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電脳狂戦士 現代ダンジョンに挑む  作者: saikasyuu
電脳狂戦士 強敵と共に
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34/904

vs踊り子

転送された先は森の中。視界が木で遮られる場所だ。

最初の場所としては外れだな。


「とりあえず開けた場所に出るか」

『同意する』


マップを開き、どちらに移動すれば森を抜けられるかを見る。

どうやらちょうど森の中心に出てしまったらしい。


今回のイベントマップは、全部で八つに分けられている。

森、山、川、沼地、荒野、遺跡、戦場跡、街。

それぞれに環境が異なり、求められている能力も当然異なる。

この中で一番良いのは荒野だろう。

隠れる場所が無いが、それはつまり相手も同じ。

少なくとも不意打ちが基本無い状態ならその場にとどまって状況の変化を見る選択肢が生まれる。


だが森の中ではそれは難しい。

全方向を常に警戒しないといけないため、それ以外を行うことに向いていないからだ。

俺達は確かに強いが、それで油断して良いわけではない。

特にこういう場所では、最初から決め打ちして準備をしてきている連中がいるはずだ。


そら、言ってるそばから来た。


「後ろか」

『早いな』

「偶然近くに出たか。感覚強化系でも持ってたか?」

『こちらから仕掛けるか?』

「数が分からんからな。最悪手を組んでる可能性だってあるぞ」

『なに?』

「どうも今回、イベント抜きにしても俺達狙いなのがいるらしいからな」


イベント前にあらかじめ段取りを決めておいて俺達を倒す事のみを目的として連中は間違いなくいるだろう。

今近くにいる誰かがその類ではないと言い切ることは出来ない。

周りに本当に誰もおらず、一組だけなら問題は無いんだがな。


選択肢は二つ。

一組、もしくは少数であると決めて手早く倒す。

または周りにいると考えて離脱を優先する。


「さてどっち」

『貴公の好みで行こう』

「あー・・・んじゃ一択だわな」


これがもし、現実世界でダンジョン内なら絶対にしないだろうって方だな。


「正面から」

『破壊する』


木の上でこちらに銃を構えているプレイヤー。

俺達がそちらを見ると気付かれたのを察したのか急いで離脱しようとする。


が、それより先に俺の爪がそいつを串刺しにする方が早かった。


「うっげ!?」

「んだよ誰かと思ったら」

「アハハ・・・見逃してくれたりは」

「するか馬鹿が」

「デスヨネー!!」


いきなり知り合いだった。

だけど容赦なく切り捨てる。だがその際に一発だけ上に何かを撃たれてしまった。


「光?」

『・・・何かの合図か』

「わお。ただで死んでけよ全く」


どのくらいの規模かは分からないがやはりどこかの組んでいるというわけだ。

そして今やったプレイヤーの相方が近くにいるはず。

だが気配は何も感じない。


「そっちは?」

『・・・いや。いないな』

「逃げた?・・・いや、最初っからあいつが偵察で振り切ってんのか?」


どんだけ本気なんだ連中は・・・


だが一つラッキーなことがある。

同時にアンラッキーでもあるんだが。


『それは?』

「敵が来る。倒されに来てくれたと考えれば?」

『成程。それは幸運だ』

「負けたらドンマイってことで」


さて、入れ食い状態だ。

だけどやっぱり森の中は流石にマズイ。移動だけはするか。


再度位置を確認しようとマップを開く。

するとその瞬間に、遠くの方で大爆発が起きる。

近くの山岳地帯で魔法同士のぶつかり合いでも起きたようだ。


「獲物とか関係なさそうだけど」

『向かおうか』

「OK」


木の上に飛び乗って駆け出す。

互いにこれが出来るとは言ったことは無かったが、何となく出来ると知っていた。


こうすることで、木の上から周りの状況を確認できる。

そして分かったのだが、やはり先ほどの爆発は魔法が原因らしい。

同じ方向で見たことのある魔法が見えた。


七色の魔力砲撃・・・マナの魔法だ。


「あっちにいるのマナだな。相方に性悪もいるぞ」

『・・・ならば魔法使いは私がやろう』

「まぁそれが良いわな」


俺とマナは別に相性が悪いわけではない。

そもそもマナは戦い方の関係上誰とやっても相性は変わらない。


だけどその相方・・・あの煽りカスとムサシは微妙に相性が良くないらしい。

どうも自分の呼吸とリズムを盗まれるとかで、勝ちはするが倒すのに時間がかかるのだ。

この状況であまり時間をかけるのは好ましくない。

ならそっちは俺がやり、マナの方をムサシに任せる方がいいだろうという判断だ。


まぁマナはマナでワンチャン嵌るとそのまま負けるんだが。


俺達が森を抜け、山岳地帯に入ってもまだ戦闘は続いていた。

どうも状況がおかしいな?


「あいつがこんなバカスカ撃つって、なんかあったなこりゃ」

『様子を見るか?』

「・・・いや。どうせ近づいちまったんだから、このまま流れでやるぞ」

『了解』


山岳地帯の中央。そこだけは開けている。

周囲が斜面で囲まれているから、一か所だけある裂け目の部分以外は周りの様子も見えない。

そちらが森の方角だったから魔法の爆発が見えた。

俺たちの接近に気が付いているのなら、その一か所に向けて魔法をぶっ放せばそれだけで一気に大ダメージになる。

だからそこをケアする。


「お前、山登りは?」

『鍛錬の内容の一つだ』

「素晴らしい」


ほとんど崖になっているところまで迂回して、そこを登り始める。

登ると言っても手で上がるのではなくて引っ掛かりを見つけてそこからジャンプするのだ。

馬鹿正直に登ってたら他所から攻撃されかねない。


崖を登りきると、ついに広間の様子が見えた。


そこにいたのは、俺の想像通りマナと扇雀。

そして彼女たちに向けて杖を構えている魔法使いの二人組だった。


「あー。理解したわ」

『何だあれは?』

「多分、マナが挑発に乗って撃ち合いになってる」


そして扇雀は面白がってそれを眺めてるんだろうな。

マナの魔法攻撃は基本特化物が多い。

火力特化、範囲特化、効果特化の三つだ。

しかも効果特化は相手を拘束する魔法のみに特化させているという極みっぷり。

嵌ったら強いというのは、一度捕まったらそのまま高火力の魔法で消し炭にされるという意味だ。


そんなマナの魔法に、二人掛とはいえ撃ち合いが出来るとは。

魔法は撃つタイミングによっても威力は変わるらしいが、中々のプレイヤーらしい。


だけど俺達がそれを見守る意味は無いよな???


「右」

『ああ』


手短に言葉を交わして飛び降りる。

もちろん向かうのは魔法使いの二人組の方だ。


「ふっはっはっは!流石は我らが宿敵!」

「ですが所詮は一人!二人による合成魔法を極めし我らには」 


何か喋っていたがどうでもいいのでそのまま上から押しつぶす。

隣を見ると同じようにムサシの方も相手を縦に両断していた。


「えっぐ」

『貴公が言うのか』

「は?・・・え、えぇ!!??」

「あちゃ。よりにもよってもう来るの~」

「んじゃ手はず通りに」

『ぬかるなよ』

「そっちこそ」

「ちょ。会話も無しに!?」


お前相手にお喋りとか魔法使ってくださいって言ってるようなもんだろうが。

前にいたマナを無視して、やけに露出度の高い女に襲い掛かる。


「余計な事する前に死ね!!」

「あぁん」

「変な声出すなや!!」


露出女・・・扇雀。

こいつほとんど引退してたのにどういう風の吹き回しだ。

だが問答する暇は無いし必要もない。

あいつの性格を考えるならこのまま押し切った方がいい。


なにせ、


「タスケテー。ケダモノにオソワレルー」

「お前本当に禄(陸/碌)でもねぇな!?」


こういう奴だからだ。


まともにやっても十分強いのに、発言と動きがものすごく厄介。

ムサシが苦手とする理由はこういう所も含んでいる。

あいつ真面目だからな・・・。


叩きつける様に拳を振ると、扇雀は手にした扇子を拳に当てて自分の体を動かすことで回避する。

まるでふわふわと舞う煙の様に、くるくると踊る葉の様な動き。

そこにあいつが学んできたダンスの技術を混ぜこぜにして可能とする回避術。

こいつがマスターランク。それもランキング上位にいた最大の理由だ。


「相変わらずクッソめんどくせぇ」

「いえーい。だってまともにやっても勝てないからね!」


それはそうなのだ。

こいつは回避力は高いが一撃の攻撃力はそこまで高くない。

その為全身を鎧で覆っている俺との相性は非常に良くない。

戦い方だけを見ればそうでもないのだが、アビリティや能力値の相性だけは悪いのだ。


「んじゃとっととやられろ」

「そんな嫌がらせの機会逃すわけなくない??」

「マジでお前そういう所だぞ」


僅かな可能性でも勝ちを狙ってやるとかそういうのですらない。

端から、俺達が来た段階で勝ちを捨てている。

だからこそ厄介なのだ。出来るなら俺もこのタイミングでは相手にしたくなかった。


だけど今の俺には頼れる・・・頼れ過ぎる奴が相棒としている。


「マナがやられる方が早そうだなこりゃ」

「あーうん。そこはどうしようもないかな流石に」


ちらっとムサシの方を見ると


『斬る』

「ぴぎゃぁぁぁぁ!!??」


連射式の魔法を連発してムサシを攻撃しているマナだが、その魔法は全て届いていない。

全部当たる前に斬られているのだ。

とんでもない動体視力、そして次の動きにつなげる為の技。

何か軽くやっているけどあれって十分神業の類だ。


「余所見は良くないなぁ」

「あ?」


視界の隅で扇雀が動いた。

俺がムサシ達の方に気を向けたのを見て隙だと思ったのだろう。


扇から光弾が放たれたと同時にこちらに向かってくる。

回転する度に光弾が増え、加速するごとに切れ味が増す。

扇雀のお得意の必殺技だ。


あーやだやだ。やっぱりこいつ嘘ついてたよ。


でもまぁ・・・それじゃあ届かない。


「■■■■■!!!!!」

「んなぁ!?」


アビリティを発動する。

アビリティは幾つかの種類がある。

その中でも今発動したのは【アーツアビリティ】。要するに必殺技みたいなものだ。


【シャウトバースト】

声に力を与え、叫び声に攻撃判定を与える。


攻撃判定・・・当たり判定が伴った全方向攻撃が迫っていた光弾を全てかき消す。

同時に迫ってきていた扇雀の回転速度を落とす。

するとどうか。ただ回りながら近づいてくるだけの奴の完成だ。


キチンと効果が出たのを確認してから近づき、扇雀の動きを見切って腕を掴む。


「攻撃判定は、やっぱりここには無いよなぁ」

「う、うっそでしょ」

「ブランクだな。あと俺も前より強いんでな」

「このっ!」


それでも負けじと、蹴りを放ってくる。

しかしそれも想定内。空いた手でガードし、そのまま地面に叩きつける。


「うげぇ!?」

「俺の勝ちぃ」

「むかつくー!!覚えてろー!!」


負けず嫌いだな全く。


叩きつけられた衝撃で動けない扇雀に爪を突き立てる。

防御も取れない状態での一撃なのでそれだけで死亡判定、アバターが消える。

これで厄介な方は倒したな。


さて、ムサシの方はどうか・・・


『終わったか』

「ん?やっぱそっちの方が早かったか」

『拘束魔法を使わせなければな、奇襲で取り乱していたからこそ速攻が可能だった』

「相変わらず咄嗟の事態に弱いなぁあいつも」


そんなんだから上位ランカーなのに愛されマスコットみたいな立ち位置なんだよあいつは。

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