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お父さんの家族以外の人に話せないことはあっても、家族だからこそ話せないことなんてあるだろうか。
結城さんの物言いにはとても納得が行かなくて、私はしつこく食い下がる。
「じゃあ、その人のことを教えて下さい。自分で直接訊きますから」
「言ったでしょ。それは無理なの」
結城さんは頑なにそう言った。
赤の他人のためにここまで固く口を閉ざすなんて、その秘密を聞き出すことに怖さと躊躇いを覚えたけれど、私は一人じゃないし、お兄ちゃんがいる。
そう思うと勇気が出て来て、私は強い口調で言った。
「とにかく、近い内にお兄ちゃんと一緒に会ってもらえませんか? お母さんには内緒で」
結城さんは少しの沈黙の後、渋々言った。
「……いいけど、大した話はできないわよ」
「それでも会って下さい」
「わかったわ。次の土曜はどう?」
「大丈夫です」
昨日お兄ちゃんから予定を聞いていたから、私は迷わずそう答える。
そうして待ち合わせの時間と場所を決めてから、電話を切った。




