躍起
「おい、マジかよ。全力だぞ。アレを相殺するか」
掛かった圧力により陥没した中心部、熱で喉が焼けているのか、業平は息をするのも困難といった状態で切れかかる意識を繋ぎ止めていた。
「だが、立ち上がれなくなっちゃいじけねぇな。なぁ」
最も、火の手に覆われたのは業平だけでなく、寧ろ、ハバルの方であり、吹き返された炎が身体を炭に、全身に澄み渡る、風の刃で斬り裂かれた痕からは内に溜まった熱が煙として噴き出ていた。
「だけど、決め手に欠ける訳じゃねぇ。残ってるモンがまだある。てめぇも分かってんだろ。それが何なのか」
大剣を焦土に突き刺し、ハバルは拳の皮膚を修復して、平等を求めて宣言する。
「殴り合いと行こうぜ、お互いによ。這いつくばってでも来い。戦いってのは、生きてさえいればどんな状態でも行える!」
「..意味っ....分かんねぇよ」
今居る世界に比べれば、業平が生まれた世界は穏やかで温厚、比較する事も阻まれる平和な園。
今、味わうは嘗てない痛み。
「分かんないけど、戦いは辞めない」
それでも、折れ欠けるという事は無い。
敗戦を経た業平の複合した鬱憤が、負けず嫌いな側面を燻らせそれ以外を退ける。
「..かかっ、やっぱお前っ..だよな、そうこなくっちゃ、笑えねぇよなぁッッ!!!」
爛れた手で剣を握る事は今は不可能な業平は、鏡合わせに剣を突き刺して許諾した。
「ふんっ!」
体を屈め、業平は拳を避け、腹部に殴打を連射する。
余りの激痛にハバルは白目を向くも、額を突き合わせて攻勢を緩ませた。
「どうしたぁ!打ち止めかぁ!!!」
よろめく足取りながらも、業平はあらゆる正面からの反撃を届かせずにいたが、突き上げられた蹴りが顎を跳ね上げ、打ちあがった所に、踵蹴りが脳髄を膨らませようとする。
「うぁぉぉぉぉぉ!!!」
両掌を天に翳し、踵蹴りを受け止め、沿って太腿に抱き着いた業平は、踏み込んで前に進みだす。
引き剥がそうと、ハバルは業平ごと足を横に振るい上げようとするが、待っていたかの様に密着されたまま後退され、歪でよろけてしまう。
「ぐっ..!!」
姿勢が崩れたのを体感すると、業平は手を放し、顔を打ち抜いて、その後も執拗に殴りつけていった。
「ぎあぁっ..!!!」
「何だてめぇ、こっちの方は慣れてねぇのか」
顎に張り手を叩き込まれ、業平は両腕を後ろに回されながらうつ伏せにされてしまう。
逃れようと藻掻くも、腕を真上に引き伸ばされて、肩の骨が筋肉から千切れていく。
「..また同じ逃げか、だが、その腕はもうおしまいだな」
浮き上がった業平は、回転してハバルの掴んでいる腕の力を緩ませると、蹴った勢いを乗せて飛び離れた。
しかし、引き伸ばされた両腕は、芯が抜け落ちたかの様に戻らない。
「どうする、どう選択する、てめぇの命運を」
この問いかけには裏があった。
修復したと言っても、見せかけで誇示していただけの拳は壊れかけ、指が何本も取れている。
治癒する合間、其れが発覚しないよう隠し通しておきたい、そんな思いがハバルにはあった。
(いたい..息をするのもままならない。心臓がはちきれそうだ....なのに、何でだろう。苦しいのに心地良い。楽しくてしょうがない)
普段ならば目を背けてしまう程ボロボロとなった手を握っては、業平は開いたりして見つめる。
(肯定されている様で、とても爽やかな気分。俺、可笑しくなっちゃったのかな....それでもぶつけたい。全力を。どうなっても良いって思えてる今の内に)
「....ん?」
少し後ろに引いた手が、何かにぶつかる。
「剣..?」
偶然か、業平は突き刺した王剣が待つ場所に出戻っていた。
「何故に?というか、光りすぎ......はは、そうだな..俺は、どうも支えが無いと駄目な人間らしいや」
「何だ、殴り合いは止めにすんのか?」
「選択しろって言ったのはそっちだろ。俺は..やりたい事が出来た」
王剣に触れた事で光る腕。
分配された魔力が支えとなり、業平は剣を手に構える。
「転ばぬ先も良いけど、俺は持てる力、全てを引き出したい。そして勝ちたい。あんたに」
変化した風が剣に集約し、導かれた陽の光で輝きが乱反射する。
「俺も極限を出す、だからあんたも出してくれ、さっきの」
その光景は、自身で掛けていた鎖が綻び、真の姿が明らかになる前触れの様であった。
「....何故、俺がそんな事してやらなきゃならねぇ。これは殺し合いだぞ。聞くも聞かぬも己の自由。ましてや道理も義理もねぇ。どうして望みが聞ける」
下を向いて、ハバルは歩き出す。
「生き残るには見極める事も大切だ。固執して死んだら元も子もねぇからな」
ある場所を目指していた。
「だけどよ、自分を優先出来なくなったら其れは死んだも同然。恥を捨て生きるか、醜美に尽くして死ぬか、そんなのは明白だよな」
大剣を手に、ハバルも構える。
「命を賭す。其れが唯一、人間だけに与えられし神からの授け物だ」
治癒に回す筈の魔力も注ぎ込み、ハバルの身は燃え上がった。
「カカっ、カカカカっ....!!これがお望みの、てめぇを焼き尽くす炎だぁぁっっ!!!火焔燃燿!!!」
熱に煽られ、白い手が再起する。
「沁焔ぅ....熾天白霞ぁっっ!!!」
「....神代ぉぉっ!!!」
天に携えられた斬撃と、天を遍く斬撃が覇を競い合う。
「ぎっ、ぎぎぎぎぃっっ!!!ぐぐぐぐぐっ」
「依然に、カカ、カカカカ、カカカカカっ!!!これが変わんねぇ際限!!!押し切るぞぉッッ!!!......はっ」
回し上げられた王剣がハバルの斬撃を払い、炎を掠め取る。
そして、返す刃で振るわれた二撃目の神代が、ハバルの体を斬り裂いた。
オルクス○○ブーストはやっぱりダサいので、想定より早くスぺリオーラを持ってきました。
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こう考えてから恐らく半年か一年経ちましたが(この追記からも半年より少し短い位の月日が過ぎ、想起したのは合計で一年ちょい位の日数に..)いざ、話に着手し出したらスぺリ自体もダサく恥ずかしい気持ちに。
ブーストやオーラ―単体ならダサくは無いのに、スぺリはなぁ..スパンコール?スパーリングワインみたいでカッコ付かないのが残念。




