オフ会会場(ダンジョン)
マナから誘いを受けた翌日
「うーん。でも大丈夫なんですか?ゲームでしか会ったことない人とダンジョンって」
「まぁそれなりに付き合いは長いし、他の知り合いは会ってるんで一応は?」
「微妙だなぁ」
ダンジョン内での冒険者同士のトラブルは実は起きている。
一応冒険者には義務として小型カメラの装着が義務付けられてはいる。
だからトラブルが起きても、絶対にそれはバレる。
仮にカメラを紛失したり、破損させたりした場合には多額の賠償金が掛かる。
それがわざとだと知られた場合には最悪冒険者資格の失効もありうる。
それ以外にも重い罰が下ることもあるのだが、それでもトラブルは絶えない。
だからダンジョンに行く場合は基本的に親しくて信頼できる人間とのみ向かうべきなのだ。
その点で言うと、マナは非常に微妙である。
ゲーム内の付き合いはそれこそ年単位だが、現実で会ったことは一度としてないからだ。
他のプレイヤー連中とは何度かオフ会してるから、逆に珍しい話ではあるんだが。
まぁお互いの予定が合わなかったりが続いてネタ化して、面白がって結局そのままっていう流れだ。
でも他のプレイヤー・・・それこそ扇雀とかはマナと会ってる。
俺も扇雀には会ったことがある。
そういう所から見ると、信頼しても良いような気はしている。
というか、マナに何か騙されるとかされたらそれこそ人間不信になりそう。
「あのロリ嘘とかつけないタイプだからまぁ」
「どんな人なのか逆に気になってくる話だね・・・」
「誰がロリですか誰が」
「お前に決まってるだろマ・・・ナァ・・・?」
「はい。マナさんですよ蒼君❤」
「おぇ」
「初対面での反応じゃないだろそれは」
いけないついゲームのノリで反応してしまった。
背後から俺と日坂さんに話しかけてきた女性。そう、女性だ。
見てわかるくらい。大人の女性。女性なんですよ!!
大事なことだから何回でも言うが、俺達の後ろで、マナの声で話しかけてきたのは女性だった。
いやでもちょっとゲームのマナより大人っぽい感じの声か?
え、もしかしてなりすましとか・・・?
「扇雀の好きな酒は?」
「鬼殺し」
「本物のようだな・・・」
「どんな確認方法なの・・・?」
「と言うか私今偽物だと思われてました?」
「うん。だって大人だし」
「ひどくない?というか蒼には前に成人だって話した気が」
「ん?・・・んー?そうだっけ?」
一番最初に出会った時は未成年だったってことしか知らないけどそうだったか?
いかん。マナと話してる時って大体頭空っぽだから細かい会話とか覚えてないぞ。
でも扇雀の好きな酒を即答できる辺り本物だろうな。
改めて、マナを見てみる。
さっきも言ったけどやはり一目でわかる大人の女性。
戦闘スタイル的に魔法を使うからか身軽な格好で杖を持っている。
その杖自体にも見覚えがあるが、それより目立つのはローブを羽織っていることか。
このくそ暑い時期に何着てんだこいつは。
「私を観察するのは良いんですけど、そちらの人の紹介をしてほしいんですけども?」
「おっとそうだったな。こちら俺とチーム組んでる日坂巡さん」
「よ、よろしくお願いします」
「七瀬那奈です。こちらこそよろしくお願いします」
「俺の名前も言っとく?」
「蒼の名前は知ってるんで別に・・・」
「えぇ・・・」
そういや何故かこいつ俺の名前知ってるんだよな。
何でか知らんが俺もこいつの名前知ってたけど。
「いや本当にお二人はどんな関係なんですか・・・?」
「「・・・初対面です」」
「絶対うそだぁ」
昔から妙に気が合うのは認めましょう。
「ってあれ。お前チームメイトは?」
「今日はいませんよ。うちは結構自由なので」
「へぇ。魔法使いなのに大変そうだけど」
「慣れればそうでもないですよ。まぁ前衛がいた方が楽なのは否定しませんけど」
マナのチームは冒険者登録が始まってすぐに、友人のみで組まれたチームだそうだ。
行動方針は『興味の赴くままに』
だからこそチームメンバーは自分がそれぞれ興味を惹かれたダンジョンへ、気が向いた時に赴く。
その時々で手が空いてるメンバーに声を掛けて一緒に行くことがほとんどだそうだ。
でも今回はマナ個人が俺に用事があるって形なので、特に誰かに声は掛けてこなかったらしい。
しかしそれだと一つ疑問が出てくる。
「お前プロだったよな?それでも大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ。そもそもお父さんの会社ですし」
「へぇ~・・・ん?何かとんでもない事言ったな?」
「あれ?話したこと無かったですっけ?」
今こいつ、自分の父親の会社って言ったよな?
うん???というか待てよ。こいつの苗字・・・『七瀬』だよな?
「ち、ちなみに会社の名前は?」
「・・・へぇ。気になります?」
俺が聞くと、にやにやと答えを言うのを渋り始めるマナ。
この反応の時点でもはや答えを言っているようなものだが・・・
というかそれなら色々辻褄があう。
こいつが何で俺が通ってるダンジョンがどこなのか知っていたかとかな。
そして日坂さんも、話には入ってこなかったが何となく察したらしい。
「も、もしかして七瀬さんって・・・あの七瀬さん?」
「そうですねー。お二人のスポンサー企業である『七瀬スポーツ』。これはうちの会社ですねー」
「・・・」
「うわぁ」
「・・・」
「あ、あれ?蒼はともかく日坂さんは」
「えぇぇぇぇぇぇぇ!!!???」
「うぇっぷ耳が!?」
「何してんだ」
固まった日坂さんに近寄ったマナに襲い掛かる日坂さんの絶叫。
それはそれは協会内で非常に目立ちましたとさ。
ちょっと目立ちすぎてしまったのでそそくさとダンジョン内へ移動した。
ゆっくりと十層あたりを歩きながら話の続きをすることに。
「ま、まさか戸村君の知り合いがスポンサー企業のお嬢様だったなんて」
「色々それだと納得がいくけどな。お前に研修の時の話とかしてたし」
「ふっふっふ。お陰でわが社のダンジョン部門の売り上げはウナギ登りですよ」
俺が七瀬スポーツからスカウトを受けた時の話を覚えているだろうか。
あの時来た人、大町さんは俺が特殊個体の鬼と研修時に戦ったのを知っていた。
本来ならばこれはありえないことだ。協会内で情報が漏れないようにされていたはずのそれを知っているはずがない。
でも俺はマナにその話をしてしまっていた。
正確に言うとその話をしたのはアーサー相手なのだが、多分マナもどっからか聞いてたんだろう。
話に加わった時にも言ってはいけない部分以外を話してはいたから、そこから気になって調べた可能性もあるか。
そこから七瀬スポーツが俺に目を付けて、スカウトの流れが出来た。
そう考えると何で俺の事を知っていたかに関して説明がつく。
「俺の事スカウトしてくれー的な事頼んだりしてないだろうな」
「流石にしてないですよ。そもそも研修云々の話しただけであっという間に進んじゃいましたし」
「ならいいけど」
俺の個人情報やらを知っていたのも、自分の父親の会社がスポンサーをしていたから。
更に言うと自分もプロとして活動している関係もあって俺の事を知る機会はあったのだろう。
・・・そう考えると、俺は七瀬スポーツの他の冒険者について全然知らないな。
「ちなみに蒼がうちの冒険者部門に関して全く知らないのは分かってるので」
「・・・日坂さん」
「あははは・・・まぁ代わりに私が知ってるので」
「蒼ってこの方いなかったら何もできないのでは?」
「比較的否定出来ないんだよね」
「い、いやそこまでは」
戦うしか脳が無い筋肉野郎でごめんなさい。
これからもよろしくお願いします。
「ちなみに俺の契約が緩かったのって?」
「あ、それは助言しましたね。放置しても勝手に大成するって教えたので」
「それはそれでどうなんだ」
いやその方が都合が良かったのは否定しないけど。
ちなみにだが、道中で出会うモンスターは全部俺が倒している。
近寄ってきた瞬間に魔法爪を伸ばして串刺しにするだけで倒せるので楽だ。
これはマナが自分の魔法を見せるにあたって、まずは俺の魔法が見たいというからしている。
流石にこの辺のモンスターを独占はしないさ。二重の意味合いで経験値が美味しくないし。
「ふむ。それにしてもかなーり自由度が高いというか、本当に何でもありですねその魔法」
「お前から見てもそう思う?」
「ええ。自分の意思一つで操作してますよね?」
「そうだな」
「まずその時点で色々おかしいんですけど。まぁ自由に動くのは分かりました」
あと俺の魔法のおかしい点はもう一つある。
それは冒険者カードの魔法欄に名前が載っていないことだ。
これは恐らく、あくまでも鎧に付属した力だからというそれっぽい理由付けが協会によってされている。
俺の力ではなく、鎧の。もっというとあのモンスターの力。
それが俺自身の身に着いたわけではないからこそ、冒険者カードには載らないのだと。
その割には俺が滅茶苦茶普通に、自由に使いこなすのでどうなってんだと別の謎が生まれているが。
「あのー?」
「はい?なんですか日坂さん」
「えーっと。私の勘違いじゃなければなんですけど、七瀬さんの杖ってもしかして」
「あ、わかりました?」
「ん?何か見覚えあるなとは思ったけど、何かあるのか?」
「一応蒼も気が付いてはいたんですね。これ、豊宝竜の木の杖ですよ」
ああなるほど。道理で見覚えがあると思った。
何となく違和感というか、一度見た覚えがある何かがあると思ったんだ。
具体的に何に見覚えがあるかと言われると言葉に困っちゃうんだけど・・・見た瞬間に心に違和感が生まれる的な感じだ。
「それは多分豊宝竜の魔力の流れとか、性質とかを蒼が覚えていたからですね」
「へぇ。そういうのもあるのか」
「まぁ魔法媒体になる様なドロップ品だけですけど。でも、日坂さんはよくわかりましたね」
「うん?分かる物なんじゃないのか?」
今まさに魔力の流れとか言ってたじゃないか。
それなら一応冒険者なんだから日坂さんだってわかっても不思議じゃないと思うのだが。
「それは魔法を持っていればの話ですよ」
「どういうこと?」
「魔法を持っていない冒険者は、よほど才能が無いと魔力を捉える事は出来ませんから」
「あー。言われてみれば俺もそうだったかも・・・じゃあなんで日坂さんは分かったんです?」
「え?木目とか見て、似てるなーって」
「うん???」
「えぇ・・・」
「え、あれ?もしかして私引かれてる?」
いやその・・・どんな観察眼なんです???
この章は比較的短い




