第二部 プロローグ
???視点です。
いつもと変わらない学校。
当たり前だ。
異世界転生なんて起きるわけもない。突然変質者が学校に押しかけてきたりもしない。
そしてその中で男として暮らす。それが普通、なのだ。
天根川と話すことも。天根川と仲が良いからほかの女子から、恋仲を取り持ってくれ、なんて事も。
前だってあの学園一ともいわれるあの美少女、佐山さんからも天根川の連絡先をくれ、と言われた。
胸の中が何か黒い霧に覆われるような。気持ちが悪い。
この気持ちが。こんな気持ちになってしまう自分が。
だけど抑えられない。段々と大きくなっていく。
こんな風なってしまった時を今でも覚えている。
あいつと、天根川と出会った中学生の時だった。
天根川とは、ボクシングをやりながらその合間に読む漫画の話で仲良くなった。
その漫画はなんとなく書店で、特に理由はなく手に取った。まぁ、表紙買い、と呼ばれるものだろう。
しかし、なんとなくで買った漫画だったが、読む度に話に引き込まれていった。
それがボクシング以外で初めて興味を持ったことだった。それと同時にその漫画の話で仲良くなった天根川は、初めて俺が興味を持った人間だった。
その漫画の新刊が出るたびに話し込み、いつしか常に隣にいるようになっていた。
友達として。
その時は友達として、親友として、ただそれだけだった。それだけで十分だった。
しかし、それはいつしか天根川にもっと見てほしい、もっと自分を知ってほしい。
そう言った欲望に変化していった。
今思えば俺の「初恋」だったのだろう。
だが、俺は男。天根川も男。
いくら世間に疎い俺でもタブーなのはなんとなくわかった。
だけど、抑え込もうとしているのに、日に日に気持ちが大きくなっていく。
昨日よりも。一昨日よりも。もっと、ずっと。
好き。好き。大好き。
大好きなんだ。だから。だからこそ。俺の恋は叶わない。叶う事はない。
私は友達として隣にいる。
一緒にいる時間を増やすために、今までやってきたボクシングもやめた。
監督やコーチ。両親からも止められた。
だけど意志はもう既に決まっていた。
そう、決めたはずだったのに。
連絡先を聞いてくる女子。好意を寄せる女子。いつしかそれらの女たちを必要最低限、天根川を遠ざけさせるようになっていた。
どうにかして。何がなんでも。私と。
そんなある日。
いつもと同じように昼食を食べていた時だった。
突然深刻そうに話し出したかと思えば昨日、後ろからつけられていた、と天根川は話し出した。
それが一瞬でストーカーなのだとわかった。
天根川は人に恨みをもらう様な人間ではない。それに本人には言ってはいないが好意を持っている女子も多い。
とりあえず天根川を守ろう。そう思った。
いくらボクシングを辞めている、といってもそこら辺の人に負けるほど弱くはなっていない。
という事で今日は一緒に帰ることになった。
委員会?そんなもの後回し。そうして今週は天根川といつも通り帰った。
ストーカーだと確信した時は本当に殺してやろうかとも思った。
だけど、現れなかった。
一安心した。ストーカーが出なかった事に。とりあえず天根川も、もういいって言ってるしかなり委員会の仕事が溜まっている。さっさと終わらせよう。そして、また天根川と一緒に帰ろう。
そうして、かなり時間はかかったが一日で終わらせられた。
だけど、天根川と帰る、という願いは叶わないことになる。
次の日学校を天根川は休んでいた。それと同時に佐山さんも。
嫌な予感がした。
そして、次の日、その予感が的中する。
天根川は普通に登校してきた。良かった。今日は一緒に帰られる。少しでも長く一緒に居られる。
そして、放課後。
「天根川ー、今日一緒にかえろーぜー」
と、声を掛ける。しかし、返事は予想外の物だった。
「あー、ごめん!今日佐山さんと帰るから!それじゃあな!」
……え?え?え?え?え?え?え?え?
私は?ねぇ。
「私は?」
「え、私?何言ってんだよ(笑)佐山さんの真似か?全然似てないぞ!あ、時間ヤバいから帰るな!じゃ!」
そう言って彼は教室のドアの近くで待っていた佐山さんと歩いていく。
普通だったら喜ぶべきなのだろう。友達が学園一の美少女と付き合ったのだ。
だけど、私は普通ではない。いや、普通じゃなくてもいい。
何がなんでも彼が、天根川が。
「欲しい」
だけど、絶対に叶わない。わかっている。
何度も何度も何度も心の中がかき乱される。
もう、どうすればいいかわからない。
天根川との関わり方も。佐山さんに対する気持ちも。なにもかも。
皆様誰かわかりましたでしょうか。(笑)バレバレですね。
という事で第二部からは天根川と池田の心のすれ違い?というのでしょうか?そういった物を書ければなと思います。
あ!きちんとラブコメ的要素?もいれますので、少しシリアス展開もあると思いますがご容赦ください。
今回も面白い!と思った方や続きが気になる!と思った方はぜひともブクマとお星さまをよろしくお願いします。