初めての引率
何がとは言いません。
また外しました。抑えが外れてしまったなぁ・・・
一週間後
「まさか戸村君がダンジョン部の引率係に選ばれるとは思わなかったよ」
「俺もまさかでしたけどねー。でも良かったんです?あんまりやる事無いですよ?」
「全然大丈夫!千尋ちゃんの頼みだしね。でも、分かってるよね?」
「あ、はい」
いつものダンジョンにて、俺と日坂さんは待っていた。
この日になるまで、地味に色々な所に話を通したりで結構忙しかった。
その分肉体的には良い休憩にはなったが。
最初に冒険者協会としての許可を得た。
過去に引率(肉パーティー)で問題は起きたが、あれも俺がその気を起こさなければよかった話。
なので条件として、もし特殊個体が現れても逃げることを第一に考えるようにと言われた。
もちろん相手にならない様な雑魚なら倒しても良いとは言われている。
その次に日坂さんに話をしている。
実は日坂さんの説得が一番難航すると思っていた。
前回は鎧蜘蛛の時とは比べ物にならないくらい心配させちゃったし。
当然協会からの条件はしっかり守るように言われたが。
許可が下りた理由は、さっきも日坂さんが言っていたが千尋のお陰だ。
やはり自分の弟妹がいる身としては、下の子からの頼みがどういうのか分かっているのだろう。
むしろ何か褒められたくらいだ。
「でも引率って何するの?」
「基本見てるだけっぽいっすよ」
「え?それだけで良いんだ」
「まぁ皆が勝てない様なモンスターがいたらあれですけど、そんなところまで行きませんし」
一応今回ダンジョンに来るメンバーは皆研修は終えている。
なので基本的な知識などは既に持っている。
俺がやるのは、本当に危険が無いかっていう確認と、万が一の時の備えでしかない。
「それに荷物も持たなくていいのかなー」
「あはは。そこはまぁやらせないと勘違いしちゃいますよ」
「それは・・・うーん。そうなのかな?」
「実際俺も日坂さんに甘え切りですし」
「私も大した苦労じゃ無いんだけどなぁこれ」
そんなこといえるのは貴方だけですよと、心の中で呟く。
スキルで大量に鞄の中に入れられる上に重さまでなくなるのはやっぱり強すぎる。チートだよな本当に。
あと日坂さんのスキルの恩恵って、要するに鞄を貰えるのと同義だから協会的に安売りもNGだしな。
来月あたりから本格的に売り出されるらしいし、その兼ね合いもある。
「一応研修の資料とかは浮島さんがコピーをくれたんで、念のためこれ見ときます?」
「時間があるならそうしようかなぁ。あ、でも来たね」
「お。意外と早い」
どうやら待ち人達は来たようだ。
冒険者というのは、基本的に男が多い。
女性もいるにはいるが、割合的にはどうしてもって話だ。
そんな中で、女子高生だけの集団ってのはやっぱり目立つ。
装備自体は普通だけど。何か全体的にきゃぴきゃぴした集団ってのは周囲の目を集めるものだ。
「・・・めっちゃ目立つ」
「そうだね・・・」
それでもまさか協会内の全ての視線をくぎ付けにするほどとは思わなんだ。
雨宮さんと遠島があたりを見渡している。俺を探しているようだ。
正直ちょっと行きたくないけど。
「行きますかぁ」
まぁそういう約束だしな。仕方ない。
「あ、戸村に日坂さん。おまたせ!」
「待たせたわね戸村君。そちらの方は?」
「俺のチームメンバーです」
「日坂巡です。今日はよろしくお願いします!」
「雨宮茉理です。本日は引率をお受けいただきありがとうございます」
同時に遠島もお辞儀をする。
こうしてみると、雨宮さんは前から分かっていたが遠島のお辞儀も綺麗なんだよな。
元々立ち姿とかは綺麗な方だと思ってたが、こいつも何か習い事とかしてたのか?
他の女子たちも綺麗なお辞儀だ。
それを見て日坂さんがちょっとだけ引いている。
「お嬢様だ・・・」
「まぁ学校が学校ですし」
「お嬢様もダンジョンに行く時代かぁ」
「むしろお嬢様の方が行くっぽいですけどね」
「へぇ。そうなんだ」
金持ってるからな。道楽としてはちょうど良いんだろう。
あとこれ雨宮さんとも話したけど、美容やらなにやらで余裕のある金持ちが、金だけでは手に入らない物を手に入れる為に来るって事も多い。
今回来てる女子たちだって、お小遣いでは手が届きにくい魔石が欲しくて来てる面もあるくらいだし。
でもその辺は日坂さんには分かりづらいんだろうなぁ。
今でこそ金持ってるけど、そうじゃない期間の方が長い人だし。
「まぁその辺の話はいいや。何か言った方が良い?」
「うーん。ちょっとだけ注意事項の確認とかした方がいいですかね?」
「そうね。予め言ってはあるけど、今日初めての子が多いから釘を刺す意味でもお願いしたいわ」
「なるほど」
「戸村君分かってるから私の後ろに移動しないで」
大変申し訳ないけどそういうのは俺より日坂さんの方が向いてると思うんです。
そして日坂さんもそれは分かっているので、仕方ないなーと言いながら嬉しそうな顔で説明をしにいった。
「二人はまぁいらんすよね」
「流石にね」
「油断はしないけれどね。どちらかと言うと私たちは貴方側だし」
「そらそうですわな経験者。ところで遠島。今日小鳥遊達は?」
「あー。みんな今日は用事あって来れなかったんだよ」
「あらまそら残念」
記念すべき初回探索なわけだから・・と思ったけど、遠島のチームは別に初めてもくそもないか。
さて、ここらで何で雨宮さんたちダンジョン部に遠島がいるかを話しておこう。
先週遠島達と話した内容。
そこで俺が言った、他の学校のダンジョン部と協力しないかという話。
実はあの後、本当に放課後話し合いが行われ、あっという間に雨宮さんまで話が伝わったのだ。俺と千尋経由で。
本来ならば学校全体を巻き込んで大掛かりになる話なのだが、今回はお試しの段階。
なのでまだ遠島たちがダンジョン部を作ったわけではない。
それでもうちの教員たちの感触的には随分といい感じに話がまとまりそうではあるらしい。
雨宮さんの学校の方がそんな簡単に話が進むものなのかという疑問はある。
でもそれは問題ない。主に俺のせい・・・お陰か。
「でも本当に協会に連絡するんですねあの学校」
「まぁうちは色々あるからね。その後の対応も含めて本当にあなたには謝らなきゃいけないわ」
「え?何かあったんですか?」
「彼が信用ならないって、うちの教員たちが一瞬騒いだのよ」
「・・・まぁ戸村一年生だしそらそうだよね」
「それな」
これは後で気が付いたんだが、引率って言って高校一年生ですーって言った場合普通許可下りるかって話。
実際雨宮さんの学校では一度却下された。
在校生の兄と言うことで身分的には分かり切っており問題は無いが、ダンジョンで生徒を預けることは出来ないと。
まぁ当然の話だ。
俺がどれだけ強くても所詮は高校一年生。
しかも冒険者歴半年。これじゃあ冒険者としての信頼何てあるわけがない。
流れが変わったのは、教員の一人が俺の確認を取る為に協会に電話した時。その場には雨宮さんもいた。
最初に出たのは俺も知らない別の協会員の人だったが、俺の名前が出た瞬間に急に雰囲気が変わったらしい。
電話を掛けていた先生が、向こうの急な変化に戸惑ったくらいだそうだ。
すぐに電話の相手は変わり、そこで出てきたのは浮島さん。
俺達の専属対応員だから当然だな。
実は前もって俺から浮島さんに伝えてはいたので、既にあちらでは対応が決まってたりもしたのだが。
まず学校側が事情を話して、俺が本当に三十層到達者なのかも含めての問い合わせが行われる。
そしてそれら全部に協会が答えた後、浮島さんのとある一言で学校側の態度は一変した。
「必要でしたら、協会長から推薦状も出してもらえます」
この一言で、学校側が俺が一体どんな人物なのか理解した。
冒険者協会の中でもトップクラスの冒険者。
年齢の若さや冒険者歴の浅さはあるが、彼が相応しくないなら他に相応しい人間などいないのだと。
学校側としても、世間の流れを鑑みてダンジョン部の設立を認めた以上、その活動に対してサポートはしなければいけない。
それにダンジョン部の部員は学校に多大な寄付を行っている親御さんを持つ生徒が非常に多い。
冒険者協会の保証がある人物が在校生の身内で、さらに協会の保証アリ。
そんな人物を断った場合。学校側がダンジョン部に対して別の人員を紹介するなりしなければいけない。
だが俺を認めればすぐにでもダンジョンに行けるのに、それを年齢が若いというだけで断って延期させるのは問題になる。
紹介するにしてもすぐに人が集められるわけでもない。
そもそも俺以上に相応しい人物・・・三十層以上の到達者で、成人の冒険者。
まずもって、そんな冒険者は今回の引率を受けてくれない。
だってそんな連中は大体プロの冒険者で、スポンサーからの依頼で手いっぱいだから。
つまりはまぁそういうことだ。
「まぁ別に気にしては無いんですけどね」
「実力主義の冒険者に対して、年齢を理由に挙げてる時点で失礼よ」
「雨宮さんって結構過激ですよね」
「え?そうかしら」
過激ってか、きっぱりしてるタイプなんだな。
ここではそういう決まりだから従う。
でも別の所では違うから、そちらの決まりに従う。
切り替えが非常にうまいタイプだ。
「終わりましたよー」
「ありがとうございます。ではみんな、それぞれ注意するのよ」
「「「「「はい!!」」」」」
うーむ。いい返事だ。
「・・・そういえば今日ナンパされなかったな」
「は?お前普段ナンパされんの?」
「結構されるよ。雨宮さんもそうじゃないんですか?」
「そうね。結構無駄に話しかけられることは多いわ」
「うっわ辛辣」
冒険者になってダンジョンに来てまでやることがナンパってそいつら暇なのか?
さっさとダンジョン潜って金稼いだ方がモテると思うんだが。
「今日なんてこんなにいるのに」
「こんなにいるからじゃね?人多いと話しかけづらいだろ」
「あー。言われてみればその通りかも。四人だと結構来るから」
「あら。遠島さんは普段四人組なのね」
「はい!雨宮さんは?」
「私は基本一人ね。偶に幼馴染が来るくらいかしら」
「えぇ!?一人!!??」
「戸村君戸村君」
「何です日坂さん」
「何でナンパ来ないか分かる?」
「え?嫌全然・・・日坂さん分かるんですか?」
「うん。だって戸村君のお陰だし」
「???」
戸村は闇夜の力も含めて割と今とんでもない物を持っている。
でも自覚していないのだが、それが無意識のうちに圧として垂れ流しになっていることを。
戸村自体に慣れている日坂と遠島。
元がそれなりに強い雨宮。
初ダンジョンでウキウキなその他女子生徒も気が付いていない。
だが周りから彼らを見ている冒険者たちは、常に背中に刃を突き立てられているかのような恐怖に襲われていた。
これに戸村宗次が気が付くのは、もうしばらく後のことになる。




