偉いさんとやら、いるか?」
「いるよ」
出てきたお偉いさんは瀬戸内麗奈という女性だった。
「・・・・・・お前がお偉いさんか」
「仕方ないでしょ、無理矢理決められたんだし・・・・・・」
やれやれと首を振りつつ麗奈は二人を家に上げた。
「で、では、早速名前をお願いしますです」
「そうだねぇ、では・・・・・・」
麗奈はあれこれ考えた末に名前をつけた。
「なが~く生きられるようにと、「長介」ってのはどうだい?」
「・・・・・・女の子って設定なんだが」
「周さん泣いちゃいますよ・・・・・・」
二人に言われ、麗奈は「んん、そうかい?」と声を上げる。
「台本にはそんなこと書いてないんだが・・・・・・。
じゃあ「長介周」ってのはどうだい?」
「無茶苦茶だな・・・・・・」
竹内は思わずズビシッと突っ込んでしまった。
「麗奈さん、「長介周」と名付けてもらった長女は1週間ほどで亡くなりましたよ」
「つけたのかよそんな名前!!」
「で、でも、台本にそう書いてあります・・・・・・」
「書いてあるんなら仕方ないね」
「・・・・・・」
まるで打ち合わせているかのような会話に下手な突っ込みができず、竹内は言葉を失った。
「え~とじゃあ・・・・・・「長々介周」ってのはどうだい?」
「安直な・・・・・・」
「麗奈さん、「長々介周」と名付けてもらった次女は1ヶ月ほどして熱出して死にましたが」
「全然ダメだな」
「ですね・・・」
「そ、そうかい、じゃあね・・・・・・「長々の長介周」ってのはどうだい?」
「増やしゃいいってもんじゃねーよ」
「だって台本に・・・」
「あーもー分かったよ、もう言わねーよ」
ちくしょう、と竹内は頭を抱えてしまった。
「麗奈さん、「長々の長介周」と名付けてもらった三女は1年ほどして事故で・・・・・・」
「またかよ、どんだけ不幸なんだ・・・・・・」
「まったくです・・・・・・」
「よし、じゃあ思い切って長い名前をつけよう。
え~と・・・・・・」
麗奈はそう言うと服の裾から取り出した長い紙を見ながら長い長い名前を口にした。
「「一長村の長村の、長々村の長村の、あの山越えて谷越えて、寿限無寿限無、パイポパイポのシューリンガン、シューリンガンの海砂利水魚、海砂利水魚の五劫の擦り切れ、アップクプーのヘップクプーのチッチロチーの長々の長介周」ってのはどうだい?」
「・・・カンペガン見だな」
「だってこんなの覚えらんないし」
ぷーっと膨れながら竹内に言葉を返す麗奈。
「そんなに長い名前ならきっとすごく長生きできることでしょう!」
「そうか?」
「・・・・・・竹内先輩、本番中ですよ」
「チッ、仕方ない・・・・・・。
え~と、そ、そうだな、よかったよかった。
ありがとうございます」
「いえいえ、お気になさらずに」
こうして二人は長い名前を付けてもらい喜んで帰ったそうな。
「ん?まだあるな。
え~と・・・・・・そうだ、略して呼ばれるとその分寿命が縮まるかもしれん。
村の皆にもちゃんと名前を全部呼んで貰えるようにお願いしよう」
「そうしましょう」
「・・・・・・無理だよな」
「・・・・・・ですよね」
こうして、一長村の長村の、長々村の長村の、あの山越えて谷越えて、寿限無寿限無、パイポパイポのシューリンガン、シューリンガンの海砂利水魚、海砂利水魚の五劫の擦り切れ、アップクプーのヘップクプーのチッチロチーの長々の長介周は、今までの子供達のように病気になるでもなく事故に遭うでもなく、すくすくと成長していったそうな。
そんなある日。
「・・・・・・あ、この子供は僕の役か」
幼馴染の俊介が遊びに来たそうな。
「え~と・・・お~い、遊びに来たよ~。
一長村の長村の、長々村の長村の、あの山越えて谷越えて、寿限無寿限無、パイポパイポのシューリンガン、シューリンガンの海砂利水魚、海砂利水魚の五劫の擦り切れ、アップクプーのヘップクプーのチッチロチーの長々の長介周ちゃ~ん!」
ぜぇぜぇと息を切らしながら俊介は名前を呼ぶ。
すると中から目的の人物が現れた。
「あ、しゅんくんいらっしゃ~い。
わざわざ遊びに来てくれたんだ~」
「うん、まぁね。
じゃあ今日はどこに遊びに行こうか?
一長村の長村の、長々村の長村の、あの山越えて谷越えて、寿限無寿限無、パイポパイポのシューリンガン、シューリンガンの海砂利水魚、海砂利水魚の五劫の擦り切れ、アップクプーのヘップクプーのチッチロチーの長々の長介周ちゃん」
(だ、大丈夫?)
(う、うん、なんとか・・・ぜぇぜぇ・・・・・・)
「そうだね~、じゃあ今日は川のほうに遊びに行こうか!」
「うん、そうしよう!
一長村の長村の、長々村の長村の、あの山越えて谷越えて、寿限無寿限無、パイポパイポのシューリンガン、シューリンガンの海砂利水魚、海砂利水魚の五劫の擦り切れ・・・・・・ぜぇ・・・アップクプーのヘップクプーのチッチロチーの・・・・・・長々の長介周ちゃん・・・・・・」
二人は川で水遊びをしたり魚を獲ったりして遊びました。
ところがふとした拍子に足を滑らせ、一長村の長村の、長々村の長村の、あの山越えて谷越えて、寿限無寿限無、パイポパイポのシューリンガン、シューリンガンの海砂利水魚、海砂利水魚の五劫の擦り切れ、アップクプーのヘップクプーのチッチロチーの、長々の長介周は川の深みに嵌ってしまったのであった!
「あっぷあっぷ!
た、助けて~!しゅんく~ん!」
「ああ!大変だ~!
一長村の長村の、長々村の長村の、あの山越えて谷越えて、寿限無寿限無、パイポパイポのシューリンガン、シューリンガンの海砂利水魚、海砂利水魚の五劫の擦り切れ、アップクプーのヘップクプーのチッチロチーの、長々の長介周ちゃん!
待ってて!すぐに助けを呼んでくるから!」
「は、早く~!がぼがぼ・・・」
俊介はそう告げると即座に村の大人に助けを求めに行きました。
すると丁度向こうから村の人がやってきました。
「大変だ~!大変だ~!」
「お?どうしたんだ?」
やってきたのはなんと丁度よく、一長村の長村の、長々村の長村の、あの山越えて谷越えて、寿限無寿限無、パイポパイポのシューリンガン、シューリンガンの海砂利水魚、海砂利水魚の五劫の擦り切れ、アップクプーのヘップクプーのチッチロチーの、長々の長介周の父親であった。
「大変なんだよ!竹内く・・・じゃない、え~と・・・・・・
一長村の長村の、長々村の長村の、あの山越えて谷越えて、寿限無寿限無、パイポパイポのシューリンガン、シューリンガンの海砂利水魚、海砂利水魚の五劫の擦り切れ、アップクプーのヘップクプーのチッチロチーの、長々の長介周ちゃんのお父さん!」
「おうおう、確かに俺は一長村の長村の、長々村の長村の、あの山越えて谷越えて、寿限無寿限無、パイポパイポのシューリンガン、シューリンガンの海砂利水魚、海砂利水魚の五劫の擦り切れ、アップクプーのヘップクプーのチッチロチーの、長々の長介周の父親だが。
そんなに慌ててどうした?」
「実は川でさっき
一長村の長村の、長々村の長村の、あの山越えて谷越えて、寿限無寿限無、パイポパイポのシューリンガン、シューリンガンの海砂利水魚、海砂利水魚の五劫の擦り切れ、アップクプーのヘップクプーのチッチロチーの、長々の長介周ちゃんが!」
「なにぃ?
うちの一長村の長村の、長々村の長村の、あの山越えて谷越えて、寿限無寿限無、パイポパイポのシューリンガン、シューリンガンの海砂利水魚、海砂利水魚の五劫の擦り切れ、アップクプーのヘップクプーのチッチロチーの、長々の長介周がどうしたって?」
「一長村の長村の、長々村の長村の、あの山越えて谷越えて、寿限無寿限無、パイポパイポのシューリンガン、シューリンガンの海砂利水魚、海砂利水魚の五劫の擦り切れ、アップクプーのヘップクプーのチッチロチーの、長々の長介周ちゃんが・・・川に落ちたんだ!」
「な、なんだって!?
うちの一長村の長村の、長々村の長村の、あの山越えて谷越えて、寿限無寿限無、パイポパイポのシューリンガン、シューリンガンの海砂利水魚、海砂利水魚の五劫の擦り切れ、アップクプーのヘップクプーのチッチロチーの、長々の長介周が川に落ちただと!?
そりゃ大変だ!早く助けに行かないと!」
「ぶくぶく・・・・・・」
危うく溺死するところで助けられた
一長村の長村の、長々村の長村の、あの山越えて谷越えて、寿限無寿限無、パイポパイポのシューリンガン、シューリンガンの海砂利水魚、海砂利水魚の五劫の擦り切れ、アップクプーのヘップクプーのチッチロチーの、長々の長介周であった。
それ以降は特に病気も事故も無く、
一長村の長村の、長々村の長村の、あの山越えて谷越えて、寿限無寿限無、パイポパイポのシューリンガン、シューリンガンの海砂利水魚、海砂利水魚の五劫の擦り切れ、アップクプーのヘップクプーのチッチロチーの、長々の長介周は長生きしたのでありました。
めでたしめでたし
早口言葉の練習ということで、周の名前を一呼吸で読み上げましょう。
せ~の・・・・・・。




