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『千回死亡幼女勇者』 ――神様のクソゲー異世界だけど、拠点だけはリセットされません――  作者: 勇者ヨシ君
第19章 魔王生存ルート――倒さない魔王城

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裏制御盤を守る番人

攻撃したら魔王討伐判定。

投げたら聖剣判定。

神様の正解が、一フレームで割り込んできます。

 裏魔王城の最奥には、黒い制御盤があった。

 壁一面に古い魔法陣が刻まれ、その上から神様側の白い線が無理やり重ねられている。黒と白の線はところどころ噛み合わず、ひび割れた場所から、帰還門と同じ白い光が漏れていた。


 制御盤の前に立っていたのは、白い鎧の番人だった。片手に剣、片手に天秤。顔の部分は空洞で、中に【正しい勇者】という文字が浮かんでいる。


【討伐条件番人ジャッジメント】


「名前がもう嫌」

「勇者様、番人は魔王討伐条件を維持する役割のようです」

「維持しなくていい!」


 ジャッジメントは剣を差し出した。白い聖剣だ。受け取れば、魔王討伐行動へ予約される。見た瞬間、手が勝手に動きそうになった。勇者としての形を押しつける力がある。


 ゼルドさんが、静かに言った。


「勇者よ。受け取れば余を斬ることになる」

「分かってる。手、後ろに組んでる」

「余も少し後ろへ下がる」

「魔王様が学習してる!」

「余も死にたくはない」


 ベルさんが契約書を広げる。ログルは制御盤の文字を読み、わたしは白銀の帰還ピンを握った。狙いは番人ではない。制御盤の端にある【魔王死亡判定】を、ベルさんの契約書で上書きするための位置だ。


 投げた。


 ピンはまっすぐ飛んだ。けれど、途中で白い線が絡む。ピンの形が、細い聖剣へ変わった。


「ログル、今の!」

「投擲物の意味が書き換えられました!」


 聖剣になったピンはゼルドさんへ向かう。わたしが叫ぶより早く、白い光が走った。


【死亡ログ】

【累計死亡回数:257回】

【死因:帰還ピンを投げたら、神様判定で聖剣になった】

【評価:投擲物の意味を書き換えられました】


 二回目は、火球を敵へ撃った。火球の対象線が途中で曲がり、ゼルドさんへ向かった。


【死亡ログ】

【累計死亡回数:258回】

【死因:火球の対象を魔王に書き換えられた】

【評価:対象書き換え警戒】


 三回目は、雷がまた角に落ちた。四回目は、攻撃しない魔法まで攻撃判定にされ、五回目は反射しにくい小石が神様判定で反射した。


 六回目、わたしは投げる前に目を閉じた。普通に見ると、盤面は正しい。白銀の帰還ピン、制御盤、ベルさんの契約書、ゼルドさんの魔王印。全部、狙い通りに見える。


 でも、一瞬だけ違うものがある。

 前に雷をずらされた時、世界の端がめくれた感覚。あれを、もう一度見る。


「ログル、わたし、一フレーム見る」

「勇者様、連続使用は危険です。視界焼けの可能性があります」

「でも、見ないとまた神様に名前を貼られる」

「はい。なら、見た瞬間に目をそらしてください」

「難しい注文!」


 息を吸う。床の線、敵の剣、ゼルドさんの角、ベルさんの契約書。全部が遅くなった気がした。その中に、白い指のような線が見える。ピンへ触れる直前、名前を貼ろうとしている線だ。


「見えた。ピンが飛んでるんじゃない。神様の白い線が、ピンに聖剣って名前を貼ろうとしてる」

「勇者様、それは通常解析では見えません」

「見えた分だけ勝ち!」


 投げ先を、制御盤から少しずらす。敵でも制御盤でもない。ベルさんの契約書の端だ。


 白銀の帰還ピンが飛ぶ。白い線が追いかける。けれど、ピンは契約書の端に刺さった。聖剣にはならない。番人が動いた。遅れて、ジャッジメントの剣が振り下ろされる。


「あ」


【死亡ログ】

【累計死亡回数:263回】

【死因:書き換え前に動いたつもりが、書き換え後だった】

【評価:一フレームの後も足元確認】


 白い拠点へ戻ると、視界の端がまだ白く焼けていた。ログルが、わたしの前で落ち着かないようにしっぽを揺らす。


「勇者様、無理をしすぎです」

「でも、見えた。神様の判定線、ちゃんと見えた」

「はい。次は、見た後の一手を改善できます」


 アドミニスの窓が開く。神様はいつものように笑っているが、目の奥が少しだけ変わっていた。


「見えちゃったか」

「うん。神様の手癖」

「バルガの入れ知恵かな」

「わたしの死亡ログの成果です」

「いい返しだね。やっぱり、きみは面白い」

「わたしは面白くない。目が白い」


 アドミニスは否定しなかった。だからこそ、わたしは確信した。

 ここから先は、敵を倒すだけじゃ足りない。神様が倒したことにする一瞬まで、攻略しないといけない。


【今回の勇者ステータス】

現在領域:【裏魔王城・裏制御盤前】

領域状態:神域固定ダンジョン/討伐条件番人戦

死亡回数:263回

クラス:帰還者

一時役割:魔王護衛兼帰還者

基本スキル:【基本ローグライクスキル:一手一動ワンターン・ワンアクション


【獲得済み主要スキル】

【死因学習 Lv.3】

【足元確認 Lv.5】

【未識別警戒 Lv.5】

【総合盤面確認 Lv.2】

【遠隔戦術 Lv.1】

【魔法安全確認 Lv.1】

【帰還門感知 Lv.3】

【一フレームの神様 Lv.1】


※表示は主要スキルのみです。下位スキル、派生スキル、過去の細かい死因スキルは、統合済みまたは内部保持されています。


【今回の新規獲得・更新】

新規獲得:【対象書き換え警戒 Lv.1】

新規獲得:【攻撃しない魔法 Lv.1】

新規獲得:【当てない投擲 Lv.1】

新規獲得:【神様判定線視認 Lv.1】

更新:【一フレームの神様 Lv.1】→【一フレームの神様 Lv.2】


【登場人物紹介】

コヨリ:神様が一フレームで意味を書き換える瞬間を見た。目は焼けたが、怒りはもっと燃えた。

ログル:通常解析では見えない判定線を、コヨリの言葉から記録する。

ジャッジメント:魔王討伐条件を押しつける白い番人。武器を渡してくるタイプの厄介ボス。

アドミニス:コヨリが神様の手癖を見たことに、初めて少しだけ反応を変えた。


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