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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第30章 帰還最終シード――死んだら全部終わります

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【第一部・完】ただいま、そして二度目のチュートリアル

帰ります。

少しだけ平和です。

そして、第一部完結です。


 白い階段が、扉になった。

 今度は仮ではない。光の縁が、コヨリの背丈に合わせて低く開く。ログルの宝石には、今まで一度も見たことのない文字が浮かんでいた。


【帰還門本起動】

【ログル同行本承認】

【拠点接続種:保存】

【消失シード記録:接続】

【帰還実行:可能】


 コヨリは、アドミニスを見た。神様はまだ膝をついている。死んではいない。けれど、ちゃんと負けた顔をしている。


「神様」

「なに、勇者ちゃん」

「次から、助けてほしいなら、助けてって言って」

「うん」

「あと、仕様書は先に出して」

「......努力する」

「努力じゃなくて提出は義務!!」

「はい、提出します」


 ベルの書類が、どこからか一枚飛んできて、アドミニスの前に落ちた。受領印欄がある。コヨリは笑いそうになり、少し泣きそうになった。


 ログルが肩に乗る。小さな重み。荷物ではない。相棒の重み。


「ログル」

「はい」

「帰るよ」

「はい」

「一緒に」

「はい。一緒にです」


 一手。

 コヨリは扉をくぐった。


 次に聞こえたのは、冷蔵庫の低い音だった。

 玄関には靴箱があり、見慣れた靴が並んでいる。廊下の床は少し冷たい。外から夕方の匂いが入り、どこかで車が通る音がした。剣も魔法も、死因ログも、青白いマス目もない。


「......帰ってきたあ!」


 声に出すと、胸の奥がようやく追いついた。コヨリは靴を脱ぐことも忘れて、その場にへたり込む。

 腕の中で、ログルが小さくなっていた。ぬいぐるみみたいな姿。でも、額の宝石はちゃんと光っている。


「ログル」

「はい」

「帰ったよ」

「はい」

「一緒に」

「......はい。一緒にです」


 しばらく平和だった。

 本当に、しばらく。


 コヨリは布団で寝た。普通のごはんを食べた。ログルは冷蔵庫を宝箱判定し、電子レンジを小型魔法炉扱いし、テレビのリモコンを未識別の杖として鑑定した。


「勇者様、この箱は食料を保持しています」

「冷蔵庫」

「開けると食料が出る宝箱です」

「家庭用品をダンジョン判定しないで」

「ただ、奥に古いプリンがあります」

「それは罠」

「はい。消費期限罠です」


 数日後。

 コヨリはランドセルを背負い、玄関のドアを開けた。朝の光が差す。普通の一日が始まる。そう思った。


 白い光が、足元に走った。


「やあ、勇者ちゃん!」

「違う」

「きみには、剣と魔法の世界へ」

「違う」

「仲間を集めて」

「集めない」

「魔王を倒して」

「倒さない」

「元の世界へ」

「今いるうううううううううううううううう!」


 ログルの宝石が、嫌な光り方をした。


【異世界シード接続】

【管理者:不明】

【世界名:未登録】

【基本ローグライクスキル:再起動】

【同行者:ログル】

【死亡回数:継続】


 コヨリは、ランドセルを背負ったまま空を見上げた。


「またローグライクで死に戻るのおおおおおおおおおおおおおおおお!?」


第一部・完


 帰った日の夜、コヨリはふと目を覚ました。

 部屋は暗い。窓の外では、車の音が遠くを流れている。机の上には、宿題とゲーム機と、ぬいぐるみみたいに丸まったログルがいる。


「ログル」

「起きています」

「寝てないの?」

「見張りです」

「ここ、ダンジョンじゃないよ」

「まだ信用していません」

「わたしも、ちょっとだけ」


 コヨリは布団の中で丸くなった。元の世界に帰っても、全部がすぐ元通りにはならない。黒狼の牙も、爆ぜ岩の熱も、アドミニスの白い部屋も、思い出せばまだ胸の奥がきゅっとする。

 でも、隣にログルがいる。


「ねえ」

「はい」

「明日、普通に起きられるかな」

「はい」

「普通に学校行って、普通に帰って、普通にごはん食べる」

「はい」

「それ、すごいね」

「はい。かなりのクリア報酬です」


 コヨリは笑って、目を閉じた。


 だからこそ、数日後の白い光には、本気で怒った。


 足元にマス目が走った瞬間、体が勝手に盤面を読んでしまう。玄関の段差、ランドセルの重さ、ログルの位置、謎の声の方向。帰ってきたはずの日常が、またダンジョンに変わる。


「ログル」

「はい。かなり嫌な数字が出ています」

「言わないで」

「死亡回数、継続です」

「言ったああああああああああ!」


 白い光の向こうで、知らない神様が明るく笑っている。

 コヨリはランドセルを背負ったまま、拳を握った。


「まず仕様書」


 次の最初の一手は、たぶんそこからだ。


 白い光に包まれる直前、コヨリは元の世界の玄関と、白い拠点の壁を同時に思い出した。どちらも帰る場所だ。片方だけではない。拠点は消えない。消えたシードの記録も、ログルの宝石も、コヨリの中の死因ログも、全部が細い糸でつながっている。


 だから、再召喚の光が来た時、コヨリはただ絶望したわけではなかった。もちろん、ものすごく怒った。かなり怒った。ランドセルを背負ったまま叫ぶくらいには怒った。


 けれど、前と違うことがある。

 隣にログルがいる。拠点接続種が残っている。アドミニスを殴った経験もある。仕様書を先に要求する知恵もある。


「勇者ちゃん、聞こえるかな?」

「まず名乗って」

「え?」

「管理者名、世界名、帰還条件、死亡時処理、同意書、全部出して」

「え、ええと」

「ログル、録音」

「はい」


 ログルの宝石が光る。次の最初の敵は、たぶん魔王ではない。説明不足だ。


 コヨリは白い光へ向かって、堂々と言った。


「初見殺しは、もう初見じゃないからね」


 終わりは、きれいな終わりではなかった。帰って、寝て、ごはんを食べて、また白い光に巻き込まれる。ひどい。かなりひどい。けれど、コヨリはもう、最初のコヨリではない。


 チュートリアル村で黒狼に噛まれた幼女勇者は、今ならまず床を見る。神様が笑えば、仕様書を要求する。宝箱があれば呼吸を疑う。未識別は飲まない。満腹度はケチりすぎない。ログルを荷物にしない。


「ログル」

「はい」

「次の世界、帰れるかな」

「分かりません」

「死ぬかな」

「可能性はあります」

「嫌だなあ」

「はい」

「でも、今回は最初から一緒だね」

「はい」


 それだけで、少しだけ違う。


 白い光が強くなる。コヨリはランドセルの肩ひもを握り直し、知らない神様へ向かって言った。


「まず説明。話はそれから」

【今回の勇者ステータス】

現在シード:帰還最終シード

死亡回数:1100回

クラス:帰還者/勇者

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション

獲得済み主要スキル:【ログルと帰る Lv.1】【主神殴打 Lv.1】【帰還最終盤面 Lv.1】【世界種保存 Lv.1】【帰還門感知 Lv.3】


【今回の新規獲得・更新】

獲得:【帰還門本起動権限】確定/獲得:【ログル同行本承認】確定/第一部最終台帳を下記に統合表示。


【第一部最終スキル台帳】

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション

主要生存系:【危険察知 Lv.4】【足元確認 Lv.5】【罠感知 Lv.4】【未識別警戒 Lv.5】【ミミック警戒 Lv.2】【満腹度管理 Lv.3】【恐怖耐性 Lv.1】【死ぬ前に一言ツッコむ Lv.2】

主要事故対策:【投擲前確認 Lv.2】【遠投の腕輪装備確認 Lv.3】【貫通先確認 Lv.3】【階段前欲張り警戒 Lv.3】【店内装備禁止 Lv.2】【モンスターハウス入口停止 Lv.2】【泥棒判定警戒 Lv.1】

主要盤面系:【総合盤面確認 Lv.4】【射線確認 Lv.3】【味方射線確認 Lv.2】【遠隔戦術 Lv.1】【間合い管理 Lv.1】【地図読み Lv.3】【ルート選択 Lv.2】【魔法安全確認 Lv.1】【属性識別 Lv.2】【魔物なでなで Lv.2】【おとも管理 Lv.1】

時・深層対策:【一フレームの神様 Lv.3】【停止時間対策 Lv.1】【時間不一致警戒 Lv.2】【三倍速警戒 Lv.1】【三倍速停止確認 Lv.1】【速度差対応 Lv.1】【深層逃走判断 Lv.2】【思考割込警戒 Lv.2】【停止解除読み Lv.1】【深層三択判断 Lv.1】

神様仕様突破:【死因学習 Lv.5】【死因ログ参照 Lv.2】【死亡ログ改ざん Lv.1】【神様報告遅延 Lv.1】【ログ差し戻し Lv.3】【死亡ログ所有権確認 Lv.2】【死亡ログ返還 Lv.1】【死亡対象上書き Lv.1】【千回死亡条件破壊 Lv.1】【仕様書要求 Lv.2】【仕様書読解 Lv.1】【管理画面警戒 Lv.1】【滅亡シード照合 Lv.1】【神様に説明を求める Lv.1】【主神殴打 Lv.1】

人物・帰還系:【シード差分確認 Lv.2】【人物レイヤー地図 Lv.1】【思い出ログ記録 Lv.1】【縁感知 Lv.1】【本物のログルを選ぶ Lv.1】【相棒同行意志 Lv.1】【相棒再分類拒否 Lv.2】【ログルと帰る Lv.1】【帰還門感知 Lv.3】【帰還接続管理 Lv.2】【帰還持ち帰り管理 Lv.1】【帰還座標仮視認 Lv.2】【帰宅線形成 Lv.3】【帰宅猶予線形成 Lv.2】【世界種保存 Lv.1】【帰還最終盤面 Lv.1】


【第一部最終拠点設備一覧】

【椅子】【死因メモ】【死因図鑑室】【鑑定机】【成功ログ棚】【反省会テーブル】

【拠点厨房】【拠点酒場】【属性検証卓】【罠訓練場】【射線訓練場】【魔物休憩所】

【シード地図室】【人物レイヤー】【思い出ログ棚】【帰還門建設予定地】【死因研究室】

【魔王相談窓口】【魔王軍資料室】【一フレーム道場】【仕様書保管棚】【管理画面の扉】

【帰還門・表九十九階】【帰還門・裏九十九階】【白紙ログ棚】【白紙ログの保管庫】【ログルの寝床】

【死亡ログ返還炉】【停止した千回カウンター(せんかいカウンター)】【帰還最終シード入口】【拠点接続種】


【登場人物紹介】

コヨリ:元の世界へ帰った幼女勇者。なお、次の召喚に即キレる。/ログル:ぬいぐるみサイズで同行成功した相棒。/アドミニス:倒されたが死亡していない主神。/謎の新管理者:第二部の不穏な入口。


【ローグライクあるある解説】

帰還成功後の再召喚フック。ローグライクではクリア後に別ダンジョン・別条件が開くことがある。第一部は帰還で完結しつつ、死亡回数継続で第二部へ。


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