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冷酷のブレイバー【連載停止中】  作者: 泥陀羅没地
第四章:森の民と魔女の呪い
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忌むべきその名は

――キィィィィンッ――


その〝骸〟が動く事は無かった…当然だ、何せ骸の名の通り死んでいるのだから…だが。


「〝ルイーナ〟…どうだ?」


そんな〝骸〟の姿であっても、不思議と俺の身体は緊迫し…その残骸の美しくも不気味な死に様に細心の注意を払い、ルイーナへ問う。


「……ただの〝死体〟じゃな、魂の抜けた〝抜け殻〟の様じゃ」


俺の問いにルイーナはそう言い、同じく魔女の骸を注視する…その言葉を聞くと、俺は漸く剣から手を離し…魔女へ近付く。


――カッ…カッ…カッ…――


魔女は胸から銀の剣に貫かれ、絶命していた…その銀の剣には真上から降り注ぐ強力な〝聖の魔力〟が直接注がれており…その強い浄化の力故に、死骸が今もその形を維持しているのだろうと、俺は考える。


(〝問題〟は――)


見る…と、同時に〝視る〟…肉体的な〝魔女の姿〟と、魔術的、精神的な〝魔女の姿〟を。


――スッ――


白い〝魔力〟が満ち溢れる…その中にある〝異物〟…浄化の魔力がソレを包み込み、腸を満たし…白に染めている…コレでは確かに、〝呪詛〟の介在する余地は無いだろう。


(〝魂〟は無い…確かに、ルイーナの言う通りだ、奴の身体からは凡そ〝生命〟の姿を認識出来無い)


何処をどう見ても、魔女は死んでいる。


――カッ――


一歩…また一歩と、魔女へ近付く…奴の姿が近付く度…改めて〝異常の無さ〟を理解する。


――カッ……カッ……――


だが、それでも拭えない疑問は有る〝賢者〟達は一体…何故、こうまでして〝この魔女〟を恐れたのか。


病的と言える程過剰に浄化されたこの聖域では、如何に高等な死霊とて簡単には身動きが取れない筈だ。


だと言うのに、その名を禁忌とするほど隠蔽した理由は何だ…思考する程に、謎は深まって行くばかりだ。


「……」


――サッ――


顔を覗き込む、その顔は冷たく閉ざされ、息はない…生命無く、冷たい鉱石の様にその身体は寡黙な死を纏っていた…この身体から、得られる者は、何も無い…少なくとも、俺達では、この魔女からは〝死んでいる〟と言う事実以外は汲み取ることが出来無い……。


「…〝これ以上〟は…幾ら掻き分けても道は見えないか…」


静寂は、俺の思考を巡る一助と成った…巡る思考は直ぐに俺の中で出揃った情報を符合させ…この道半ば、行き止まりに見えた〝この道〟の続きを進むのに、必要な〝行動〟を紡ぎ出す。


「……〝分の悪い賭け〟はしない」


考える…〝この行動〟の〝リスク〟と〝リターン〟を…十中八九〝無事〟では済まないだろう…だが。


〝パズルのピース〟がまだ足りない。


ローリスクで得られる情報は、全て得た…ならば、残る選択肢は〝茨の道〟しか無いだろう。


考えた末に、俺は〝腹を括る〟……。


「やって見る〝価値〟は……有るな」


立ち上がり、背後に居る皆へ視線を送り…俺は告げる。


「〝皆〟…〝構えろ〟」


俺がそう言うと、四人の顔が強張る…ナリアを護る様にアイリスとアンフォートは得物に手を掛け、ルイーナは俺がしようとして居る事をその〝眼〟で理解し、言葉を詰まらせる…そんな場の空気を感じ取ったヴィゴーは、退屈そうな顔から一転、鱗を逆立たせ…周囲に視線を彷徨わせる…全員が得物を構え終えるのを確認した…その後、俺は小さく息を吸い…そして。


「――〝イリーサ〟」


忌むべき魔女の、〝真名〟を紡いだ。



●○●○●○


「――〝イリーサ〟」


聖域に、レイドの声が響き渡る…その言の葉が放たれた瞬間、温かく澄んだ空気で満ちていた〝聖域〟の空気が変わり…私達に言い様のない〝悪寒〟を走らせる。


「……」


静寂が、暫く続いた…不気味な静寂が、長く、永く…余りにも永く続いた沈黙に、私達の顔に怪訝が宿る…そして。


「……何も…無い…?」


遂に口から漏れ出した、私の言葉が聖域を揺らした…その瞬間。


――ゾッ――


「ッ――ガフッ…!?」


突然、レイドはその口から血を吐き…蹲る。


「「ッ――レイド!」」


その異変に私達は思わずそう叫び、駆け出しそうに成る…しかし。


――ジッ――


血を吐き、荒い息を吐きながら私達を見るレイドの視線が、その動きを静止する。


――ズズズズッ――


それから、聖域に〝瘴気〟が流れ込む…何処からか集まり始めた瘴気は、聖域へ流れ出しながら、その瘴気を渦巻かせ…〝人の形〟を取っていく…そして。


――ドッ――


瘴気の渦から〝何かの足〟が現れたその瞬間…大地を轟く咆哮が、聖域を満たした。



○●○●○●


「――ハッ…〝ビンゴ〟…!」

(やはり、〝名前〟に呪いを込めていたか…!)


ズタズタに引き裂かれた喉を癒しながら…俺は目の前で苦悶の声を上げる〝ソレ〟を見てほくそ笑む。


何て事は無い…この可能性は読めていた。


「〝警句〟はやはり正しかったな」

(〝自身の名〟に〝呪い〟を付与したんだろう…呪いの内容は〝唱えた者への災い〟と見た…俺の喉が引き裂かれたのはソレが理由だろう)


そして、その呪いが〝詠唱者〟を殺せなかった為に、〝次の災い〟を呼んだと見た。


「分かっていたが、やはりお前は〝魔女絡み〟か…」


俺は、俺と同じく地面に膝を付き…苦悶を叫ぶ〝亡霊〟を見ながら…立ち上がる。


「〝場所の選別〟までは出来無いらしいな…出なければ〝死霊に不利な場所〟へ来る訳が無い……〝効果〟は凄まじいが、〝呪い〟自体は単純らしいな…!」


血に塗れた口を拭い、目の前の亡霊を見下ろすと…俺は荒い息を整えながら亡霊の〝顔〟を覗き込む。


「さぁ……調べさせてもらうぞ〝亡霊〟…お前が誰で、何なのか…!」


そして、俺がそう言い亡霊に手を伸ばした瞬間。


「※※※※※――」


呻いていた亡霊の身体が大きく震え…その身体から大量の瘴気が溢れ出し…周囲の瘴気が聖域の浄化を相殺する…その瞬間。


「〝AAAaaaaaa〟!!!!」


その一瞬の隙を突いて、〝亡霊〟の魔力が俺と亡霊を包み込む。


「チッ――そう簡単には行かないか」


そして、その瘴気に紛れ…亡霊が襲い掛かろうとしたその瞬間。


「〝ギャウッ!〟」


そんなウィゴーの鳴き声と共に奔った強烈な〝腹部への衝撃〟が…亡霊の爪から俺を引き剥がした。

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