■終章「REC」
静かだった。
あまりにも。
「……」
部屋。
見慣れたはずの空間。
机。
椅子。
壁。
「……」
何も、変わっていない。
はずなのに。
「……」
違う。
確実に。
何かが、なくなっている。
「……」
大輔は、立っていた。
何もせずに。
ただ、そこに。
「……」
手を上げる。
机の角に触れる。
「……」
何も、起きない。
「……」
こめかみに指を当てる。
押す。
「……」
反応は、ない。
「……」
赤い点も。
再生も。
何も。
「……」
終わっている。
完全に。
「……」
手を下ろす。
「……」
それでいい。
「これ以上、増えへん」
「……」
そう思った。
初めて。
「……」
机の上。
スマホ。
「……」
画面をつける。
動画サイト。
自分のチャンネル。
「……」
空白。
「……」
何も、残っていない。
「……」
最初から。
なかったみたいに。
「……」
指が止まる。
「……」
少しだけ。
寂しいと思った。
だが——
「……」
それだけだった。
「……」
スマホを置く。
「……」
窓の外。
普通の世界。
人が歩いている。
車が通る。
「……」
何も知らない世界。
「……」
それでいい。
「……」
そのとき。
机の上で、音が鳴る。
——通知。
「……?」
画面を見る。
見知らぬ番号。
メッセージ。
「……」
開く。
「……」
短い文章。
『確認した』
「……」
眉が、わずかに動く。
「……」
続く。
『あなたは、見ない選択をした』
「……」
スクロール。
『適性あり』
『進めなかった人間として』
「……」
沈黙。
「……」
その意味は、わかる。
完全に。
「……」
続き。
『接触を希望する』
「……」
そこで、止まる。
「……」
しばらく。
画面を見つめる。
「……」
思い出す。
あの男。
あの機器。
あの視線。
「……」
あいつらは。
ずっと見ていた。
「……」
最初から。
最後まで。
「……」
そして今。
手を差し出している。
「……」
理由も、わかる。
「……」
壊れなかったからだ。
「……」
止めたからだ。
「……」
あれを。
「……」
指が、画面に触れる。
「……」
返信欄。
開く。
「……」
何も、打たない。
「……」
数秒。
「……」
そのまま——
画面を閉じる。
「……」
スマホを裏返す。
「……」
それで終わりだった。
「……」
もう一度、通知音。
鳴る。
「……」
見ない。
「……」
そのまま、立ち上がる。
「……」
玄関へ向かう。
「……」
靴を履く。
「……」
ドアを開ける。
「……」
外。
風。
光。
「……」
一歩、踏み出す。
「……」
足元。
道路。
電柱。
「……」
何も、見えない。
「……」
何も、感じない。
「……」
それでも。
知っている。
「……」
ここにあったことを。
「……」
そして。
もう、触れないことを。
「……」
息を吐く。
「……」
歩き出す。
「……」
ポケットの中で。
スマホが、もう一度だけ震えた。
「……」
無視する。
「……」
そのまま、歩く。
前へ。
「……」
振り返らない。
「……」
記録は終わったのか。
それとも——
「……」
どこかで。
まだ続いているのか。
「……」
誰も、知らない。
ただひとつ。
確かなことだけが、残る。
「……」
——RECは、止められた。




