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「お父さんが亡くなる直前、お父さんと一緒にいた女の人は結城さんですか?」
「いいえ」
これは意外な答えだった。
てっきりあの『毛倡妓』は結城さんだと思っていたのに。
それともあの時お父さんと一緒にいたのは結城さんだったけど、何か事情があって嘘を吐いているのだろうか。
わからないけど、少なくともお父さんが亡くなったあの日、結城さんがお父さんと連絡を取っていたのは事実だ。
結城さんがあの『毛倡妓』でないとしても、『毛倡妓』のことを知っているかも知れない。
私は問いを重ねた。
「お父さんと一緒にいた人を知りませんか?」
間があった。
もし知らないなら「知らない」と、さっきと同じようにすぐ答えるだろう。
私は確信を持って言った。
「知ってるんですね」
「ええ、でも教えられない」
「どうしてですか? 私はお父さんの娘ですよ。赤の他人が面白半分に真相を調べようとしている訳じゃないんです。名前が言えないなら、せめて事情だけでも話してもらえませんか? 結城さんから聞いたことは秘密にしますから」
「悪いけど、彼女のプライバシーに関わることだから、私には話せないの」
「お父さんとその人が、不倫してたからですか?」
私は核心を突いたつもりだったけど、私の予想に反して結城さんは言った。
「誤解しないで。彼女はそんな人じゃない。お父さんと不倫なんて、絶対にしてなかった」
おばあちゃん達から「お父さんは不倫なんてしてなかったと思う」と聞いていたから、今更びっくりはしなかったけど、だとしたら結城さんがここまで頑なに真相を話そうとしない理由が腑に落ちなかった。
「お父さんとその人は、どんな関係だったんですか? 後ろ暗いところがないなら話せるでしょう?」
「後ろ暗いところがなくても、言えないこともあるのよ。日和ちゃんが周さんの娘だからこそ言えないの」




