第九話
「ね、明日から一緒に練習しない?」
勝負の後、周が自分の負けを認めようとしない30分の抗議の末に言いくるめられしぶしぶジュースを買って来てそれを俊介に手渡す時に、周はそう告げた。
俊介も最初は「え、僕なんかと練習しても・・・・・・」とちょっと驚いていたが、周と一緒に練習できるならと快く承諾した。
それが昨日の話。
練習の場所は周が使っていた公園、そして時間も周の時間に俊介が合わせた。
彼らしいといえば彼らしい。
そして今朝から周と俊介の合同練習が始まったわけだ。
初日となる朝だったが、練習は俊介にとって厳しい感じのものだった。
まず第一に行くまでがきつかった。
シュートは散々練習していたのだろうが走り込みが足りなかったのが原因だろう。
周がわざわざ迎えに来てくれてそれから一緒に出かけていったというのに、途中からしばしば周を待たせることになってしまっていた。
普段自転車で自分の練習場に向かっていた事に加えて遠くまで行くことになったため、というのも原因になるだろう。
肝心のバスケ自体の練習も、俊介は一休みしてからということになってしまった。
練習中も度々息が切れ最後にはフラフラになってしまったが、周は
「う~ん、もう少し体力つける事から始めないとね」
と軽く言っただけだった。
そして、これから始まるのが夕方の練習だ。
場所は当然周の公園なのだが、そこにはちょこっとだけいつもと違う空気が流れていた。
まず周、そしてその隣に俊介、そして何故か二人と向かい合う5人の子供たち。
何をしているのか。
と、周がコホンと咳払いをした。
「え~、それではこれから皆にこのお兄さんを紹介します。
はい、しゅんくん自己紹介」
と言うと、周は俊介に自己紹介を促す。
俊介はちょっとおどおどしながら周に聞いたが。
「や、やんなきゃダメかな?」
「ダメ。
自己紹介」
「・・・・・・はい」
そのやり取りを受け、しかたなく子供たちに自己紹介を始めた。
「え、えっとその、はじめまして。
あ、周ちゃんの幼馴染の林田俊介って言います。
よ、よろしく・・・・・・」
たどたどしくそう言うと軽く頭を下げた。
そんな、なんとなくしらけているように感じる空気をまったく気にせずに周は拍手をした。
「はい、よくできました~。
じゃ、みんなも自己紹介」
「「「「「え!?」」」」」
そうかと思うと今度は子供たちに自己紹介を促す。
子供たちは当然驚くが周は「初めての人と会ったら自己紹介しないとダメでしょ」と当然のことのように告げた。
子供たちは顔を見合わせつつも、仕方なく自己紹介を始める。
まずところどころに絆創膏を張っている、いかにも活発といった感じの男の子が前に出た。
「早乙女恋二、どうぞよろしく」
ぶすっとしていてどこか愛想が無い。
ちなみにかつて不良に突き飛ばされた少年である。
「えっと、園田修也です。
よろしくお願いします」
続いて自己紹介をしたのはメガネをかけた少年だ。
賢いといった印象を受けるのはひとえにそのメガネによるものだろうか。
「はいは~い、沖鮎愛奈ですっ。
よろしくお願いしま~す」
元気よく声を上げるのはショートカットの少女だ。
こちらも活発なイメージを受ける。
「仲間大紀
です。
よろしく」
次はなんとなくのんびりな雰囲気の少年だ。
背は5人の中で一番高い。
「北峰真美です・・・・・・。
えっと・・・・・・よ、よろしくお願いします・・・」
俊介同様おどおどした感じ答えるセミロングの女の子。
自己紹介も愛奈と名乗った少女の影でだった。
「はい、じゃ自己紹介は終わり~。
ちなみにみんな小学5年生だよ。
お互い仲良くするようにね」
全員の自己紹介が終わったところで周は笑顔でそういった。
そうは言われても、俊介も子供たちもなんとなく笑顔を浮かべて顔を合わせるだけだった。
「ところで今日の練習はどうしよっか?
お話で交流を深めるのもアリだよ~」
そして周は唐突に皆にそう告げた。
子供たちは互いに顔を見合わせる。
バスケをやりに来たのにといった表情の子もいれば、俊介に興味ありそうな子もいた。
と、愛奈と名乗った少女が手を挙げた。
「はいは~い、一つ質問してもいいですか~?」
「お~、愛奈ちゃんどうぞ~」
愛奈は周の許可を貰うとにま~と笑った。
「俊介さんは~もしかして~、周お姉ちゃんの彼氏・・・・・・」
「はい、じゃ練習始めようか!」
愛奈の言葉を遠慮なくぶった切り、周はバスケットボールを取り出した。
「え~!お姉ちゃんどうなの!?
俊介さんと付き合ってるの~?」
「よ~し、今日はアリウープの練習をしようか」
明らかに話題をそらしている。
表情は苦笑いだが頬がわずかに赤くなっていた。
当然といえば当然だが。
俊介の方は誰が見ても明らかに真っ赤になっていた。
「はい、じゃ俺も質問」
ふと、ぶすっと無愛想な表情を浮かべていた恋二も手を挙げた。
もっとも今は無愛想というよりも本当に機嫌が悪そうだった。
「あんた・・・・・・バスケ強いの?」
「・・・・・・!」
なんとなくではなく分かる敵意。
なにか不機嫌になることでもあったのか。
実際にあったのだが分かる人にしか分からない。
周はその質問に、俊介の近くにすたすたと近寄り、ピッと俊介を指差しながら答えた。
「見ての通り、ここに来るだけでダウン寸前です」
「!!!」
ショックを受ける俊介。
これほど自分の体力の無さを呪ったことはない。
「でもね・・・・・・」
周はそんな俊介をフォローするべく言葉を続ける。
「ロングシュートを打たせたらきっと日本一です」
「・・・・・・え・・・・・・」
思わず周に振り向く俊介と、それにウインクで答える周。
しばしポケッとしていたが、俊介は次第に喜びの笑みを浮かべた。
「ほんと~?
そんなに凄いの?」
「信じられませんね~」
が、子供たちは疑いの目を向けるばかり。
周は俊介にボールをパスすると言った。
「論より証拠、しゅんくん」
「あ、うん」
地面に書いてあるラインから判断すると俊介の立ち位置は3Pライン上。
俊介は軽くボールをつきながら向きを変え、その3Pラインの外に出るとボールを持ち直し、構える。
それに合わせて静かになる子供たち。
俊介はじっとゴールを見据えながらジャンプをし、ヒュッとボールを放った。
ボールの行方を見守る子供たち。
ボールはいつも俊介が放っている通り弧を描き、ゴールリングに吸い込まれていった。
スパッ
それと同時に子供たちから歓声が湧き上がる。
「うおっ!?」
「うわ、すっご~い!」
「きれいなフォームですね」
「・・・・・・すごい・・・・・・」
子供たちの喜びを打ち消さないようにと、こっそりほっと一息つく俊介。
周に目をやると親指をぐっと立てている。
俊介も親指をぐっと立てた。
と、一人の子供がボールを手に、俊介に近寄ってくる。
先ほど大紀と名乗った背の高い少年だ。
「?大紀君どうしたの?」
周の言葉には答えず。
「僕に
ロングシュート
教えて
下さい」
少年はのんびりと俊介にそう言った。
俊介は、えっと声を上げそうになったが押さえ込み、にこっと笑った。
「いいよ」
「あ、ずる~い」
「僕も教えてほしいです!」
「・・・私も・・・・・・教えてほしい」
わっと子供たちは駆け寄って、あっという間に俊介を囲った。
と、恋二は頬をかきながらゆっくりと近寄って、俊介にこういった。
「疑って悪かったな・・・・・・。
その・・・・・・俺にも・・・・・・教えてくれ・・・・・・」
俊介はやはりにこっと笑うと同じように答えたのだった。
それからはその流れのまま練習に入った。
練習内容はおもに俊介が指導するロングシュートだった。
うむ、感想も評価も全く無いな。
でもときどきアクセスが伸びることがあるからくじけない。




