橋を落とせ
「エリックの方は上手くいったって?」
「はい!こちらへ残りの隊が向かってきているとのことてす」
フルトンはニヤリと好戦的に笑う。パタパタ飛んできた緑の鳥が肩にとまった。
「よし!陛下より合図がきた!次はこっちの番だ!全員、弓を構えろ!」
「全員っていっても数十人しかいませんけどね」
草の茂みや木の上に兵たちが潜み、いつでも矢を放てるように構えている。
「わかってるっ!」
フルトンが部下にウインクする。大男にウインクは似合わない。そう部下の顔に書いてある。
「戦の雰囲気作りが大事だろ?あー……コンラッド王子を討ち取りたかったぞ。眼の前にいるのに逃さなきゃいけねーのかよ」
「陛下がそう命じているんですし、我慢してくださいよ!?」
「ちっ……しゃーねーなー」
トドドドドと馬たちが蹄の足音をたてて、眼の前にを駆けてゆく。暫く橋を渡るのを見守る。コンラッド王子の隊がきた。フルトンはコンラッド王子の姿を捉えた。
「今だ!撃てーっ!」
橋に向かって一斉放射される弓矢。その矢は魔法で強化されていて、橋の太い縄を切ってゆく。慌てて渡っていく兵たち。
「弓矢だ!伏兵が隠れている!」
「コンラッド王子!橋が落ちます!」
「隊が二分されたか!」
「こちらへ!迂回して逃げましょう!」
「しかたない!森の方へ行くぞ。日が落ちる前に一旦戻るぞ」
深い谷間に橋は落ちていき、ドォンという音と共に水飛沫と砂煙をあげた。
谷によって兵力が分断し、さらに削がれた。
コンラッド王子の隊は突然の出来事に浮足だっている。空の城での出来事も尾を引いているのだろう。
「これで兵力は三分の一になったか……後は頼むぞ!トラス!」
フルトンはコンラッド王子が森の方へ向かう姿を見てそう言った。残る作戦はあと一つ。
「……っていうか、役目はこんだけかよおおお!つまんねえええええ」
「良いじゃないですかー」
部下に宥められるフルトンはボソッとつぶやく。
「あの《《王妃》》……まさか無血でこの戦を終わらせようとしてんじゃねーよな?ある意味こえー《《女》》だよな」
緑の鳥が役目を終えて、フッと煙のように消えた。
その頃、報告を受けるリアンとウィルバートも馬に乗った。
「あの城の大掛かりな石化の術式はもしや?」
「そのもしやの……師匠に頼んだのよ。延々と城に術式を書いてくれたわ。さすがよね!弓矢の強化の術式は私よ」
あんな特殊な術式は師匠かリアンくらいしかできないことだろうとウィルバートは思った。大した事ないものならば、あちらの魔道士が即座に解呪している。ウィルバートは師匠……リアンを止めてくれよと、思ったが、ふと手紙の内容が脳裏をよぎる。
少年……そして忍耐という言葉
師匠はいつから……どこまでお見通しだったんだ!?とリアンと師匠の先を読む力に戦慄するウィルバートだった。




