イベント開始
イベント当日
「なぁんか聞いてた話と違うな?」
『そうなのか?』
「こんなにいるってのは聞いてない」
俺の戦いをムサシに見せ、何ならそれに慣れる為に軽く戦ってもらうなんてやってるとあっという間に時間が過ぎる。
気が付いた時にはイベント前日で、危うく参加希望を申請するのを忘れそうになっていた。
アーサーが言わなければ二人して忘れるところだったぜ・・・
そんな危機も乗り越え、いざイベント当日。
早速運営にイベントマップに移動する前の待機場所に案内されたのだが、
そこには俺の想像していたよりはるかに大勢のプレイヤーがいた。
何なら何かガチっぽい連中がちらほら見える。
何してんだあいつら・・・?
「俺とお前にビビったって話だったんだが・・・?」
「まぁ今回のイベントだからこそ・・・かな」
「アーサー?お前もいんのかよ」
「おいっすー」
「あ、面食いだ」
『面食いなのか』
「いきなりなにっ!?」
集まっている奴らの中にはアーサーもいた。
今回は面食いさん・・・【アルチャ】氏という女性プレイヤーと組んでいるらしい。
この人もマスターランクだ。後俺の知り合いの中だと数少ない敬語を使うプレイヤーだったりする。
というかアーサーは婚約者いるのに女性プレイヤーと組んで良いんですかねこの手のイベントで。
「本当ならあんたに頼もうと思ってたんだけどねー」
「あらま」
「まぁ私はグラ券狙いだから上位に行ければ何でもいいんだけどね」
「あと彼女はこんなことでは何も言ってこないから」
「チッ」
「舌打ちはひどくないかい?」
「相変わらずだねぇあんたたち」
アルチャ氏は弓を使うプレイヤー。
アークオリンピアでは様々な後衛タイプのプレイヤーがいるが、実は弓使いの数は少ない。
何せ難易度が高い。他の遠距離攻撃と違って素人では止まった的でも当たらない。本当に当たらない。
俺も一時期やってみようかとしていた時期はあったが即諦めた。
そんな弓使いでマスターランク。
アルチャ氏が油断ならないプレイヤーであるのがわかるだろう。
「一番警戒しときますね」
「なーんであんたは私に対する評価が高いんかねぇ」
『弓兵は油断ならない。それが乱戦なら猶更だ』
「うへ~」
「油断出来ないってのは僕も同意だね」
てかやっぱり今回思ってたより楽じゃなさそうだな。
アルチャ氏とアーサーがいるってのもあるが、明らかにこのイベントにそぐわない連中がいる。
斧を二つ腰に携えた大男。
頭の上に謎の輪っかが浮いてるやつ。
傍らに巨大な箱を置いて相方と何かを相談している眼鏡。
チャイナ服に身を包んだお団子女。
王道的な魔法使い装備に七色の石が付いてる杖を持ってる知り合い。
その知り合いの傍にいる何でいるんだ系踊り子。
こいつら全員マスターランクのプレイヤーだ。
よりにもよってかなりガチで来てるように見えるんだが・・・?
「言っただろう?このイベントだからこそさ」
「どういうこと・・・あ?もしかしてそういうことか?」
「あははは。分かったようだね」
『・・・成程。乱戦時ならば此方を討てると踏んだか』
「出来そうな連中ばっかりなのがなぁ。頭痛くなるわ」
俺とムサシがランキングの一位二位を独占している期間はかなり長い。
というかランキング実装されてから二週間以降はずっとそうだったと思う。
それは、それだけの期間少なくともタイマン勝負ではほとんど負けなかったことを意味している。
だからこのアークオリンピアというゲームのプレイヤーにはある共通認識の様な物がある。
レートランキング上位ランカー・・・特に最上位と戦うのは負けイベントなのだと。
マナから聞いた話だから間違いないだろう。
どんな大会でも、イベントでも、俺達と当たればその時点で終了。
ゲームをやっている身としては、これは結構冷めるんじゃなかろうか。
だけどそれで諦めるような連中はそもそもマスターランクに来ない。
どうにかして俺達に勝てないかと、試行錯誤を繰り返す連中ばかり。
だからこうしたイベントは好都合だろう。
他のどこかのコンビと戦っている間に、俺達の背後を取れる可能性が高いから。
とにかく勝ちたいという連中にとってみれば、まさに絶好の機会だ。
「狙われるなこりゃ」
『問題ない』
「ん?」
『全て斬ればいい。それに報酬は目的ではない』
「・・・ま、それもそうか」
確かにムサシの言う通りだ。
何がどう来ようとも、俺たちのやること自体は変わらない。
向かってくるもの全てをなぎ倒せばいいだけだ。
「おおう」
「あはは・・・こりゃ入ったかな」
『・・・』
「は?」
「顔。あんたとんでもない顔になってるよ?」
「マジ?」
「マジマジ。威圧感半端ないわー」
何か周りが騒がしいと思ったらどうも俺の顔がすごいことになってたらしい。
動いた自覚も無かったんだけど。
しかし今ので何故か警戒度が上がった気がする。何故に。
「そういや報酬が目当てじゃないって言ってたけど。結局何で今回は参加しようと思ったんだい?」
『・・・組むことに意味があった』
「へぇ・・・ああそうか。武器が変わったんだったね彼は」
『ああ。それに、プライベートの事でも大きな影響があったようなのでな』
「ダンジョンの事かい?」
『それだ。知っていたのか』
「その点に関しては先輩だからね。相談も受けたし」
アーサーがムサシに話しかける。
何故このイベントに参加しようと思ったのかという、凡そほとんどのプレイヤーが気になったことをだ。
理由は簡単に言うと俺だった。
そして目的自体は先日達成している。
何せ変わった俺の武器と、冒険者となった俺の今の力を見れたのだから。
本気では無かったが、ムサシの基準では満足のいくものだったらしい。
「え?じゃああんたら今回イベント参加する必要って・・・」
「無かったすねぶっちゃけ」
そうなんだよ、そこなんだよ。
前回の打ち合いはムサシが今の俺を見たかったからやったこと。
でもそれって別にイベントを口実にやらなくても良かった。
だってその程度なら言ってくれればやったし、何なら俺から頼みたいくらいだったし。
じゃあ何でイベント参加したかって?
馬鹿野郎ムサシに何期待してやがる。
基本がその・・・あれだ。ちょっとそういうのの経験が無いんだよあいつは。
それを察したのか、アルチャ氏の顔が呆れた顔になる。
「色々運ないなぁ本当に」
「ドンマイ」
「そう思うなら上位入賞は譲ってほしいなあって」
「それとこれとは話が別ですね」
「うわぁいい笑顔」
確かにイベントに参加する理由自体はもう無いが、それが負けてやる理由にはならない。
別に入賞報酬も大して興味は無いけど貰えるものはもらう主義だしな。
これはムサシも同じなのだろう。
話を聞いていたのかさっきより闘志が高まってる。
そして周囲の警戒度がまた上がった。これは仕方ない。
そしてついに、イベント開始時間が来た。
『みなさま~』
「相変わらずのテンションだ」
「なんでこのゲームの宣伝担当なんだあの人」
「「「「みーちゃぁぁぁん」」」」
時間が来ると、全体アナウンスが流れ始める。
アナウンスの担当は、現実でのマジのアイドルがやっている。
詳しくは知らないからどういう人なのかさっぱりだが。
だけど彼女のファンらしき集団が集まって騒いでいるので相当有名なアイドルなんだろう。
あと入賞すると彼女から直接商品を貰えるってのもあるか。
『本日はお日柄もよく~』
『ちょ、それ始めると長いって』
『あれ~・・・じゃあ割愛で~』
緩い喋り方と雰囲気で話す方が・・・あー・・・
「相坂ミホと、相坂ルミね?」
「・・・苗字出てこねぇ」
「相坂グループのアイドルだって。この話前もしたよ?」
「マジっすか?あと俺顔に出てます?」
「あいつら何て名前だっけって顔に出てたわよ」
いかん。戦ったことないから覚えようとすら思わなかった。
アルチャ氏の呆れたような視線が痛い。実際呆れてるんだろうが。
だが聞いてほしい。大して興味もない分野の有名人なんて知らないことがあっても当然じゃないだろうか。
流石にイベントごとで見かけるので下の名前は憶えているしむしろ上等ではなかろうか。
「テレビに引っ張りダコなあの子ら知らんのはあんただけじゃないかなー?」
「うっそでしょ。ムサシ?」
『む?流石にフルネームくらいは知っているぞ。曲などは分からんが』
「マジか・・・あとそこの貴様ら布教しようと構えるな分かったから」
うちわをこっちに向けるな・・・法被もいらねぇ・・・!!
『今日のイベントは~バトルロワイアル~』
『今から転送される広大なマップ内で最後まで生き残ったコンビの勝ちね。周りは敵しかいないから、周囲に気を配らないと痛い目見るわよ!』
『大変そうだな~。るーちゃん何かアドバイスないの~?』
『えぇ!?・・・隠れるか、戦うか。とっさの判断が大事ね!!』
「思ってたよりましなアドバイスで」
「あの子らも結構長いからねぇ」
そもそも何で現役アイドルが殴り合い上等なゲームにいるんだ。
いやこれ偏見か?好きなのかもしれないこういうの。
『でも今回は錚々たる顔ぶれだねぇ』
『まぁ・・・どこぞの最強たちが参加するって話題になっちゃったからね』
『大人気な~い』
「言われてるよ~」
「物真似までしていうこと??」
『まぁ大人げないかはともかく。今回は滅多に無い機会なのは間違いないわね』
『血沸き肉ダンス~』
『その言い方だと恐ろしく物騒ね・・・』
『じゃあそろそろ始めよっか~』
『そうね。みんな、準備はいいかしら!!』
「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」」」」」
おっと、どうやら始まるらしい。
『貴公』
「ん?どうした?」
『・・・勝つぞ』
「・・・当然」
そして視界が暗転し、俺達はイベントマップに転送された。




