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エアウォーク  作者: 隠戸海斗
第一期
34/102

第三十三話

歓声は会場のいたるところからあがっていた。

拍手を送る者、飛び跳ねて喜ぶ者、涙を流す者、今の試合について話す者。

全ての者が今の試合の結果に感動していた。


そしてその試合を演じていた6人の選手達も。


呆然と立ち尽くす滝田。

膝をつき、床に拳を立てて悔しがる竜崎。


気が抜けたのか床にへたり込み、それでも笑顔の俊介。

涙を浮かべつつも満面の笑みで俊介に飛び込んでいく周。

そんな2人に覆いかぶさるように駆け寄る麗奈。


そんな3人を笑顔で見つめる竹内。



歓声も拍手も、いつまでも止まらなかった。

大会運営側もそれを止めるのは野暮だと言わんばかりに、観客同様拍手を送り続ける。



ひとしきり喜んだ周は俊介を立ち上げさせる。

と、よろける俊介。


「・・・・・・脚、大丈夫?」

「疲れただけだと思うけど、診てもらうよ」

「そうしなよ、スポーツマンにとって脚の怪我は天敵だよ」


2人に支えられて立ち上がる俊介。

と、竹内が歩み寄ってくる。


「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」


暫し、互いに無言の時が流れたが。


「・・・・・・肩、貸すぞ?」


そう、竹内が口を開き、手を差し伸べる。

俊介が笑顔を浮かべる。

が、お礼を述べる前に周が俊介の前に立ちはだかった。


「・・・・・・?」


竹内は怪訝そうな顔をしたが、周は構わずに笑顔で竹内が差し出してきた手を握る。


「はい、握手」


そういうつもりで差し出した手じゃなかったんだけど。

なんて無粋なことは言わない。

竹内も笑顔で周の手を握り返す。


「試合、楽しかった?」


握手をしながら周はそんなことを尋ねる。

答えなど分かりきっているくせに。




「ああ、楽しかった」




「ねぇ、竹内君」

「何だ?」


握手を解くと周が竹内に話しかける。


「これからも、私たちと一緒にバスケやらない?」



全く呆れたものだ。

たった今まで競い合ってきた対戦相手にあっさりとこんな言葉をかけるとは。

多分今までの仲間もそうやって、そしてこれから増えるであろう仲間に対しても、同じように勧誘するんだろうな、こいつは。



そんなことを思い、竹内は呆れ気味にため息をつく。

そして。



「よろしくたのむ」



2人は再び握手を交わした。




「そういうわけです、2人とも」

「ああ、了解」

「うん、わかったよ」


くるっと振り返り、たった今竹内を仲間にしたことを報告する周。

当然2人はそれを聞いており、そして当然のように受け入れていた。


「改めて自己紹介しないとね」

「ああ、そうだな」


竹内は帽子のつばをスッと直すと、今度は俊介に手を伸ばす。

握手を求めて。


「悠里ヶ丘高校1年5組の竹内祥吾だ。

 どれだけ一緒に練習できるか知らんが、よろしく頼む」



と、その言葉に周と俊介が固まる。


「ん?どしたの?」


その理由が分からない麗奈は2人に声をかけるが。


「え?」

「・・・・・・え?」

「ん・・・・・・高校生だと思ってなかったか?」


2人が固まっている理由が分からない竹内は勝手にそう解釈するが。


「えと、それもそうだけど・・・・・・ねぇ」

「ねぇ・・・」


2人は顔を見合わせ、なんとなく言いづらそうにしているが、やがて周が竹内に告げた。


「えっと・・・・・・悠里ヶ丘高校1年4組の斉藤周です・・・・・・」

「・・・・・・ん?」

「同じく・・・・・・悠里ヶ丘高校1年4組の林田俊介・・・です・・・・・・」



「あんたたち隣のクラスだったの?」



そう言われて竹内も2人が驚いていた理由を理解する。

同時に自分も驚いたわけだが。


「だ、だ、だって!

 全然見かけなかったよ!こんな大きい人!

 ねぇ、しゅんくん!?」

「う、うん・・・・・・」

「体育とかは他のクラスと合同じゃないの?」

「それは3組とだし・・・・・・。

 普段見かけたとしても上級生だと思うだろうし・・・・・・」

「おいおいおい、同学年にこんな大きいのがいたら噂になるでしょ~?」


麗奈に突っ込まれつつも、2人はしどろもどろになりながら言い訳を続ける。

そのうちに竹内もポンッと手を叩く。


「そういえば同学年に髪が白くて人気のある女子がいると聞いてたが・・・・・・もしかしてお前か?」

「え!?私の事知ってたの!?それなのに知らん振り!?」

「いや、俺もこんな身長だからどちらかといえば目立つ方だし・・・・・・。

 だから他の目立つやつとかの噂は聞いてもあんまり興味なかったし・・・・・・」


なにやらしばらくの間そんな話が展開されていたのであった。




「ふむ」

「・・・・・・」


場所は変わって医務室。

いつまでも話していても仕方が無いし、俊介の脚も気になったのでそこそこのところで切り上げ、竹内の手も借りつつこうして医務室までやってきたのだった。


「ど、どうですか?僕の脚・・・・・・」

「ふむ・・・・・・」


膝を重点的に押したり叩いたり揉んだりと、触診するようなそぶりを見せる初老の医者。

が、やがて神妙そうな顔を上げてこう告げた。


「正直に言おう、君の脚だがね」

「は、はい・・・・・・」


ゴクリ、とつばを飲む一同。

そして。



「ただの疲労ですね。

 明日一日は筋肉痛になるでしょうが、その後は特に運動にも問題ないでしょう」

「「よかったぁ」」


医者の言葉に思わず声を上げる俊介と周。

麗奈と竹内も胸をなでおろす。


「日頃から鍛えているみたいですが、無茶は禁物ですよ」

「はい、ありがとうございます」


一応包帯だけ巻いてもらい、俊介たちは医務室を後にする。

と、そこにいたのは子供達だった。


「おつかれさま~、お姉ちゃん達」

「おつかれさまでした」

「お疲れ様」

「・・・お疲れ様、お姉ちゃん達」


ねぎらいの言葉をかける子供達。

そして少し後ろからボソッと「おつかれ」と声をかける恋二の姿。

皆、泣いたような跡があった。


自分達の試合を見て感動してくれた。

それが周達にも嬉しかった。

周はぐっと親指を立てて見せ。


「勝ったよ!みんな!」


そう言った。

それがきっかけで子供達は3人を囲うように抱きついた。



「周!俺・・・俺・・・」

「恋二君、仇はとったよ」


直接じゃないけどね、と付け加えるが恋二にとってはそれはどうでもいい。

約束どおり優勝してくれたことが嬉しかったのだ。


「俺!頑張るよ!

 もっと練習して、周たちみたいに強くなる!」

「うん、一緒に頑張ろうね」


周は恋二の頭を撫でてやる。

いつもは照れる恋二だが、今日は満面の笑みで受け止めていた。



「・・・俊介さん、脚・・・大丈夫ですか?」


真美が心配そうに俊介の膝に手を当てる。


「ああ、大丈夫だよ。

 明日一日じっとしてれば治るって」

「・・・・・・よかった」


その言葉に、ほっとした表情で俊介に抱きつく真美だった。



「あ、姉さん!!」

「おう、お前達」


いつの間に集まったのか、応援していた不良たちがずらりと。


「姉さん!!俺たちの応援届きましたか!!?」

「だから恥ずかしい応援止めろっていったのに・・・」


照れ笑いをする麗奈。

が。


「・・・・・・うん、嬉しかったよ、みんな」

「「「「「お、オウッす!!!!!!」」」」」


その言葉に感動したのか、麗奈を取り巻くように不良たちが集まった。


「俺感動しました!姉さん!」

「俺も感動しました!姉さん!」

「素晴らしい戦いっぷりでした!姉さん!」

「あ~も~、ホントにお前達は・・・」


そういいつつもやはり笑顔の麗奈だった。



「ってそうだ、それどころじゃないんですよ、お姉ちゃん達」

「え?何が?」


修也君の言葉に一同が静かになる。


「表彰式ですよ!表彰式!」

「あ、そうだ!優勝チームがいないからってみんなで騒いでたんだよ!」


愛奈にもそう言われ、3人は未だ表彰を受けていないことを思い出す。


「ああ、そういえば・・・」

「あぶないあぶない、このまま帰るところだった。

 てへっ♪」

「とにかく早くコートに戻って!」

「そうだよ、トロフィーとか貰ってきてよ!」



子供達と不良たちと、いつのまにか周囲にやってきていた観客達に押されつつ、3人、そして竹内はコートへと戻っていった。





第一回市内バスケットボール大会。


優勝、風見爆走連合愚連隊チーム

準優勝、トライホーンドラゴンズチーム




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