冒険者系JKの実力
外した分の禊投稿を忘れてたので今します
「えいやっ!」
「おりゃ!」
目の前で槍を持った女子がネズミに槍を突き立てる。
槍を振る姿勢は俺が思っていたよりきれいなものだった。
「意外と振りなれてる?」
「実は今日までにかなり練習させてたのよ」
「ん?もしかして夏休み中とかですか」
「そうだけど。分かるの?」
「まぁ大体は」
伊達にアークでいろんな奴らに教えていない。
武器を振るったことが無い素人が、アシスト抜きでまぁ合格点までもらえるのに大体素振りを一日百回と考えると大体一月。
ゲームの中でならいくらでも無茶が利くので実際にはもっと短くも出来るがな。
その経験をもとに彼女たちを見ていると大体どれくらい練習しているかがわかる。
八月に入ってから真面目に、無理をしない範囲でキチンと練習している。
姿勢はもともと綺麗だったが、体幹がしっかりしてるからキチンと素早く攻撃出来ている。
「流石ね。冒険者を育成するゲームのトッププレイヤーなだけあるのね」
「って、何スカそれ?」
「アークオリンピアって、一部ではそう呼ばれているのでしょう?」
どうも雨宮さんは俺の事も可能な範囲で調べたらしい。
ルミの我儘でやったクエストで俺は普通に顔バレもしてるからすぐにアークオリンピアに辿り着いただろうな。
でもアークオリンピアが冒険者を育成するってのは聞いたことない。
まぁ俺も含めてトップ陣は冒険者が多いような気もするが。
10位以内でも最低でも三人。それ以外でも佐々木さんだってプレイヤーなわけだし。
ん?そう考えると間違ってはいないのか?
アークでの経験が冒険者として戦う上では活きているのは間違いない。
「それ戸村君の活躍のお陰なんですよ?」
「え、マジっすか」
「うん。テレビにも出たし余計にね?あと言い出したのはルミさんだよ」
「何してんだあのアイドルは」
この間野良の大会開いてたから参加したけど途中から観戦してたな。
忙しくしてろアイドルなんだから。
「そういや戸村って槍使えるの?」
「は?なめんな??」
「何で喧嘩腰なの戸村君・・・?」
ちなみに今日絶対に言われると思ったので槍は持ってきています。俺のポーチの中に。
まぁ支給品何で多分壊れるけどな。壊さない力加減とか今もうやるだけ無駄だし。
買い取って来たから弁償とかも無いしな!!
尚この時に浮島さんには苦笑いされた。
まぁ金払えばいいってもんじゃないわな。作るのだって時間かかるわけだし。
今日は遠島達含めて二十人くらいいるが、彼女達に一言断ってから前に出る。
大体彼女達は年上だが皆育ちが良いのかこちらに対してマイナスの感情を向けてはこない。
むしろ好意的と言うか、視線がやや危ない時もあるような気もするが・・・まぁ気のせいだろう流石に。
でも一層のネズミと戦うの何て久しぶりだ。
ここで戦ったのって一時間未満だし。滞在時間もそんなもんだ。
多分オークの方が倒してる。
「よく考えてみるとこいつらより下に行った方がいいのでは???」
「戸村君?」
「はいすみません」
俺基準で考えてはいけない(戒め)
でもあんまりここで乱獲するのもどうなんだろうか。
正直みんなちゃんと武器を使えてるからネズミと戦う意味ってない気もする。
コウモリの方は飛んでる分単純に面倒だし。
うーん。正直ゴブリンの方が色々効率は良いんじゃないかなぁ。
経験値的にも魔石的にも。
いやでも今回はお試しって考えれば別に急がなくてもいいわけで・・・うーん。
「あ、あの戸村君?」
「ん?・・・いつのまにそんな離れてるんです日坂さん」
「いやあの・・・かまれてるよ?」
「え。おお」
何か気が付いたら足元にネズミが二匹いて俺の足を噛んでいた。
だが文字通り歯ががっていない。
どうもこっそり闇夜が闇でガードしてくれていたらしい。
「よっと」
噛んでいたネズミを二匹とも蹴り上げる。
一匹を壁に投げつけて、残りの一匹を短く持った槍で串刺しにする。
その状態で槍を最初に壁に向かって投げたネズミに向けて放り投げる。
ガツンと壁に槍が突き刺さり、ついでにネズミもまとめて串刺しになった。
「はい終わり」
「いや戸村それ悪い見本だから」
「え」
「普通の冒険者はそれ出来ないと思うわよ・・・?」
背後で他の生徒たちも皆頷いている。
そんなに人間離れしたことはしてないだろまだ。
「まだ・・・?」
「てか雨宮さんはこれくらいできるでしょ」
「私普段はこれ使わないから多分無理よ」
「えー。じゃあ普段何使ってんですか?」
「大鎌だけれど」
「え、意外なチョイス」
「部長が鎌持ってる姿はカッコいいんだよ戸村君!」
「へぇー」
「おだてても何も出ないわよ桃子」
「むっ」
雨宮さんが戦える人なのは分かってたけど、まさか鎌使いだとは。
そうなると使用してるのは間違いなくドロップ装備だろう。
支給品にそんなへんてこな武器は無いし、作ってる職人もいないはずだ。
鎌を落とすモンスター・・・もしかして雨宮さん魔法持ってるな?
そうじゃないとあいつは倒せないはずだし。
「想像にお任せするわ」
「ん?何で魔法の話に?」
「鎌。それも大鎌落とすモンスターで雨宮さんが倒せそうなので一番浅い階層のモンスターの問題だな」
「もしかして戸村君。レイスの話してます?」
「そうですそうです」
「レイス?」
東京にもどっかにあったはずだ。
確か・・・
「『武器ダンジョン』に出てくるモンスターだよ遠島さん」
「武器ダンジョン?」
雨宮さん以外は皆首を傾げている。
勉強が足りないのではー?
「特殊ダンジョンはまだやってないのよ。暫く基本しか行かないでしょうし」
「まぁそれもそうですね」
「日坂さん!特殊ダンジョンって何ですか?」
「遠島さんは前に私達と行きましたよ?」
「え。もしかして食物ダンジョンのことですか?」
「はい。どこの国にもあって、一番数の多いダンジョンが通常。それ以外は特殊扱い何です」
別の言い方では亜種ダンジョンって言い方もあるな。
基本的にこの特殊ダンジョンはそのダンジョンの特徴を現した分かりやすい名前が付く。
食べ物しか手に入らないから食物ダンジョン。
スキルを無効化してくるから無効化ダンジョン。
それと同じで、武器ダンジョンは武器しか手に入らないダンジョンだ。
レイスはそこの四層モンスターでとある特徴を持っている。
それが魔法につながるのだ。
「もしかして物理攻撃無効とか?」
「正解」
「うっわ人によっては挑むことすら出来ないじゃん」
「そうでもないぞ?別のダンジョンだけど魔法攻撃の代わりになる道具が手に入るモンスター要るし」
「まぁそういうのも知らないと意味無いから、皆はちゃんと調べましょうね!」
「「「「「はーい」」」」」
何か言い感じに流れが纏まったな。流石日坂さん。
「あと知識があるとダンジョンで詰まった時の打開策になるから、情報収集の方法は知っておいた方が良いっすね」
「あら。体験談かしら?」
「俺はその辺は全部日坂さんがやってくれるので」
「出来る人に頼むのも一つの手と言うことね」
「あ、いや戸村君はその・・・」
「日坂さんシー」
真実は時に言わぬが花ってね。
実際そういうのが得意だったり、好きな人に頼むっては正しいわけだし。
一瞬で日坂さんの元まで近づいて口をふさぐ。
その時の速度でまたちょっと騒がしくなるがそこは割愛。
「部活動なら、中等部のメンバーに調べてもらうってのも手だと思いますよ」
「なるほど。活動の課題にするのね。活動に必要そうなダンジョンは纏めておけば後にも使えるし・・・」
「それもうちと共同でやるのも面白そうですね」
「そうね。まぁこれはまた今度話し合いましょうか」
「はい!」
「意外と真面目にやってんなぁ」
「頼まれたからとはいえ、やるならちゃんとやるよ」
そういう所は真面目で良いと思うよ俺は。
「それで?これからどうします?意外とみんな一層は大丈夫だと思いますけど」
「そうね・・・あなたの目から見たらどこまで戦えそうかしら」
「マジで言うなら三層は無理かと」
「あら?」
「さっき三層がーとか言ってたなかった?」
「あれは危険とか無理した場合の話だよ」
それに行くだけならって話でもある。
戦うのは俺と遠島、雨宮さんの三人だけになるだろう。
三層以降で必要なのは戦い技術もそうだが、それ以上に心構えが必要だ。
ゴブリンの見た目がいくら醜くてモンスターだからと言って、それでも人型を殺すのには案外抵抗があるもんだ。
「俺は一切無かったけどな」
「私も無かったわね」
「・・・言っておきますけど、普通は抵抗あるものだから皆さんは勘違いしちゃだめですよ?」
「私もあったタイプでしたねそういえば」
「それが普通だと思いますよ・・・というか倒せるのだってすごいんですからねゴブリンは!」
日坂さんはそういうが、今の日坂さんなら多分ゴブリン程度なら倒せるんだよなぁ。
アークで練習しているからその分ちゃんと戦いは出来るだろうし。
問題は武器を振るうための筋力が不足していることだけど、軽くて間合いの長い物なら多分問題ないかな。
「そのうち特注するか(ぼそっ」
「戸村君?」
「何でもないっすよ?」
「うーん?嫌な予感したんだけど・・・」
危ない危ないバレるところだった。
「とりあえずどうします?空気に慣れるって意味でも三層覗いときます?」
「・・・いえ。無理をする必要はないから、今日はここまでにしておきましょうか」
雨宮さんがそう言うとまぁもちろん文句が出るが、俺もそれは賛成だ。
慣れない場所で戦うってのは、相手が雑魚でも結構疲れるもんだ。
それにみんな今はそんな様子は無いが、ここにきてすぐは結構緊張していた。
その分の疲労も考えると、ここらで帰るのがベストだろう。
「手に入れた魔石交換したら帰りにカフェで一杯くらいは出来ますしね」
「動いたからカロリーもある程度は気にしなくて良いですしね!」
次の瞬間の彼女たちの動きはそれはもう早かったとさ。
やはり女子の敵はカロリーらしい。




