覚悟
「秋だね~」
「秋だね」
「ああ、秋だな」
屋上での昼食中、周、俊介、竹内の三人はいくらか涼しくなってきた日差しを浴びながらそうつぶやいていた。
「大分暑さも落ち着いて来たね」
俊介がサンドイッチを食べながらそういうと竹内が口を開く。
「ああ、夏のあの暑さの中で食べるのはきつかったが、これくらい落ち着いてくればな」
「そうだね~」
その言葉に周も頷く。
そして。
「でもやっぱり秋といえば・・・・・・」
周がそうつぶやく。
(芸術、か?)
(食欲じゃない?)
周の言葉にそんなことを考える二人だったが。
((でもやっぱり・・・・・・))
「やっぱりバスケよね」
「だよな」
「だよね」
想像通りの周の言葉に、はぁ、と息をつく二人。
「あ、二人もそう?
だよね~、やっぱり秋はバスケよね~」
「お前の場合、「秋も」だけどな」
「えへへ~」
竹内の言葉に頭を掻く周。
「それにしても二人とも、「秋といえばバスケ」が出てくるとは、心構えも大分「バスケッター」に近づいたね」
(・・・・・・そうなのか?)
(・・・ある意味近づきたくないね・・・・・・)
不意に出た周の言葉に、二人は当然のようにそんなことを考えた。
そしてそんなことに気づかない周はさらに言葉を続けた。
「そーなると二人とも、バスケットに「される」覚悟も出てきたって事かな?」
「・・・・・・ゴメン、なんだって?」
聞きなれない言葉に思わず聞き返す竹内。
「だから、バスケットに「される」覚悟だってば」
「・・・・・・答えになっていないどころか日本語になってないぞ」
「え~?そんなことないって」
「いやいやいや・・・・・・、なぁ?林田?」
コイツは何を言ってるんだ?というような表情で俊介に応援を求める竹内。
そこにはため息混じりに何かを諦めたような表情の俊介がいた。
「・・・・・・残念だけど竹内君、僕からは何も言えないよ・・・・・・」
「・・・・・・どういうことだ・・・・・・?」
俊介の言葉に混乱する竹内。
そこにため息をつきながら周が口を挟む。
「しょうがないなぁ、私が説明してあげよう」
「その昔ある人が言いました。
「始末すると言うことは、始末されると覚悟してるってことですよね?」と。
そう、誰かを殺すにはその相手に殺されるかもしれないという覚悟も必要ってことなのよ」
「・・・・・・ああ、そう。
突然の物騒な話だがそれは分かる。
で、それがどうした?」
「ということは・・・・・・例えば掃除に例えると。
「ゴミを掃除すると言うことは・・・・・・、ゴミに「掃除される」かもしれないという覚悟が必要」ということなのよ!」
「・・・・・・いや、ならねぇよ」
「そして「ゴミを回収すると言うことは・・・・・・、ゴミに「回収される」かもしれないという覚悟が必要」なのよ!!」
「・・・・・・」
「そして「ご飯を食べると言うことは・・・・・・、ご飯に「食べられる」かもしれないという覚悟が必要」なのよ!!!」
「・・・・・・お前いつもそんな無駄な覚悟してたのか・・・・・・」
「ということは即ち・・・・・・、
「バスケットをするということは!バスケットに「される」かもしれないという覚悟が必要」なのよ!!!!
その覚悟を持ってこそ!人は真の「バスケッター」になれるのよ!!!!」
ババーン!!と効果音が聞こえた。
「・・・・・・頼む林田、コイツを止めてくれ・・・・・・」
「・・・・・・ゴメン、それが出来なかったから周ちゃんは今ここでこうしてるのさ・・・・・・」
それはまだ青々と茂る木々にわずかに枯葉の色が混じる季節のことであった。
周は俊介が勉強教えてるんでそこそこ成績はいいです。
ただ一般常識とは別にこういう思考回路があるのです。
ゴミを捨てるの反対語≠ゴミを拾う
ゴミを捨てるの反対語=ゴミに捨てられる、みたいな。




