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電脳狂戦士 現代ダンジョンに挑む  作者: saikasyuu
電脳狂戦士 クエストを受ける
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ありのままの偶像

「うひゃ~大きい~」

「なんで近づく!?」


とことこと巨大な豚・・・トロールピッグに近づいていくミホを飛び越え、上から爪で豚を切り刻む。


「あ~いなくなっちゃった」

「オマエ ムボウビ キケン」

「戸村君またカタコトに・・・」


五層についたとたん、偶然近くにトロールピッグがいた。

それは良いんだが、ミホがそれに近づこうと行ってしまったからもう大変。

それが一回だけならいいんだが、何回も同じことをしてくれやがる。

何というか・・・こいつに危機感とかはないんだろうか。


「お前ダンジョン潜ったことって・・・」

「あるよ~?」

「あるのにどうして・・・」


ちゃんと研修まで受けて冒険者カードも持っているそうだ。

なのにどうしてこんなにも無警戒なのか。

これワンチャンどっかで死にかねないぞ。


え、だから普通のダンジョンには行かせてない?

流石っすねプロデューサーさん。


もはや頭が下がっているのがデフォルトになりつつあるプロデューサーさん。

何か普通にかわいそうになってきた。


「お前もうちょいプロデューサーさん大事にしろよ」

「???」

「あらやだこの子何も分かってない」

「私変なことはしてないー?」

「炎上しねぇかなこいつ・・・え?定期的にしてる?どうなってんだマジで」

「アイドル・・・アイドル?」


日坂さんの中のアイドル像がえらいことになってそうだ。

今すぐにルミに会わせないといけない気がする。


でも近くにいないっぽいので無理っていう。

そして俺達も俺達で時間が掛かっている。

理由は目的の肉が手に入らないからだ。


「んで?今回何でした?」

「うーん。多分ダメかなぁ」

「マジっすか」

「かったろーす。かったろーす」


そう。トロールピッグから欲しい肉の部位が手に入らないのだ。

狙っているのは肩ロース。どうも酢豚にはここが良く使われているんだとか。

番組の一企画とはいえ、ミホもミホなりに本気(?)ではある。なので食材に妥協はしたくない。

なので豚肉なら何でもいいというわけではないのだ。

しかも塊肉かどうかもランダムなのでそこも厳選しないといけない。


でもこれが結構手に入らない。

さっきからバラ肉ばっかりだ。


「やっぱり高いからかなぁ」

「高額な部位は出にくいんでしたっけ?」

「うん。牛だとシャトーブリアンとかあるみたいだけど・・・全然出てこないみたいだし」

「くーろげーわぎゅうー」

「いるわけなくない???」


マイクを付けているのはミホだけなので、基本俺と日坂さんの会話はカメラには入らない。

でもミホが近づけば入ってしまうので近くで歌わないでいただきたい。

俺達今番組とか関係なしでマジの話してるから。


いやまぁ全然出ない当たり俺の運の問題な気もするからそこはすまんけど。


「・・・いっそ日坂さんとどめだけやってみます?」

「えー?変わるのかな?私それは結構懐疑的だよ?」

「物は試しってことで」

「はい!はい!!」

「・・・あと空気を入れ替えるって意味でも」

「はい!!!」

「・・・」

「と、戸村君?テレビだから返事くらい・・・ね?」


倒す人が変われば出るんじゃないか説。

これはガチャで十連ボタン押すのを他の人に頼むのと同じあれだ。

他の冒険者も結構やってることらしく、普通にネットに書かれている。もちろん眉唾物だけど。


でもその話をした途端、というかとどめを任せるってあたりでミホがうるさくなった。

何を言いたいのか分かる分すげぇ返事したくない。

しかししかし、日坂さんの言う通りここも一応収録はされている。

使われるかは分からないが、撮られているのは間違いない。


「・・・やりたいのか」

「私!やる!!」

「見たことねぇくらいのハイテンションだなおい」


未だかつてこんなに奮起したミホを見たことがあるだろうか。いや、無い。

まぁやる気があるんなら良いのか?

相手の抵抗力全部奪えば問題ないわけだし。


こいつだって冒険者登録自体は出来てるんだから、最低限は動けると見ていいし。


「ああいや。ダンスしてる分日坂さんより上か?」

「そこで比べないで・・・」

「あ、すみませんつい」

「うぅ・・・やっぱり私もレベル上げた方が良いかなぁ」

「まぁ最低限は欲しいっすよね。隠れるにも必要でしょうし」


そのうちただ隠れるんじゃなくて遠くに逃げる必要だって出てくるだろう。

そうなったら必要になるのは絶対的な能力値だ。

その為にもぜひレベルは上げておいてもらいたい。


「ほら、ここなら余裕でしょうし・・・ね?」

「うーん。じゃあやろうかなぁ」

「よっし」


正直ここの敵いくら倒しても鎧蜘蛛一匹に勝てない程度の経験値らしいからな。

その点において非常にやる気が出なかったけど日坂さんの為とあらば話は変わる。

この辺一帯の豚ども皆殺しにしてやろうかな・・・あ、とどめは刺しちゃダメか。


「うっし。そうと決まれば集めないと・・・あ?なんで膨れてんだ?」

「ぷー」


振り返るとミホの頬が膨れている。

何だ一体・・・何でハムスターアピールを・・・?


何ですかねこれと日坂さんに聞こうとしたら、こっちはこっちで何故かどや顔してる。

何だ一体・・・何でかわいいアピールを・・・?


「えー・・・とりあえず豚呼びましょうか」

「おねがいしまーす」

「ぷー!」

「本当に何だ・・・?」


まぁいつもの発作だろう。放っておこう。


さて、どうやって豚を集めるのか。

この広いダンジョン内を歩き回る?効率が悪いから却下だ。

俺だけならそこそこの時間で終わるけど、護衛対象アリだとちょっと時間が掛かりすぎる。


そこで使うのは、ダンジョン内で手に入るとあるアイテム。

これはどのダンジョンでも手に入り、どこでも使える。

だけどその効果からあまり使用者はいない。場合によっては危険なアイテムとなる。


「誘引剤のセットってどの辺がいいんですかね」

「えーっと」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

「はい?どうかしましたかプロデューサーさん」

「誘引剤とおっしゃいましたか!?」

「ええ・・・あ、大丈夫ですよちゃんと許可取ってるので」

「い、いえそういうことではなくてですね」


プロデューサーさんの言いたいことは分かる。


『誘引剤』

これはダンジョン内のモンスターを文字通り引き寄せる為の道具だ。

見た目は紐がくっ付いたただけの棒で、紐を引っ張ることで独特の匂いが発生してモンスターを引き寄せる。

その効果は広く、ダンジョンの環境次第だが全体に広まることもある。

なので基本自分以外誰もいない場所で無いと使ってはいけない決まりになっている。


今回はアホみたいに広い平原なので正直効果は薄いだろう。

これは洞窟内とかで使うのが一番良いのだ。

え?何でそんなに詳しいかって?それはもちろん・・・


「何回も使ってるんで大丈夫ですよ!」

「いや経験者か・・・え?な、何回もですか?」

「はい」

「戸村君一日に何回とかのレベルでやるので・・・まぁここのダンジョンなら余裕かなとは」

「一日に!?」


俺の最高到達層は十七層。

そのガラッと環境が変わる階層がはもちろん存在する。

特に十六層はモンスターもほどほどに強く、比較的狭めの空間で匂いも広がりやすい上に人もいない為使いやすい。

なので今レベルを上げたいなって時はそこでやっている。


「蒼ちゃんって今レベルいくつなの?」

「ん?・・・あ、見せてなかったか。ほら」


カメラにも見える様に冒険者カードを見せる。


戸村宗次 Lv37


所持スキル

【身体強化】

所持魔法

【】


「さ、37!?」

「ほえー・・・すごいの?」

「冒険者全体の平均が今30前後ですね」

「えぇー!すごいね蒼ちゃん!」

「死ぬ程戦ったからなぁ」

「まぁ・・・レベルだけ目的で潜る人普通いないですから」


ダンジョンに潜る目的?

強くなるためですけど何か???


基本多くの冒険者は、ダンジョンに稼ぐために潜る。

その為モンスターは倒すが荷物がいっぱいになれば帰ってしまう。

俺のように荷物がいっぱいになろうが関係なしに戦い続けるやつ何てまずいない。


ただでさえ日坂さんのスキルのお陰でダンジョン内での活動時間が伸びているのにさらにそれだ。

元々とんでもない速度で上がっていると言われている俺のレベル。

十七層で鎧蜘蛛と戦い、アークに集中した期間があってなおそれは変わらない。

むしろ上がっている節すら見せている。留まる事なんて暫くないだろう。


なお十七層の攻略推奨レベルは四人パーティで平均25とする。


「そ、それだけのレベルなら確かに・・・」

「蒼ちゃんってなんでレベルいっぱい上げるの?」

「強くなりたいから・・・ていうか、ゲーム内に早く追いつきたいんだよ」

「アーク?」

「そうそう。今の俺の体って全く届いてないからな」


前もこんな話したな。

でもその時と正直何も変わっていない。


俺の現実での体は、アークオリンピアで使ってるアバターの能力には全く届いていない。

ゲーム内を100とするなら、今の俺で20くらいといったところか。

戦いの経験自体は詰めているし、かなり俺自身強くなったと思っている。

実際それはアークの方で活きている。ムサシを驚愕させる事が出来るくらいには。


でもやっぱり能力に差があり、完全に活かしきることが出来ていない。

正確には、活かすための経験が完全なモノではない。

その為ここを早めに解決する必要があった。

そこで見つけた手段が、この『誘引剤』だ。佐々木さんに教わった。


「まぁ安全面っていうなら、あっちの階段の方にいれば安全ですし」

「そうですね。モンスターは階段まで来れませんから」

「ふぇ?そうなの~?」

「そうなの。てかこれ説明されただろ研修で」


本当に危なくなったら、階層移動の階段まで避難すること。

それがダンジョン内で絶対に死なない方法だ。

これは研修内で非常に強く言われていることでもある。ミホは憶えてなかったみたいだが。


それを聞くとプロデューサーさんも納得してくれた。

カメラもずっと回しておくわけにはいかないからな。


許可も得られたところで、みんなから離れた位置で誘引剤を使用。

嗅ぎなれた独特な匂いが漂い始める。


「数体そっちに死にかけで寄こすんで!」

「わかったよー!」


日坂さんの手には剣が握られている。

今回の護衛にあたってカメラマンやプロデューサーさんも持っている支給品の武器だ。

性能はあれだけどここのモンスター程度なら問題なし。

しかし・・・日坂さんに剣って似合わないなぁ。


暫く待っていると、遠くから何かが走ってくる音が聞こえてきた。

どたどたと重い。品のない音だ。


ぱっと見で第一波は・・・五匹かな?


「手足を落とす。手足を落とす・・・」


だけど殺さない様に注意する。

マジでここのレベルだとついうっかりがあり得るからなぁ。


「よっし・・・来い!」


いや俺から行こう!!




















相坂ミホの目に映るその姿は昔から変わらない。

アークオリンピアで初めて彼を見た日から、何も変わっていない。


「す、すごい。彼は本当に一流の冒険者なのですね!」

「一流・・・うんまぁレベルと戦闘力は・・・」


自分のプロデューサーが彼を褒めたたえている。

それを聞いた、日坂という少女は頷きずらそうにしている。


確かに自分もそう思う。彼は恐らく冒険者としてみるなら欠点だらけなのだろうと。

だけどそこが良い。それが良い。だからこそなのだ。


「蒼ちゃんは戦ってるのが一番かっこいいね~」

「げ、ゲーム内でもそうなのかミホ」

「うん。やっぱりいいなぁ」


戸村宗次が冒険者になったこと、それ自体は早くから気が付いていた。

自分の知らない要素が、彼の戦いの中にある。

それに気がついた時、彼女の内心にあふれた感情は・・・嫉妬だった。


「あの、ちょっと良いですか?」

「・・・うん?私?」

「はい。あ、ここは絶対に声だけは使わないでくれますか?」

「は、はい」


有無を言わさない日坂の声。それがずっと年上であるはずのスタッフを威圧する。

それは冒険者だからではない。ただ一人の男を思うが故の、問答無用の圧。


「あなたは、どうして彼が好きなんですか?」

「えぇ!?」

「・・・へぇ」


気が付かれた。いや、最初から勘づかれていたのだろう。

それを確信したのが今というだけで。

プロデューサーが驚いているが、この男はどうして今の今まで気が付かなかったのだろうか。

内心でプロデューサーに対し呆れを覚えるが、それは隠し通す。

まだ自分のこの立場は必要なのだ。


それに彼女は恐らく勘違いをしている。


相坂ミホは、別に戸村宗次が好きなわけじゃない。


「え?」

「私が好きなのはねぇ?蒼ちゃんが戦ってるところなの~」

「戦ってる・・・ところ」

「だってぇ・・・あの蒼ちゃん。あんなにむき出しだったんだも~ん」


相坂ミホは、よく周りから変わっているねと言われる。

それは自分でも自覚している。自分は周りとは、何かが違うのだと。

だから合わせることをした。そうしたらいつしか言われなくなった。

ならそれが正解なのかと思っていた。


彼を見つけるまでは。


「結構多いんだよぉ?蒼ちゃんのファンって、みんなこんなんなのー」

「・・・」


きっと彼女はこれを受け入れられないかもしれない。でもそれはそれで構わない。

彼女が欲しいのは彼自身で、私が欲しいのは彼自身じゃない。


「むき出しで、自分を隠す事なんてぜんっぜんしない」


隠す事、偽る事、誤魔化す事。

そんなことをする必要がどこにあるかと。

全身で訴え、戦い続ける姿にあこがれてしまった。


だからこそ、自分はアイドルになった。

素の自分が、本当に世界に受け入れてもらえるかどうか確かめる為に。

そしてそれは真実だった。故に憧れは信仰になった。


戸村宗次を見て、一ミリも動かさなかった視界が初めて日坂巡を捉える。


「私たちはねぇ?魅せられちゃったんだぁ・・・ふへへ」


その在り方に惹かれてしまった。

だから見たくなったのだ。より近くで、よりリアルに。

今回彼をこの場に呼んだのもそれが理由で、それ以外には何も存在しない。


そしてだからこそ、それを邪魔するものは許さない。


「ねぇプロデューサー」

「な、なんだい?」


明らかに様子がいつもと違うミホの雰囲気に、スタッフ全員が呑まれている。

そんな彼らに言い聞かせるように、彼女は命令する。


「私、これからも彼に会うから・・・いいよねぇ?」


答えは、一つしかなかった。

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― 新着の感想 ―
女臭い上に詭弁女だった こういう人が近くにいると関わる人たちの心を削るのでこの上無くウザいよなあ ありのままはエゴの極み
[一言] アイドルちゃん変な子じゃなくてヤバい子だった… まぁ主人公が一番アレですがw
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