第十三話
「・・・・・・誘ってくれるのかい?
もうしばらくバスケはやってないのに・・・・・・」
「麗奈ちゃんならきっとすぐに勘を取り戻せるよ」
周は笑顔を浮かべる。
が、麗奈はどうも乗り気ではないようで、スッと顔を背けてしまった。
「・・・・・・いや、あたしはもう一度やめた人間だし・・・・・・」
「一度やめてたっていいじゃない。
練習すれば前よりもずっと上手くなれるよ」
「それはそうだろうけど・・・・・・」
先ほどまでとはうって変わって歯切れの悪い返事をする麗奈。
表情もなにやら浮かない。
「??どうしたの?何かあったの?」
周の言葉にはっとすると麗奈は小さく首を振る。
「・・・・・・こっちの話さ。
誘ってくれたのは嬉しいけど・・・・・・もうあんたと一緒にバスケは出来ないよ・・・・・・ゴメン」
そういうと麗奈は席を立ってしまった。
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
周もあわててがたっと席を立つと立ち去る麗奈の手を掴む。
「なんで?そんな事言われてもわかんないよ!
ねぇ、何があったの?」
周は必死に問いただす。
だが麗奈は周に背中を向けたままだ。
「・・・・・・人には知られたくない過去ってのがあるんだよ・・・・・・」
表情が分からないまま麗奈はそう言って、周の手を振りほどこうとする。
しかし周は離さない。
「そ、それはそうかもしれないけど・・・・・・でも・・・・・・。
じゃあ麗奈ちゃん、今・・・・・・バスケ嫌い?」
その言葉にぴくっと反応する麗奈。
そしてその反応を見逃さない周。
「バスケ好きなんでしょ?今でも。
だったらやろうよ!」
周は必死に説得する。
しかし、麗奈の意見は変わらない。
「・・・・・・ゴメン・・・・・・。
えと・・・・・・ほら、あたしとあんたじゃ、もうだいぶレベルが離れちゃってるだろうしさ。
それに、あたしにはこいつらもいるし・・・・・・」
「麗奈ちゃん・・・・・・」
麗奈はそういうと再び手を振りほどこうとする。
周は今度はあっさりと手を離した。
「・・・・・・誘ってくれたのは嬉しかったよ。
また話くらいならしてやるからさ。
だから・・・またいつでも来いよ」
麗奈はそういうと店を出ようとする。
周には引き止めることが出来なかった。
「・・・・・・納得がいきませんね」
そんな麗奈を引き止めたのは麗奈の近くに座っていたジュンだった。
麗奈は驚いたように振り返る。
「ジュン?」
「・・・俺の・・・・・・いや、俺たちの尊敬する麗奈さんは・・・・・・始めから何かを諦めてる人じゃないですよ」
そのジュンの言葉をきっかけに他の不良たちからも声が上がる。
「そうだよ、今みたいのは麗奈さんらしくない」
「そうだ。
「何事もやる前から諦めるんじゃない」って俺たちを説得してくれたのはあねさんじゃないですか!」
「そうだそうだ!」
「あねさん!俺たちの尊敬するあねさんでいてくださいよ!」
その言葉に、目に見えて動揺する麗奈。
「お前たち・・・・・・」
「麗奈ちゃん」
そんな麗奈に向けて周は再び声をかけた。
「応援に答えるのも、選手の役目だよ」
そういって手を伸ばす。
「一緒にバスケやろう?」
「あ、あたしは・・・・・・」
すっと一歩下がる麗奈。
その表情は何かに怯えているようだ。
「・・・・・・麗奈ちゃん?」
「あたしは・・・・・・そんな・・・・・・またバスケなんて・・・・・・自信ないよ・・・・・・
きっとまた・・・・・・あたしは・・・・・・あたしにはムリだよ!」
小さくだがガクガクと震えている膝を押さえつける麗奈。
今まで見たことの無いその様子に、不良たちも一体どうしたのだろうかと不安げな表情を浮かべる。
そんな麗奈に、周は優しく声をかける。
「・・・・・・何があったか分からないけど・・・・・・
イヤなら何を言われてもはっきりイヤだって言えばいい。
それが出来ないってことは、やっぱりバスケが好きなんだね、麗奈ちゃん」
「あ・・・まね・・・ぇ・・・、ムリだよ・・・あたしにはムリだよ・・・・・・バスケなんて・・・・・・」
周の目を見ながらそういい続ける麗奈。
周はそんな麗奈に言葉を続けた。
「自信が無いだけなんだね、麗奈ちゃん」
「・・・・・・え・・・・・・?」
そして、周はにこっと笑った。
「私が自信つけさせてあげるよ」
「・・・どう・・・やって・・・・・・?」
「決まってるでしょ」
麗奈の言葉に周はそう答えるとかばんからバスケットボールを取り出す。
「バスケの悩みはバスケをやって解決するっ。
近くにこの人が使ってたコートがあるの」
周はそういって俊介を指差す。
「そこで、私が自信の無い麗奈ちゃんをバスケがやりたくてたまらない麗奈ちゃんに変えてあげるんだからっ」
「そ、そんなことお前にできるのか?」
声を上げたのは赤いリーゼントの男。
それは出来なかったら承知しないと言った威圧感を含みつつも、何とかしてくれよという期待を含んでいる気がする。
それに対し笑顔とおそらく根拠の無い自信で任せなさいっと答える周。
周と中途半端だったが戦ったことのあるアキラ、ユウ、ジュンは既に「この女なら何とかしてくれるだろう」という期待を抱いている。
「さ、行こう?麗奈ちゃん」
周はそういって手を差し出す。
麗奈はしばし考えていたが、やがてその手を握った。




