第5話 side 池田 ワガママな「大好き」
池田サイドです。
天根川が「ごめん」と、一言残して去っていく。
その背中はいつもの天根川の物ではなかった。
結局追いもせずフードコートで一人。周りには子供連れの親や、カップルばかり。
はっきり言って俺は場違いだろう。しかし、そんなことは気にならなかった。
理由はさっきのの天根川への告白。
正直、直ぐに断られるものだと思っていた。
というか、はっきり断られた方が良かったのかもしれない。
だけど天根川はそれをしなかった。
天根川はきっと俺を友人として、親友としてでしか見れなかったのだろう。
でも、そんな親友の気持ちも無下にはできない、といったところが天根川の心境だろうか。
周りの声が耳に嫌というほど入ってくるが、自然と気にはならなかった。
今、ここにいる時間は、この大量の人間の中に隠れている時は、普通の人間なんだ。
誰も俺のことを知らない。誰も俺の気持ちを知らない。だけどその空間が俺にとって救いだった。
そんな空間にいるせいか、酷く冷静で、スッキリとした気持ちになって行くのを感じじる。
気持ちを伝えたことに後悔はない。気持ちを伝えず、もやもやしたままで天根川と親友として隣にいても上手くいく気が全くしなかった。
だから、これでいいと思ってる。
しかし、気が付くと目の前が歪んで見えなくなってくる。
そして、瞳から涙が零れ落ちる。その涙をすぐさまふき取りながら気づく。
やっぱり、親友としても、「大好き」だったのだ、と。
これは完全にわがままであり、自己中心的な考えなだろう。
だけど、あわよくばこんな俺を認めてくれて、いや、恋人じゃなくてもいい。親友として隣にいてほしい、なんて事を考えてしまう。
こんな状況にしたのは俺自身のはずなのに。
男なのか、女なのかもはっきりしない。もちろん生物学上では男である。だが、気持ちの面ではどちらの俺もいるのだ。そしてこんなことを考えながら、すべてがもっともっと、沼にはまっていくような。
もう、何もかもが分からない。自分のことも周りのことも、天根川のことも。
そして座った状態からおもむろに立ち上がる。一体、何時間座っていたのか、それさえも分からなくなるほど頭を回転させていたのだろう。すこし腰が痛くなっていたのは予想外だった。きちんと運動しなきゃな、なんてことを思う。
家族連れは帰宅する準備をしたり、帰っていたり。それなりに人が少なくなったエオンの出口を見つけ外に出る。
すっかり辺りは暗くなり、街灯と店の明かりがなくなれば辺り一面は真っ暗だろう。
しかし、そこそこ暗くていい雰囲気を嗅ぎつけたのか、カップルが明らかに増えていた。
そんなことを考えていると、お腹がぎゅるぎゅると音を立てる。
……近くでご飯でも食べて帰ろう。そして――諦めよう。ワガママな自分ではいられない。現実を見るんだ。
もう、天根川とは一緒にいられない。
そう、心を新たにした後は、自然と涙がこぼれることはなかった。
___________________
今回も読んでいただきありがとうございました!最近長い文章が書けなくなっている作者です。(WEB作家失格)
前話から書き忘れていましたが、合計6000PV&60お星さまありがとうございます!
あと、池田の決心がついたみたいですね。次話は天根川と佐山さんの話し合い?みたいな感じのお話です!
今回も面白い!と思ったり、続きに期待!という方はハートやコメント、お星さまをぜひともよろしくお願いします!
次回もお楽しみに!
今回も読んでいただきありがとうございました!最近長い文章が書けなくなっている作者です。(WEB作家失格)
あと、池田の決心がついたみたいですね。次話は天根川と佐山さんの話し合い?みたいな感じのお話です!
今回も面白い!と思ったり、続きに期待!という方はぜひともブクマとお星さまをよろしくお願いします!
次回もお楽しみに!