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電脳狂戦士 現代ダンジョンに挑む  作者: saikasyuu
電脳狂戦士 クエストを受ける
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出会いと人を見る目

「うぃーっす。本日稼ぎ・・・え、何この空気」

「なんでもないよ~」


にへっと、花が咲いたかのようなミホの笑顔。

大して他のスタッフの人の顔は何かにおびえているみたいで。

あ、でも日坂さんは違うな。なんというか、微妙に納得出来てない感じ?


もしかして、俺の戦い方にスタッフがビビって、日坂さんはそれに不満を覚えてる?


「あー。俺の戦い方結構やばかったすかね?」

「うんうん~私はとっても良いと思ったよ~」

「あらそ。まぁお前に言われてもなぁ」

「えぇ~ひどーい」


いやお前今まで何回俺の戦い見てるよっていう。

大規模イベントの公式司会者だけじゃんくて、時々プレイヤーが開く非公式大会にも顔出すし。

それに現実よりゲームの方が戦い的には過激だしな。

今更能力で劣っている現実の俺の戦い何て見ても何も思わないだろうよ。


「そんなことないよぉ~ふひひ」

「変な笑いでてんぞ。てかさっさととどめ刺してくれ」

「はーい」

「日坂さんも数体お願いしますね」

「あ、うん」


流石に全部を生きたまま残すことは出来ないから十体くらい殺さないであとは全部やった。

手足を切り落とせば抵抗も出来ないしな。まぁ時間が経つと勝手に死んじゃうんだけど。


日坂さんとミホがそれぞれ手近なトロールピッグにとどめを刺していく。

日坂さんは結構苦戦しているが、ミホは逆にさっくりやってる。というかザクザクやってる。

そんなにやる意味ないんやで。


まぁ目的は倒す事ではない。倒した後、ドロップ品で狙いの物が出るかどうか・・・


「出たー!」

「うっそだろ!?」


ミホが一発で出しましたどうなってんだ。

結構なサイズの肉の塊が掲げられている。


「どんな運してんだお前・・・」

「えへへ~・・・あ、また出た」

「おかしいよお前」


俺があんだけ倒して全く出なかったのに一気に二ブロック出しやがった。

こいつそんなに運良いのか。素直にうらやましいな。


こちとら結構な時間ダンジョン潜ってんのにあんまり良い物出ないというのに。

武器とか武器とか・・・いやマジで武器欲しいんだよな今。


鎧蜘蛛と戦った際に壊れた斧。

初めてダンジョンに行って戦った鬼の特殊個体の持っていた斧。

装備の性能としては、弱体化していたとはいえそれなりに良い物だった。

だけど十七層のモンスター相手にするには足らなかった。


そこで武器を失って以降、俺は武器を持っていない。

使っているのは佐々木さんから貰った装備『赫爪』だけだ。

鎧蜘蛛を容易く貫き、切り裂く切れ味。

一撃を受け止めても、俺の体にダメージが残らないレベルの防御力。

正直いって、めっちゃ気に入っている。これだけで十分じゃね?と思うくらいには。


でもやっぱり武器はあった方が良い。

赫爪の性質上、間合いは伸ばせるがある程度の距離まで伸ばすと無理が出てくる。

あと斬撃しか出来ないので、打撃攻撃とかも出来る武器が欲しい。

利用で言うなら・・・戟になるのかな?


「戸村くーん」

「はいはい日坂さん。どうかしました?」

「私も出ましたよー」

「どうして・・・」


こうも立て続けに出てくると俺が悪いような気がしてきた。

俺の運ってカスなのでは???いやカスだな。


なにはともあれ、俺達は肉を手に入れた。

正直三ブロックもいらないが、まぁ売るなりなんなり出来るから無駄にはならない。

それに他の料理でも多少なり使うだろうから、ある程度余裕はあった方がいいよな。


お次は九層。さらに下層へ降りる。

とはいってもここのダンジョンは基本どこの階層でも他とあまり変わらない。

モンスターと生えてる植物が変わるくらいだからな。


「九層は・・・野菜っすか」

「そうだね。戸村君は・・・好き嫌いなさそうだね」

「ないっすねー」


したら千尋にぶっとばされるからなハハハ。

でもリアは結構好き嫌いが激しい。

苦いのが苦手で甘い物好きの子供舌。見た目は大人っぽいのにねぇ。

まぁこれで揶揄うと機嫌悪くなって面倒だから言わないんだが。


「日坂さんは・・・是非とも苦い物が苦手であってほしいんですけど」

「どういう要望なのそれは・・・?」


ちなみに日坂さんも特に好き嫌いは無いらしい。

苦労したからこそ、そういうのは無くしたそうだ。


「私も無いよ!」

「・・・・・・えぇ」

「予想外の反応!?」


絶対あるだろお前は。いやむしろあれよ。

マシュマロしか食べれないのーとか言ってろよ。


「ああ。でもないだけで偏食だろ」

「・・・ソンナコトナイヨ」

「どうですプロデューサーさん」

「アイスばっかりですね・・・」

「はっは」

「むきー!」


さて九層へ到着した。相変わらず階段が近くてありがたいことだ。


九層も五層と変わらず平原。

出てくるモンスターはキャロラビット。

このダンジョンに生えている人参を掘り起こしては食べてを繰り返すモンスター。

何より特徴的なのは人間を見ると逃げることだ。

全く戦えないわけではなく、むしろトロールピッグより強い。

だけど何故か逃げていく。戦いたいなら頑張って追いかけるしかない。


「まぁここは安全だから適当で」

「は~い」


逆を言うと、追いかけなければ戦いにならない。襲われないということ。

実のところ今回の企画で最も時間を割くのはこの階層だ。

今までは割と雑・・・というか、その場の思い付きで行動していたがここだけはしっかりと台本がある。


なので俺と日坂さんは結構暇になる。

ミホな台本と撮影スタッフたちは台本に沿った撮影が必要なので忙しそうだが。


「つってもウサギ追いかける気にもならないんですよねぇ」

「だよねぇ」


だけど暇つぶしの手段が無い。

ウサギはトロールピッグより強いがそれでも俺基準だと弱い。

態々戦いに行こうなんて思わないくらいの強さしかないから経験値的にも美味しくない。

つまり戦いで時間を潰すことが出来ないということ。


「俺達も野菜取ります?」

「うーん。そうだね。みんなにも食べさせてあげたいし」

「じゃあそうしましょっか」


ミホたちから少し離れた所で俺達も収穫をすることに。

ここの階層には様々な野菜が生えている。

階層ごとで微妙に生えている種類が違うから何でもあるわけじゃないけど。


九層ではキャロラビットがいるから人参、ジャガイモ、玉ねぎ、ナス、トマトなどがある。

何となく聞いて分かったと思うだろうが、ここは別名カレー層とも呼ばれている。


「今日は肉じゃがにしようかな」

「いいですね。最近食べてないや」

「そうなの?・・・じゃあ、作ってあげようか?」

「え?良いんですか?」

「うん!千尋ちゃんが大丈夫ならだけど」

「あいつ別に飯作ることに命かけてないんで大丈夫ですよ・・・」


どちらかというと俺とリアが全く出来ないからやってる面が強い。

まぁ嫌いではなくどちらかと言えば好きではあるからやってくれてるんだろうけども。


でも日坂さんが作ってくれるなら、もうちょい気合入れて収穫するとしましょう。


「・・・」

「・・・」


お互い無言で野菜を引き抜いていく。

日坂さんは小さいのを狙って、俺は大物を狙う。


腰に入れて一気にツタを引っ張ると大量の芋が姿を現す。


「え、何故サツマイモ」

「ジャガイモだけじゃなかったのかここ・・・」


まぁ肉じゃがに使わなさそうな物だったけど。

ミホの様子はどうだ?


「ふんむ~」

「やってんねぇ」

「ミホさん結構力あるんだね」

「まぁアイドルってことで運動はしてるでしょうし」


その割には何と言うか、不相応な筋肉があるような気がしないでもないんだが。

何というか、あれはレッスンをしていれば付くような筋肉じゃないような。

でも流石にその辺りは専門外だからなぁ。正直実はレッスンで身に付くんですって言われても納得すると思う。


「戸村君は」

「はい?」

「ミホさんの事、どう思ってるの?」

「どうって・・・?」

「ああいや。付き合い長いみたいだから、どんな印象なのかなーって」

「うーん・・・時々俺を見る目がヤバいなぁとは思いますね」

「え」

「ん?何かあいつ言ってました?」

「し、知ってるの?」

「あー。まぁ別にあいつだけじゃないんで」


周りが俺を見る目。

その中でも戦ってる時の俺を見る目が明らかにヤバい奴らは一定数存在している。

変な目で見られていると気が付いたのと、それが畏怖や軽蔑などといった感情とは別物であると気が付いたのは別の時だったが。


「ムサシも・・・ああ、俺の目標の敵の周りにも同じような取り巻きがいるんですよ」

「そうなの?」

「まぁ見てる対象は違うみたいですけど」


ムサシを見ている連中は、ムサシの強さを見ていて、それに脳を焼かれている。

対して俺を見ている連中の目は、俺の戦い自体を見ている。

そこは同じ様で大きく違っている。何かあれば同じになってしまうにも関わらず。


そんな者達の中でも、ミホの俺を見る目は特異的だと言える。


「まぁそれが何かって具体的なことは言えないんですけどね。ハハハ」


ここは人生経験なんだろうなぁ。

俺を見るあの目を、俺は自分の言葉で表現できない。


だけどそれはそれで問題ない。なんせあいつが俺に何かするわけじゃないから。


「もちろん最初は警戒してましたよ?最初に会ったのってあいつがアイドルになる前ですし」

「えぇ!?」

「ん?それは聞いてないんです?」

「え、あの・・・ど、どういう出会いで!?」

「ああいや。単純にアークで遊んでたらファンですーってあっちが来ただけですよ」


まだサービス開始してすぐとかの話だ。

でもそれからすぐにあいつはアイドルになった。

何があったのか知らないけど、最初に出会った時とアイドルとして出会った時のあいつは大分様変わりしていたが。


「まぁアイドルやるってくらいですから。きっと大きな出会いとかあったんでしょうねー」

「・・・あー。うん」


渋谷とかでプロデューサーさんにスカウトとかされたに違いない。

あれだ。アイドルに興味はありませんか的な。


「ってあいつ。何でこっち見てんだ?」

「あ・・・」


ミホがこちらを見ている。というか睨んでいる?まぁ遠いからな。

日坂さんは何故かそんなミホを見て首をものすごい勢いで横に振っている。


「何かありました?」

「な、なななな何でもありませんにょ!!!???」

「いやそれ絶対何かある奴・・・」


何なんだ一体・・・?

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